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税理士事務所

保育士が幼稚園教諭免許を取得する費用を宗教法人が負担したら課税?税理士が解説


「保育士が幼稚園教諭免許を取得するための大学の学費を、法人で負担しても大丈夫でしょうか?」

認定こども園を運営する法人では、このような問題が生じることがあります。

特に、幼保連携型認定こども園では保育教諭の配置が必要となるため、保育士資格を持っている職員に幼稚園教諭免許を取得してもらうことは、法人の運営上も重要な課題です。

では、そのための大学の授業料や資格取得費用を法人が負担した場合、職員に対する「給与」として所得税が課税されるのでしょうか。

さらに、園長が宗教法人の理事長を兼ねている場合、その学費を法人が負担しても問題ないのでしょうか。

今回は、宗教法人が運営する認定こども園を想定し、保育士の幼稚園教諭免許取得費用を法人が負担した場合の所得税上の取扱いについて解説します。


## 1.法人が職員の資格取得費用を負担すると給与になる?

一般的に、会社や法人が従業員のために何らかの費用を負担すると、

「その従業員が経済的な利益を受けたのだから、給与として課税されるのでは?」

という疑問が生じます。

例えば、法人が従業員の個人的な資格取得のために大学の授業料を支払ったのであれば、原則として、その従業員に経済的利益を与えたものと考える必要があります。

しかし、すべての資格取得費用が給与として課税されるわけではありません。

所得税基本通達36-29の2では、使用者が自己の業務遂行上の必要に基づいて、役員または使用人に職務上直接必要な技術や知識を習得させたり、免許・資格を取得させたりするための費用について、一定の要件を満たすものは課税しなくても差し支えないとされています。

つまり、

「その資格が法人の仕事を行うために直接必要なのか」

という点が重要になります。


## 2.認定こども園では幼稚園教諭免許が重要

幼保連携型認定こども園では、保育教諭を配置する必要があります。

そして、保育教諭については、原則として幼稚園教諭免許状と保育士資格の両方が必要となります。

もっとも、一定の経過措置や特例措置が設けられており、保育士資格を持つ職員が幼稚園教諭免許を取得しやすくする仕組みも設けられています。

そのため、

「保育士資格は持っているけれど、幼稚園教諭免許を持っていない」

という職員に対して、法人が免許取得を支援することには、単なる福利厚生とは異なる意味があります。

法人が認定こども園を運営していくために必要な人材を確保するための資格取得支援だからです。


## 3.法人の業務に「直接必要な資格」なら非課税にできる

ここで、所得税基本通達36-29の2がポイントになります。

この取扱いでは、使用者が自己の業務遂行上の必要に基づいて、役員または使用人に職務上直接必要な技術・知識を習得させたり、免許・資格を取得させたりするための費用を負担する場合、一定の要件を満たす適正な費用については、給与として課税しなくてもよいとされています。

今回のケースに当てはめると、

「認定こども園を運営するために保育教諭が必要」

↓

「保育教諭として勤務するために幼稚園教諭免許が必要」

↓

「その免許を取得するための大学の授業料等を法人が負担する」

という関係になります。

このような場合には、幼稚園教諭免許の取得が法人の業務遂行上必要なものであると認められやすくなります。


## 4.大学の通信教育の授業料でも大丈夫?

今回のケースでは、保育士が大学の通信教育を利用して幼稚園教諭免許を取得することが想定されています。

では、通信教育の授業料だから給与課税されるのでしょうか。

重要なのは、「通信教育かどうか」ではありません。

その費用が、職務に直接必要な免許を取得するための適正な費用なのかどうかです。

例えば、幼稚園教諭免許を取得するために必要な所定の科目・単位を修得するための大学の授業料などであれば、認定こども園の業務に直接必要な資格取得費用として扱うことができると考えられます。

したがって、単に「大学の学費だから給与」ということではありません。

法人が負担する費用の内容を具体的に確認することが大切です。


## 5.宗教法人が負担しても同じ考え方でよい?

今回のタイトルでは「宗教法人」が負担する場合を取り上げています。

宗教法人が認定こども園などを運営している場合、宗教法人だからという理由だけで、職員の資格取得費用の税務上の取扱いが変わるわけではありません。

重要なのは、

「その資格取得が法人の業務遂行上必要なのか」

という点です。

例えば、宗教法人が幼保連携型認定こども園を運営しており、その職員が保育教諭として勤務するために幼稚園教諭免許を取得するということであれば、法人の業務との直接的な関連性を説明することができます。

この場合、所得税基本通達36-29の2の取扱いを適用できる可能性があります。


## 6.園長が宗教法人の理事長を兼ねている場合は?

ここは実務上、特に注意したいところです。

例えば、

・宗教法人が認定こども園を運営している
・園長が宗教法人の理事長を兼ねている
・理事長は保育士資格を持っている
・幼稚園教諭免許を取得するために大学で学ぶ
・その学費を宗教法人が負担する

というケースです。

理事長は「役員」に該当するため、

「従業員の資格取得費用なら非課税でも、理事長の場合は給与課税されるのでは?」

という疑問が生じます。

しかし、所得税基本通達36-29の2は、使用人だけを対象としているわけではありません。

役員についても、自己の業務遂行上必要な技術・知識の習得や免許・資格取得のために、適正な費用を法人が負担する場合について、課税しなくても差し支えない取扱いがあります。

したがって、理事長であることだけを理由として、直ちに給与課税されるわけではありません。

重要なのは、その免許取得が理事長としての業務、あるいは認定こども園の運営上、直接必要なものなのかという点です。


## 7.「個人的な資格取得」と判断されないために

一方で、法人が負担すれば何でも非課税になるわけではありません。

例えば、

「将来役に立つ資格だから取っておこう」

「本人がキャリアアップしたいから大学に通いたい」

という程度で、現在の法人の業務との直接的な関係が薄い資格であれば、法人が負担した費用について給与課税の問題が生じる可能性があります。

今回の幼稚園教諭免許については、認定こども園における保育教諭の配置との関係が明確です。

そのため、

「認定こども園の運営に必要な資格」

という業務上の必要性を説明しやすいケースといえます。


## 8.法人が負担する費用は「適正」であることも重要

もう一つ注意したいのが、法人が負担する費用の範囲です。

所得税基本通達36-29の2では、職務上必要な資格取得等のための費用であっても、「これらの費用として適正なもの」に限って課税しなくてもよいとされています。

例えば、

・資格取得に必要な大学の授業料
・必要な講習費
・必要な教材費
・免許取得に直接必要な費用

などは、具体的な内容を確認したうえで、適正な費用として扱える可能性があります。

一方、資格取得とは直接関係のない個人的な支出まで法人が負担する場合には、別の問題が生じます。

「資格取得のために必要な費用」と「本人の私生活上の費用」を明確に区分することが重要です。


## 9.法人として「なぜ負担したのか」を説明できるようにする

税務上の取扱いを明確にするためには、法人が資格取得費用を負担する理由を記録しておくこともおすすめします。

例えば、

・認定こども園の保育教諭確保のため
・保育士資格を持つ職員に幼稚園教諭免許を取得してもらうため
・認定こども園の運営上必要な資格であるため
・法人の業務遂行上必要な資格取得であるため

といった事情です。

また、法人として資格取得支援制度を設け、

「法人が業務上必要と認めた資格について、その取得費用を一定の範囲で負担する」

というルールを作っておくことも、運用の透明性を高めるうえで有効です。

特定の役員だけを対象にした特別な利益供与ではなく、法人の業務上必要な資格について合理的な基準で支援していることが分かるようにしておくとよいでしょう。


## 10.宗教法人が資格取得費用を負担するときのチェックポイント

最後に、宗教法人が職員や役員の資格取得費用を負担する場合のチェックポイントを整理します。

### ① その資格は法人の業務に直接必要か?

認定こども園の保育教諭に必要な幼稚園教諭免許など、業務との直接的な関係を確認します。

### ② 誰のための資格なのか?

職員本人の将来のキャリアアップではなく、法人の業務遂行上必要な資格なのかを確認します。

### ③ 法人が負担する費用は適正か?

授業料など、資格取得に直接必要な費用なのかを確認します。

### ④ 役員の場合も合理的な理由があるか?

理事長や園長などの役員については、特に「なぜ法人が負担するのか」を説明できるようにしておきます。

### ⑤ 法人としての支出根拠を残しているか?

資格取得の必要性、負担額、対象者などについて、法人として適切な決定・記録を残しておくことが重要です。


## まとめ|「資格取得費用だから課税」ではなく「業務に必要か」がポイント

認定こども園を運営する宗教法人が、保育士資格を持つ職員に幼稚園教諭免許を取得してもらうため、大学の授業料などを負担するケースでは、その費用が給与として課税されるのかが問題になります。

この点、所得税基本通達36-29の2では、使用者が業務遂行上必要な技術・知識の習得や免許・資格の取得のために負担する適正な費用について、一定の場合には課税しなくても差し支えないとされています。

認定こども園において、保育士が幼稚園教諭免許を取得することは、保育教諭として勤務するために必要となる資格との関係が明確です。

そのため、認定こども園を運営する法人が、業務上必要な幼稚園教諭免許を取得するための大学の授業料等を負担する場合には、給与として課税しなくても差し支えないと考えられます。

また、対象者が一般の職員ではなく、園長や理事長を兼ねる役員であったとしても、それだけで直ちに課税対象になるわけではありません。

大切なのは、

「その資格取得が法人の業務遂行上、本当に必要なのか」

「法人が負担する費用は資格取得に直接必要な適正なものなのか」

という点です。

宗教法人が認定こども園を運営している場合、今後の人材確保のために資格取得支援を行うことも考えられます。

その際には、「職員の福利厚生」という視点だけでなく、「法人の業務遂行上必要な資格を取得してもらう」という観点から制度を設計することが重要です。

特に役員の資格取得費用を法人が負担する場合には、なぜ法人がその費用を負担するのか、第三者にも説明できるよう、法人としての決定や資料を残しておくと安心です。

資格取得を支援することは、単なる職員への福利厚生ではなく、法人の将来の運営を支える人材育成にもつながります。

税務上の取扱いを確認したうえで、法人として合理的な資格取得支援制度を整えておくことをおすすめします。


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