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税理士事務所
宗教法人の固定資産売却益・売却損──「益だけ除外・損だけ損金」はできるのか?
寺院や教会などの宗教法人が収益事業として土地や建物を保有し、長年にわたって駐車場などに利用してきた場合──
いざその資産を売却すると、「譲渡益」や「譲渡損」が生じることがあります。
では、この売却益・売却損は**法人税の課税対象となるのか?**
そして、譲渡益だけ課税除外し、譲渡損だけ損金に入れることは可能なのか?
今回は、法人税基本通達15-2-10をもとに、宗教法人が行う固定資産の処分損益の考え方を整理します。
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## 1. 原則:収益事業に属する資産の売却は「収益事業の損益」
宗教法人は、法人税法上「公益法人等」に該当し、**収益事業から生じた所得にのみ課税**されます(法法7)。
この収益事業には「付随行為」も含まれ、その中に次のようなものがあります(法基通15-1-6⑥)。
> 「公益法人等が収益事業に属する固定資産を譲渡・除却・処分した場合」
したがって、宗教法人が駐車場業などの収益事業で使用していた土地・建物を売却した場合、
**原則としてその譲渡損益は収益事業の損益**に含まれます。
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## 2. 例外:10年以上保有した固定資産などは「収益事業の損益に含めないことができる」
ただし、例外的に次の2つのケースでは「収益事業の損益に含めないことができる」とされています(法基通15-2-10)。
① **相当期間(おおむね10年以上)保有していた土地・建物等の処分損益**
② **収益事業を廃止する際の資産処分による損益**
この考え方の背景には、
「長期保有によるキャピタル・ゲインは、日常の事業活動から生じる利益とは性質が異なる」
という考え方があります。
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## 3. よくある誤解:「益は除外、損は損金」はできない
質問のケースでは、
- A土地(10年以上保有)→譲渡益が出る
- B土地(10年以上保有)→譲渡損が出る
このとき「Aの益だけ除外して、Bの損だけ損金にしたい」という希望がありますが、
**これは認められません。**
理由は、通達の括弧書にある以下の文言です。
> 「当該事業年度において2以上の固定資産の処分があるときは、その全てに係る損益とする。」
つまり、**同一事業年度内における処分損益は一体的に扱う必要があり、個別選択は不可**です。
A土地の譲渡益を除外するなら、B土地の譲渡損も除外しなければなりません。
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## 4. 事業年度ごとの「選択」は可能
ただし、通達の趣旨からすると、
「事業年度単位」で処分損益を収益事業に含めるか否かを選ぶことは可能です。
たとえば:
- 令和6年度にA土地を売却 → 譲渡益を収益事業に含めない
- 翌令和7年度にB土地を売却 → 譲渡損を収益事業の損金に含める
このように、**別の事業年度にわたる場合は個別に判断してよい**というのが実務上の取扱いです。
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## 5. 実務上の留意点(宗教法人としての視点から)
- 「10年以上保有」の判定は、**取得日から処分日までの実質的保有期間**で確認。
- 会計上は「特別損益」区分で処理し、税務上の取扱い(含める/含めない)を明確に記録する。
- 複数資産を同一年度に売却する場合は、**トータルで益か損か**を見極めた上で判断する。
- 税務署への説明に備えて、**保有目的・売却理由・期間の根拠書類**を保管しておくことが重要。
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## 6. まとめ
- 宗教法人の収益事業に属する固定資産の売却益・損は、原則として課税対象。
- ただし「10年以上保有」「事業廃止」の場合は、損益を収益事業から除外できる。
- ただし**同一年度内の売却については、益損一体で判断。損だけ損金、益だけ除外は不可。**
- 年度をまたぐ場合には、個別に判断可能。
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寺院が土地や建物を処分する局面は、本堂の改修、境内整備、あるいは地域再編など、
信仰と経営の両面で大きな節目です。
こうした判断を誤ると、**思わぬ税務リスクや信者対応の問題**に発展することもあります。
宗教法人の資産処分は、「信仰の理念」と「法の原則」の両立を意識しながら、
年度単位で整合性ある会計処理を行うことが何より大切です。
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