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税理士事務所

宗教法人の財産売却は収益事業になる?宝物の譲渡益に関する税務上のポイント

「本堂の改修資金を用意するため、宗教法人が保有している宝物を売却したいのですが、売却益には法人税がかかるのでしょうか?」

宗教法人が長年保有してきた仏像や美術品など、歴史的価値のある宝物を処分する場合、このような疑問を持たれることがあります。

特に、売却によって大きな利益が出る場合には、

「これだけ利益が出るのだから、法人税もかかるのでは?」

と考えるのが自然です。

しかし、宗教法人の法人税については、「利益が出たかどうか」だけで判断することはできません。

重要なのは、その利益が法人税法上の「収益事業」から生じたものなのかどうかです。

今回は、宗教法人が本堂の改修資金などを捻出するため、財産目録に掲載されている歴史的価値のある宝物を一度だけ譲渡するケースを例に、法人税上の考え方を解説します。


## 1.宗教法人が保有する宝物を売却すると法人税がかかる?

まず、今回のケースを整理してみましょう。

A宗教法人では、本堂の大規模な改修工事を計画しています。

その資金の一部を捻出するため、長年保有してきた歴史的価値のある宝物を売却することになりました。

この宝物は宗教法人の財産目録にも掲載されています。

また、売却にあたっては、宗教法人法に基づく必要な手続きを経る予定です。

A宗教法人は、現在、収益事業を行っていません。

このような場合、

「宝物を売って利益が出れば、その利益について法人税を払う必要があるのでは?」

という疑問が生じます。

結論からいうと、今回のような事情を前提とすれば、宝物の譲渡益は法人税の課税対象とはならないものと考えられます。

なぜでしょうか。

ポイントは、「宝物の譲渡が収益事業に該当するのか」という点にあります。


## 2.宗教法人は「公益法人等」だから、すべての所得に課税されるわけではない

宗教法人は、法人税法上の「公益法人等」に該当します。

公益法人等については、一般の株式会社とは異なる課税の仕組みが採用されています。

原則として、公益法人等について法人税が課税されるのは「収益事業から生じた所得」です。

したがって、宗教法人に何らかの収入や利益が発生したからといって、そのすべてについて法人税が課税されるわけではありません。

ここで重要になるのが、

「その収入・利益が収益事業から生じたものなのか?」

という点です。

今回の宝物の売却についても、

「売却益が出た」

という事実だけで法人税が課税されるわけではなく、その譲渡が法人税法上の収益事業に該当するかどうかを確認する必要があります。


## 3.「物品販売業」に該当すれば課税される可能性がある

法人税法上、公益法人等の収益事業には、いくつかの業種が具体的に定められています。

その中には「物品販売業」も含まれています。

そこで、

「宝物を売ったのだから、物品販売業ではないのか?」

という疑問が出てきます。

確かに、法人税法施行令では、物品販売業について、通常の物品とはいえないものの販売も含む取扱いがあります。

しかし、宗教法人が行う物品の販売については、一定の特別な取扱いがあります。

例えば、お守り、お札、おみくじなどについては、社会通念上、一般の商品とは異なる宗教的な性質を持つものとして、通常の物品販売業には該当しないとされています。

一方、絵葉書、写真帳、暦、線香、ろうそく、供花など、一般の販売業者でも販売できる性質の商品を、一般の販売業者とおおむね同様の価格で販売している場合には、物品販売業に該当するものとして扱われます。

では、今回のような「宝物の譲渡」はどう考えればよいのでしょうか。


## 4.宝物の「譲渡」は、通常の「販売」とは違う

ここが今回の判断で重要なポイントです。

一般に「販売」という言葉からイメージするのは、

「商品を仕入れて、顧客に販売する」

という継続的な商売ではないでしょうか。

つまり、不特定または多数の者を対象として、商品を反復・継続して販売する行為です。

一方、今回の宝物は、宗教法人が長年保有してきた財産です。

それを本堂の改修資金に充てるため、一度だけ譲渡するというものです。

これは、

「商品を仕入れて販売する事業」

というよりも、

「宗教法人が保有している財産を処分する行為」

と考えるのが自然です。

したがって、単発の宝物の譲渡を、通常の物品販売業と同じように考えることには無理があります。


## 5.収益事業には「継続して行う」という考え方がある

法人税法上、公益法人等の収益事業は、単に一度でも何かを売ったら成立するというものではありません。

収益事業については、「継続して事業場を設けて行われるもの」という考え方が示されています。

これは、収益事業に対する課税が、継続的な事業活動から生じる所得を対象としていることと関係しています。

例えば、

「寺院が売店を設け、毎年継続的に商品を販売している」

という場合には、物品販売業に該当する可能性があります。

一方、

「本堂の改修資金を確保するため、長年保有していた宝物を一度だけ売却する」

という場合は、継続的な物品販売業とは性質が大きく異なります。

そのため、今回のような単発の資産譲渡については、物品販売業としての収益事業には該当しないと考えられます。


## 6.「収益事業の付随行為」にならないか?

もう一つ確認しておきたいのが、「収益事業の付随行為」です。

法人税法上、収益事業には、その性質上、その事業に付随して行われる行為も含まれます。

例えば、公益法人等が収益事業に使用している固定資産を処分した場合、その処分損益が収益事業の所得に含まれることがあります。

では、今回の宝物の譲渡も「収益事業の付随行為」として課税されるのでしょうか。

今回のケースでは、A宗教法人はそもそも収益事業を行っていません。

また、売却する宝物も収益事業に使用している資産ではありません。

したがって、

「収益事業に属する固定資産を処分した」

という関係にはありません。

そのため、収益事業の付随行為として法人税の課税対象になることもないと考えられます。


## 7.「不動産販売業」にも該当しない

法人税法上の収益事業には「不動産販売業」もあります。

そこで、

「宗教法人が財産を売却する以上、不動産販売業など別の収益事業に該当しないのか?」

という点も確認しておきましょう。

不動産とは、一般に土地や、その定着物である建物、構築物などをいいます。

今回売却するものは歴史的価値のある「宝物」です。

したがって、不動産販売業に該当するものでもありません。

この点からも、今回の宝物の単発の譲渡を法人税法上の収益事業とする理由は見当たりません。


## 8.法人税がかからなくても、宗教法人法上の手続きは必要

ここで注意したいのが、

「法人税がかからないなら、自由に売却してよい」

ということではない点です。

宗教法人法では、宗教法人を設立する際に、基本財産や宝物その他の財産の設定、管理、処分などに関する事項を規則に定めることとされています。

また、財産目録に掲載された宝物を処分する場合には、宗教法人法に基づく一定の手続きが必要となります。

例えば、規則で定められた手続きを行うほか、信者その他の利害関係人への公告などが必要となる場合があります。

したがって、税務上は課税対象にならないとしても、

「宗教法人法上の手続きをしっかり確認する」

ことは別途必要です。

税務と宗教法人法は、それぞれ別の観点から確認する必要があります。


## 9.「売却益が出たから課税」とは限らない

今回のケースで、特に覚えておいていただきたいのがこの点です。

法人税について、

「利益が出た=法人税がかかる」

と考えると、公益法人等の課税関係を正しく理解できません。

公益法人等の場合、まず、

「その利益が収益事業から生じたものなのか」

を確認する必要があります。

今回のように、

・宗教法人が収益事業を行っていない
・財産目録に掲載された宝物を処分する
・本堂の改修資金に充てるための単発の譲渡である
・継続的な物品販売業を行っているわけではない
・宝物が収益事業に属する固定資産でもない

という事情であれば、その譲渡益は法人税の課税対象とはならないものと考えられます。

もちろん、実際の取引については、譲渡の方法や頻度、対象となる財産の性質など、具体的な事実関係を確認する必要があります。


## 10.宗教法人が宝物などの財産を売却するときのチェックポイント

最後に、宗教法人が宝物などの重要な財産を処分する場合に確認しておきたいポイントをまとめます。

### ① 財産目録に掲載されているか

今回のような宝物の場合、宗教法人の財産目録に掲載されているかを確認します。

### ② 宗教法人の規則を確認する

財産の処分について、宗教法人の規則にどのような定めがあるのかを確認します。

### ③ 宗教法人法上の手続きを確認する

必要な決議や公告など、法令上求められる手続きを確認します。

### ④ 継続的な販売事業ではないか

一度だけの資産処分なのか、それとも反復・継続して物品を販売しているのかを確認します。

### ⑤ 収益事業に属する資産ではないか

収益事業に使用している固定資産を処分する場合には、処分益が収益事業の所得に含まれる可能性があります。

### ⑥ 譲渡の目的・経緯を記録する

「本堂の大規模改修資金に充てるため」など、なぜ処分するのかを明確に記録しておくとよいでしょう。


## まとめ|宗教法人の財産売却は「利益が出たか」だけで判断しない

宗教法人が保有する宝物を売却して利益が出た場合、

「利益が出たのだから法人税がかかる」

と単純に考えることはできません。

宗教法人は法人税法上の公益法人等であり、原則として収益事業から生じた所得について法人税が課税されます。

そのため、今回のような宝物の譲渡についても、

「この譲渡は法人税法上の収益事業に該当するのか?」

という点を確認する必要があります。

今回のケースでは、収益事業を行っていない宗教法人が、本堂の改修資金を捻出するため、財産目録に掲載された歴史的価値のある宝物を一度だけ譲渡するというものです。

このような単発の資産処分は、継続的に商品を販売する「物品販売業」とは性質が異なります。

また、宝物は不動産ではなく、収益事業に属する固定資産でもありません。

したがって、こうした事情を前提とすれば、その宝物の譲渡益は法人税の課税対象とはならないものと考えられます。

ただし、法人税が課税されないからといって、手続きが不要になるわけではありません。

財産目録に掲載された宝物を処分する場合には、宗教法人法上の手続きについても確認する必要があります。

宗教法人の重要な財産を処分するときには、

「税金がかかるか」

だけではなく、

「宗教法人として適切な手続きを踏んでいるか」

「その財産処分を第三者に説明できるか」

という視点も大切です。

特に歴史的・文化的価値のある宝物は、宗教法人にとって単なる資産ではない場合もあります。

本堂の改修など、やむを得ない事情による財産処分であっても、税務と宗教法人法の両面から事前に確認し、必要な手続きを整えてから実行することをおすすめします。


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