クレメンティア
税理士事務所
建設工事の請負契約ルールが変更に――中小建設業こそ押さえたい「署名・押印省略」の実務ポイント
「建設工事の契約書、毎回押印が大変…」
そう感じている中小建設業の経営者の方にとって、見逃せない制度改正がありました。
令和7年9月30日から、一定の要件を満たす場合に限り、建設工事の請負契約における**注文書・請書の署名または記名押印を省略できる**ようになっています。
今回は、経営者として押さえておきたい実務上のポイントを整理します。
──────────────────
■ 建設工事の請負契約は「建設業法」が大前提
──────────────────
建設工事の請負契約は、一般的な契約とは異なり、**建設業法に基づく厳格なルール**があります。
原則として、
・契約締結時には
・法定16項目(工事内容、請負代金、工期など)を記載した
・書面に署名または記名押印し
・当事者間で相互に交付
これが基本です。
このルールに反すると、契約が無効になる以前に「建設業法違反」となるリスクがあります。
──────────────────
■ 実務で多い3つの契約パターン
──────────────────
建設業界で一般的に用いられている契約方法は、次の3つです。
① 請負契約書を相互に交付
② 基本契約書+注文書・請書
③ 注文書・請書(+約款)のみ
特に②は、協力会社との継続取引でよく使われる形です。
この②の方法について、一定の条件を満たせば「注文書・請書の押印省略」が認められるようになりました。
──────────────────
■ 押印省略が認められる3つの要件
──────────────────
次の(ア)~(ウ)**すべてを満たす必要**があります。
(ア)発注者が「消費者(個人)」ではないこと
→ 法人間取引が前提です。
(イ)対等なパートナー関係であることの相互確認
→ 「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン」等に基づき、
優越的地位の濫用がない関係であることを確認します。
(ウ)反復継続的な取引実績があること
→ 初取引では原則NG。
継続した実績がある協力会社が対象です。
この3点を**基本契約書の締結時に相互確認**していることが重要です。
──────────────────
■ 経営者目線での注意点
──────────────────
ここで注意したいのは、
・すべての契約で押印が不要になるわけではない
・③の「注文書・請書のみ」で契約している場合は従来どおり押印が必要
という点です。
また、押印を省略できる=契約管理が雑でよい、ではありません。
むしろ、
・基本契約書の内容
・取引実績の管理
・ガイドライン遵守の確認
といった**内部管理の重要性は高まる**といえます。
──────────────────
■ 中小企業にとっての実務メリットと判断軸
──────────────────
この制度をうまく活用できれば、
・事務作業の削減
・契約スピードの向上
・現場対応の効率化
といったメリットがあります。
一方で、
「要件を満たしていないのに省略していた」
という状態は、経営リスクそのものです。
──────────────────
■ まとめ:効率化と法令遵守はセットで考える
──────────────────
今回の改正は、建設業界の実務負担を軽減する前向きな制度です。
ただし、**使える会社・使えない会社が明確に分かれる制度**でもあります。
・自社の契約形態はどれか
・協力会社との関係性は要件を満たしているか
この機会に、一度契約書類を点検してみることをおすすめします。
制度を正しく理解し、安心して効率化を進める。
それが、これからの中小建設業経営に求められる姿勢だといえるでしょう。
[参考]
「注文書及び請書による契約の締結について」
Instagram
インスタグラム
Related
関連記事
-
2023.07.29法人様をサポート | 大阪市の税理士ならクレメンティア税理士事務所
-
2025.11.18宗教法人が土地の寄附を受けるときに注意すべき「措法40条」──知らないと“寄附者”に課税リスク
-
2025.12.17大阪市の法人が「銀行格付けを知らずに財務悪化」した失敗パターン
-
2025.12.13国税庁が「AI活用の税務調査」を初公表――宗教法人がいま押さえるべき“見られ方”と実務対策
-
2025.12.13大阪市での法人税の中間申告と税務への影響
-
2025.12.12大阪市の宗教法人が知っておきたい収益事業別の課税ポイント一覧
-
2025.12.08「法人住民税」と「法人事業税」の違いと計算方法
-
2025.12.05宗教法人にも影響する「税務調査手続きの法令化」―帳簿の提示・提出義務とその留意点
-
2025.12.04宗教法人が大阪市でクラウドファンディングを活用する際の税務知識
-
2025.09.202025年税制改正、大阪市の税理士が解説する宗教法人への影響とは
-
2025.10.06大阪市の宗教法人向け|収益事業開始前にやるべき会計整備3ステップ
-
2025.09.256. 宗教法人の収益事業と法人税・地方法人税のポイント
-
2025.09.267. 宗教法人の法人税・地方法人税の申告・納付と事業年度対応
-
2025.09.288. 宗教法人と消費税・地方消費税の基礎知識と実務
-
2025.09.299. 宗教法人の消費税の納付税額計算とインボイス制度の実践対応
-
2025.09.3010. 宗教法人の印紙税・電子納税(e-Tax)と令和の税務効率化
-
2025.10.01宗教法人の「収益」と「非収益」の境界線|大阪市の事例から学ぶ判断基準
-
2025.10.28税理士が支援する大阪市の法人向け「利益計画」とは?
-
2023.08.09法人成りのタイミングとは|大阪市の税理士ならクレメンティア税理士事務所
-
2025.09.16税理士に経営相談もできる?大阪市の法人向けワンストップ支援とは
-
2025.09.11大阪市の法人が税理士に「税務+経営相談」を一括で依頼するメリット
-
2025.09.27大阪市で税理士と一緒に取り組む法人の節税とキャッシュフロー改善
-
2025.11.10法人の設備投資を行う際に税理士へ相談すべきポイント
-
2026.08.11無利息でお金を貸しても大丈夫?宗教法人から公益法人への貸付けを税理士が解説
-
2026.01.15税理士が解説|大阪市 宗教法人の「収益事業の再構築」を行うために