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税理士事務所

宗教法人が墓地の永代使用料・管理料を徴収する場合──課税される?されない?その境界を整理します

寺院が墓地を造成し、永代使用料や管理料を徴収するケースは少なくありません。
しかし、「宗教法人でも課税されるのでは?」と心配される住職の方も多いようです。
今回は、**宗教法人が行う墓地貸付事業の課税関係**について、法人税法・通達の観点からわかりやすく整理します。
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## 1. 宗教法人が行う「墓地の貸付け」は収益事業に該当しない
結論から言えば、宗教法人が行う**墓地の貸付け(永代使用料を含む)**は、**収益事業には該当しません。**
これは、法人税法施行令第5条第1項第5号ニに明記されています。
> 「宗教法人、財団法人及び社団法人が行う墳墓地の貸付業は、収益事業に該当しない。」
つまり、宗教法人として墓地を造成し、檀信徒等に永代使用権を設定して貸し付ける場合、
その永代使用料は**非課税(収益事業外)**の扱いとなります。
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## 2. 「永代使用料」は“墓地の貸付料”に該当する
ここで重要なのは、「永代使用料」が**土地の譲渡ではなく貸付にあたる**という点です。
永代使用権は、墓地の区画を「所有」するものではなく、「宗教法人の管理のもとで永続的に使用できる権利」です。
したがって、永代使用料を一括で受け取る場合も、実質は「貸付料の前払い」として扱われ、
宗教法人が行う限り、**収益事業の対象外**となります。
ただし、もし区画そのものを「譲渡」する形式にした場合は、
これは土地の販売とみなされ、**不動産販売業(収益事業)**として課税対象になります。
契約書上の表現には注意が必要です。
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## 3. 管理料(清掃・維持費)は“請負業”と判断される可能性も
一方で、永代使用料とは別に**毎年の管理料を徴収する場合**には注意が必要です。
その実態が、単に宗教法人内部で行う管理維持ではなく、
利用者に対して「有償で墓地の清掃や草刈りなどを請け負う」内容であれば、
**請負業(法人税法施行令第5条第1項第10号)**に該当する可能性があります。
この場合、徴収する管理料は**収益事業として課税対象**になります。
したがって、次のように整理しておくとよいでしょう。


| 区分 | 内容 | 税務上の扱い |
| 永代使用料 | 墓地の使用権設定に伴う一時金 | 非課税(収益事業外) |
| 管理料(宗教法人が自己管理する維持費) | 墓地維持費・清掃費など、宗教活動に付随 | 非課税(宗教活動の一環) |
| 管理料(請負的な性格が強い場合) | 他人の墓地を有償で清掃・整備 | 課税(請負業) |
宗教法人の目的・活動範囲に照らして「どの範囲が宗教行為の一部か」を明確にしておくことが、実務上のポイントです。
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## 4. 実務上の注意点──契約書と会計処理の一貫性を
非課税扱いを適正に保つためには、以下のような整備が重要です。
1. **永代使用契約書の明確化**
 「譲渡」ではなく「使用権の設定」であることを明記。
2. **管理料の性格を明文化**
 「宗教法人の維持管理費」として徴収する旨を規定。
3. **収益事業との区分経理**
 請負的性格の収入がある場合は、会計上別区分で管理。
こうした整備を行うことで、税務調査の際にも「宗教活動としての位置づけ」が説明しやすくなります。
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## 5. まとめ:墓地の貸付は宗教活動の延長、管理料は“実態”で判断
宗教法人が行う墓地貸付事業は、宗教活動と密接に関連しており、基本的には非課税です。
ただし、**管理料の取り扱いは実態次第で課税対象にもなり得る**ため、
「宗教活動に付随する管理」と「業務委託的な管理」を明確に分けておくことが大切です。

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