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税理士事務所
収益事業がなくても税務署への提出が必要?公益法人等の収支計算書を税理士が解説
「うちは収益事業をしていないので、法人税の申告は必要ありません。」
宗教法人の方から、このようなお話を伺うことがあります。
確かに、宗教法人などの公益法人等については、原則として収益事業から生じた所得に対して法人税が課税されます。
では、収益事業を一切行っていない法人であれば、税務署に提出する書類は何もないのでしょうか。
実は、そうとは限りません。
公益法人等には、法人税の確定申告とは別に「収支計算書」を税務署へ提出する制度があります。
今回は、この「収支計算書の提出制度」について、宗教法人を例に、どのような法人が対象になるのか、いつまでに提出するのか、そして提出不要となるケースについて分かりやすく解説します。
## 1.「収益事業がないから税務署への提出物はない」は本当?
最初に結論をお伝えすると、
「収益事業がない=税務署への提出書類がない」
とは限りません。
公益法人等については、収益事業を行っていることによって法人税の確定申告書を提出する場合を除き、原則として、その事業年度の「収支計算書」を税務署へ提出する制度があります。
これは、法人税の確定申告とは別の制度です。
したがって、
「法人税がかからない」
ことと、
「税務署に何も提出しなくてよい」
ことは、同じではありません。
宗教法人の税務を考える際には、この違いを理解しておくことが重要です。
## 2.公益法人等の「収支計算書提出制度」とは?
この制度は、公益法人等に対する収益事業課税を適正に行うために設けられたものです。
公益法人等は、一般の株式会社とは異なり、原則として収益事業から生じた所得について法人税が課税されます。
そのため、収益事業を行っていないように見える法人についても、その活動状況を税務当局が確認できるよう、一定の法人に収支計算書の提出を求める仕組みが設けられています。
対象となる法人は、原則として事業年度終了の日の翌日から4か月以内に、その主たる事務所の所在地を所轄する税務署長へ収支計算書を提出する必要があります。
つまり、決算が終わった後に、
「法人税の申告はないから何もしなくてよい」
と考えるのではなく、
「収支計算書の提出義務はないか」
を確認する必要があります。
## 3.どんな法人が「公益法人等」に該当する?
では、そもそもこの制度の対象となる「公益法人等」とは、どのような法人でしょうか。
法人税法上の公益法人等には、一定の法人が含まれています。
例えば、
・一般社団法人のうち非営利型法人
・一般財団法人のうち非営利型法人
・宗教法人
・学校法人
・社会福祉法人
などです。
つまり、宗教法人もこの制度の対象となり得ます。
ただし、すべての公益法人等が必ず収支計算書を提出しなければならないわけではありません。
一定の法人については、制度の対象から除外されています。
そこで、次に「提出しなくてもよい法人」について確認していきましょう。
## 4.宗教法人も収支計算書の提出対象になる
宗教法人は、法人税法上の公益法人等に含まれます。
そのため、収益事業を行っていない宗教法人であっても、一定の条件を満たせば収支計算書の提出義務が生じます。
ここで注意したいのが、
「うちはお寺なので法人税を払っていません」
「収益事業はありません」
という理由だけで、提出義務がないと判断してしまうことです。
法人税の確定申告が必要かどうかと、収支計算書の提出が必要かどうかは、別の制度として考える必要があります。
特に宗教法人では、通常の宗教活動しか行っていないつもりでも、年間の収入金額によって提出義務の判定が変わることがあります。
## 5.提出期限はいつ?「4か月以内」というルール
収支計算書の提出期限にも注意しましょう。
原則として、
「事業年度終了の日の翌日から4か月以内」
とされています。
例えば、3月31日が事業年度終了の日であれば、その翌日から4か月以内が提出期限となります。
このため、決算業務のスケジュールに収支計算書の提出も組み込んでおくことが大切です。
法人税の確定申告が必要な法人であれば、申告期限との関係も含めて整理しておくとよいでしょう。
また、提出先は、主たる事務所の所在地を所轄する税務署長です。
「法人税の申告がないから決算後の税務手続きもない」と思い込まず、毎年の決算時に確認することをおすすめします。
## 6.年間収入8,000万円以下なら提出不要
ここで、重要な例外があります。
公益法人等であっても、一定の小規模な法人については、収支計算書の提出制度の対象から除外されています。
その基準の一つが、年間の収入金額です。
寄附金や会費収入なども含めた年間の収入金額が8,000万円以下である場合には、一定の要件のもとで提出義務が免除されます。
ここで注意したいのは、
「収益事業の売上が8,000万円以下」
という意味ではないことです。
収益事業をしているかどうかにかかわらず、寄附金や会費収入などを含めた年間の収入金額を確認する必要があります。
一方、資産の売却による収入のうち、臨時的なものについては、この判定上の収入金額から除かれる取扱いがあります。
したがって、単純に通帳への入金額を全部足して判断するのではなく、制度上の「収入金額」に該当するかどうかを確認することが大切です。
## 7.収益事業を行って法人税の申告をする法人はどうなる?
もう一つ重要な例外があります。
公益法人等が収益事業を行っていて、その事業年度について法人税の確定申告書を提出する必要がある場合には、収支計算書の提出制度の対象から除かれます。
つまり、
「収益事業を行っていて法人税の確定申告をする」
という法人については、収支計算書を別途提出するという二重の手続きをすることにはなりません。
一方、
「収益事業を行っていない」
「法人税の確定申告書を提出していない」
という公益法人等については、収支計算書の提出義務がないか、別途確認する必要があります。
この違いを整理しておくと、制度を理解しやすくなります。
## 8.法人税法以外の法律で「公益法人等」とみなされる法人は対象外
公益法人等に似た法人であっても、この収支計算書提出制度の対象から除外される法人があります。
例えば、
・地縁による団体
・管理組合法人
・法人格を付与された政党・政治団体
などです。
これらは、法人税法そのものではなく、法人税法以外の法律によって公益法人等とみなされる法人であるため、今回の制度では対象から除外されています。
「公益法人等」という言葉だけを見ると判断しにくいところですが、重要なのは、その法人が法人税法2条6号に規定する公益法人等に該当するかどうかです。
## 9.宗教法人が確認しておきたい5つのポイント
宗教法人の場合、毎年の決算時に次の項目を確認するとよいでしょう。
### ① 法人税法上の公益法人等に該当するか
宗教法人は原則として法人税法上の公益法人等に該当します。
### ② 収益事業を行っているか
収益事業を行っている場合、その事業年度について法人税の確定申告が必要になるかを確認します。
### ③ 法人税の確定申告書を提出する必要があるか
法人税の確定申告をする法人については、収支計算書の提出制度との関係を確認します。
### ④ 年間収入金額はいくらか
寄附金や会費収入なども含めて、制度上の年間収入金額を確認します。
8,000万円以下かどうかは重要な判定ポイントです。
### ⑤ 提出期限を確認したか
提出が必要な場合には、原則として事業年度終了の日の翌日から4か月以内という期限を意識しておきましょう。
この5点を毎年確認するだけでも、提出漏れの防止につながります。
## 10.「収益事業がない」だけで判断しないことが大切
宗教法人の税務では、
「収益事業をしていないから、法人税の申告も収支計算書の提出も必要ない」
と一括りに考えないことが大切です。
法人税の確定申告が必要かどうかと、収支計算書を提出する必要があるかどうかは、それぞれ別に確認する必要があります。
一方で、すべての公益法人等が収支計算書を提出しなければならないわけでもありません。
年間収入が8,000万円以下の小規模な法人など、一定の法人は制度の対象から除外されています。
したがって、宗教法人の場合には、
「公益法人等に該当する」
↓
「収益事業を行っているか」
↓
「法人税の確定申告をする法人か」
↓
「年間収入金額は8,000万円を超えているか」
↓
「収支計算書の提出が必要か」
という順番で確認していくと、判断しやすくなります。
## まとめ|法人税の申告がなくても「提出書類」は確認しましょう
公益法人等には、一般の株式会社とは異なる税務上のルールがあります。
その一つが、収支計算書の提出制度です。
宗教法人などの公益法人等については、収益事業を行っていることによって法人税の確定申告書を提出する場合を除き、原則として収支計算書を税務署へ提出する制度があります。
提出期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から4か月以内です。
ただし、
・年間の収入金額が8,000万円以下の小規模な法人
・法人税法以外の法律によって公益法人等とみなされる一定の法人
・収益事業を行い、その事業年度について法人税の確定申告書を提出する必要がある法人
などは、制度の対象から除かれます。
したがって、
「収益事業がないから提出不要」
と最初から決めつけるのではなく、
「自分の法人は制度の対象なのか」
を確認することが重要です。
特に宗教法人では、法人税の申告が必要かどうかだけを毎年確認するのではなく、収支計算書などの提出義務についても決算時にチェックする習慣をつけておくと安心です。
税務署に提出する書類は、「税金が発生するかどうか」だけで決まるわけではありません。
宗教法人の決算では、納税の有無と提出書類の有無を分けて考えることが、適正な税務管理の第一歩です。
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