クレメンティア
税理士事務所

宗教法人への多額の寄附に注意!会社側の法人税と宗教法人側の課税関係


「会社から多額の寄附を受けることになったのですが、宗教法人側に税金はかかるのでしょうか?」

宗教法人の運営に携わっていると、このような疑問が生じることがあります。

信者や関係者からの寄附は、宗教法人の活動を支える大切な財源の一つです。

一方、会社から数千万円、あるいは数億円という多額の寄附を受ける場合には、少し慎重に考える必要があります。

なぜなら、寄附を受ける宗教法人側の税務だけでなく、「寄附をする会社側で、その支出がどのように扱われるのか」という問題もあるからです。

特に、会社の役員が寄附先の宗教法人の代表者を務めているようなケースでは注意が必要です。

今回は、会社から宗教法人へ多額の寄附が行われるケースを例に、会社側と宗教法人側、それぞれの法人税上のポイントを解説します。


## 宗教法人が多額の寄附を受けるとき、なぜ税務上の確認が必要なのか

宗教法人が寄附を受けること自体は、決して珍しいことではありません。

信者の方からの寄附、檀信徒からの寄附、企業からの支援など、宗教法人の活動を維持するためにさまざまな形で資金が提供されます。

では、数百万円、あるいは5億円といった非常に大きな金額の寄附を受けた場合はどうでしょうか。

「金額が大きいから、宗教法人側に法人税がかかるのでは?」

と考える方もいるかもしれません。

しかし、法人税について重要なのは、単純に金額の大小だけではありません。

その収入が何のために受け取られたものなのか、そして法人税法上の「収益事業」に該当するものなのかを確認する必要があります。

さらに、寄附をする会社側についても、

「本当に会社自身が負担すべき寄附なのか?」

という別の問題があります。

つまり、多額の寄附では「受け取る側」と「支払う側」の両方から税務を確認することが重要なのです。


## 宗教法人は「公益法人等」に該当する

まず、宗教法人の法人税について基本的な仕組みを確認しておきましょう。

宗教法人は、法人税法上の「公益法人等」に該当します。

公益法人等については、一般の株式会社とは異なり、原則として収益事業から生じた所得について法人税が課税される仕組みになっています。

したがって、

「宗教法人だから法人税は一切かからない」

というわけではありません。

例えば、宗教法人が行う事業のうち、法人税法上の収益事業に該当するものから所得が生じれば、その所得について法人税が課税される可能性があります。

一方、宗教活動に伴う収入など、収益事業に該当しないものについては、一般の株式会社と同じように法人税が課税されるわけではありません。

宗教法人の税務を考えるときには、

「これは収益事業に該当する収入なのか?」

という視点が重要になります。


## 宗教法人が受け取った「寄附金」に法人税はかかる?

では、宗教法人が会社から寄附金を受け取った場合はどうでしょうか。

宗教法人が寄附金を受け取るという行為そのものは、法人税法施行令5条1項に定められた収益事業のいずれにも該当しません。

したがって、純粋な寄附金として受け取ったものであれば、原則として、その寄附金について宗教法人側に法人税の課税関係は生じないと考えられます。

ここで大切なのは、

「会社から受け取ったから課税される」

「5億円だから課税される」

という単純な判断ではないということです。

重要なのは、その5億円が本当に「寄附」といえるのかどうかです。

例えば、宗教法人が会社に対して商品やサービスを提供し、その対価として5億円を受け取っているのであれば、単純な寄附金とは話が変わってきます。

形式的に「寄附金」と呼んでいるだけではなく、実際の取引内容を見ることが重要です。


## 会社から5億円の寄附を受けたケース

ここで具体的なケースを考えてみましょう。

A社は、甲一族が発行済株式のすべてを保有する同族会社です。

A社の会長である甲氏は、現在は代表権のない取締役会長ですが、創業以来、2年前まで代表取締役を務めていました。

一方、甲氏は宗教法人Bの代表理事にも就任し、熱心に宗教活動を行っています。

宗教法人Bでは、今後の活動を維持・継続するために多額の資金が必要となりました。

そこで、甲氏の意向も踏まえ、A社がBに5億円を寄附することを検討しています。

この場合、宗教法人B側からすると、

「5億円の寄附を受けたのだから、その5億円に法人税がかかるのでは?」

という疑問が生じます。

しかし、先ほど説明したとおり、純粋な寄附金であれば、宗教法人B側では通常、法人税の課税対象となる収益事業の所得には該当しません。

むしろ慎重に検討すべきなのは、A社側の税務です。


## 「寄附する会社側」に問題が生じることもある

会社が支出した寄附金には、法人税上、損金算入について一定の制限があります。

例えば、一般寄附金については、一定の損金算入限度額が設けられています。

そのため、A社が5億円を寄附した場合、その全額が当然に損金になるわけではありません。

しかし、

「損金にならない部分が大きいのだから、税務上は問題ない」

とは限りません。

ここが非常に重要なポイントです。

問題になるのは、その5億円がそもそも「A社自身が負担すべき寄附金なのか」という点です。

会社が支出した寄附金であっても、実質的には会社の役員個人が負担すべきものと認められる場合には、役員に対する給与として取り扱われる可能性があります。


## 役員個人が負担すべき寄附を会社が負担すると「給与」になることがある

法人税基本通達9-4-2の2では、法人が損金として支出した寄附金で、その法人の役員等が個人として負担すべきものと認められるものについては、その負担すべき者に対する給与として取り扱う考え方が示されています。

つまり、

「会社名義で支払った」

という形式だけで判断されるわけではありません。

実質的に誰が負担すべき支出なのかを見ることになります。

例えば、会社の社長が個人的に関係している団体への支出を、会社の経費として処理しているケースです。

その支出が会社の事業とは関係が薄く、社長個人が負担すべきものと認められれば、会社から社長への給与と認定される可能性があります。

宗教法人への寄附についても、この考え方には注意が必要です。


## 宗教法人の代表者が会社の役員でもある場合は特に注意

今回のケースで特に重要なのが、A社の会長である甲氏が、寄附先である宗教法人Bの代表理事でもあるという点です。

もちろん、

「会社の役員が宗教法人の代表者を務めている」

という事実だけで、会社からの寄附が直ちに役員個人への給与になるわけではありません。

企業が地域社会との関係や事業上の理由から、神社や寺院などに寄附をすることは実際にあります。

例えば、地域のお祭りなどに際して、企業が奉納金を支出するケースです。

このような支出については、会社と地域との関係や支出の目的、金額などを踏まえて判断することになります。

しかし、今回のように5億円という非常に大きな金額で、しかも会社の役員が寄附先の宗教法人の代表理事を務めている場合には、慎重な検討が必要です。

「会社から宗教法人への寄附」という形式だけではなく、

・なぜ会社が寄附するのか
・誰の意思で寄附が決まったのか
・会社にとってどのような合理性があるのか
・寄附先との関係はどのようなものか
・金額は社会通念上妥当なのか

といった事情を総合的に確認する必要があります。


## 「5億円」という金額にも注意したい

税務上、寄附金の金額だけで直ちに「会社の寄附ではない」と判断されるわけではありません。

ただし、5億円という金額は、一般的な企業が地域社会との付き合いなどで行う儀礼的な寄附とは、かなり性質が異なると考えられます。

特に、

・会社の会長が宗教法人の代表理事を務めている
・会長の意向を踏まえて会社が寄附をする
・寄附金額が5億円に及ぶ

という事情が重なると、その支出が本当に会社自身のための寄附なのか、それとも実質的には会長個人が負担すべき支出なのかが問題になりやすくなります。

税務では、形式だけではなく実質が重視されます。

そのため、多額の寄附を予定している場合には、支出を決定する前の段階から税務上の整理をしておくことが重要です。


## 宗教法人側で確認しておきたいこと

では、寄附を受ける宗教法人側では、何に注意すればよいのでしょうか。

まず大切なのは、その5億円が本当に「寄附金」として受け取るものなのかを明確にしておくことです。

例えば、

・寄附の目的
・寄附を受けることになった経緯
・寄附者
・寄附金額
・寄附に条件が付いているか
・宗教法人から寄附者へ何らかの対価を提供するものではないか

といった点を整理しておくとよいでしょう。

特に金額が大きい場合には、後から「なぜこの寄附を受けたのか」と聞かれたときに、宗教法人として説明できるようにしておくことが大切です。

寄附に至った経緯や意思決定について、理事会等の議事録などに適切に記録しておくことも、宗教法人の運営上重要な対応になります。


## 「税金がかからないから受け取ればいい」ではない

宗教法人が会社から多額の寄附を受ける場合、

「宗教法人側では法人税がかからない」

という一点だけを見て判断するのは適切ではありません。

今回のようなケースでは、むしろ寄附をする会社側において、

「その支出は本当に会社自身が負担すべきものなのか」

という問題が重要になります。

宗教法人側では、純粋な寄附金であれば、通常、その受領自体によって法人税が課税されることはありません。

しかし、会社側でその支出が実質的に役員個人が負担すべきものと認定されれば、役員に対する給与として扱われる可能性があります。

そのため、多額の寄附については、

「受け取る宗教法人に税金がかかるか」

だけでなく、

「寄附する会社ではどのような税務上の問題が生じる可能性があるか」

まで含めて考えることが大切です。


## まとめ|多額の寄附は「受け取る側」と「支払う側」の両方から確認する

宗教法人が会社から寄附を受けた場合、その寄附金が法人税法上の収益事業に該当するものでなければ、原則として宗教法人側に法人税の課税関係は生じません。

しかし、注意したいのは寄附をする会社側です。

会社が支出した寄附金については、一般寄附金として損金算入に一定の制限があります。

さらに、その寄附が実質的に会社の役員個人が負担すべきものであると認められれば、役員に対する給与として扱われる可能性があります。

特に、

「会社の役員が寄附先の宗教法人の代表者を務めている」

「役員個人の意向を踏まえて寄附が決定されている」

「寄附金額が非常に大きい」

といった事情がある場合には、より慎重な検討が必要です。

宗教法人側からすると、

「寄附金を受け取るだけなら法人税はかからない」

という点だけを見るのではなく、

「なぜこの寄附が行われるのか」
「会社側ではどのように税務処理されるのか」
「宗教法人として、この寄附をどのように説明できるのか」

まで考えておくことが大切です。

特に多額の寄附は、一度受け取ってしまうと、後から整理することが難しくなる場合があります。

寄附を受けることが決まってからではなく、具体的な金額や使途が決まった段階で、寄附する側・受け取る側の双方で税務上の取扱いを確認しておくことをおすすめします。

宗教法人の運営では、「税金がかかるかどうか」だけでなく、「なぜそのお金を受け取ったのかを第三者に説明できるか」という視点も大切です。

多額の寄附を受ける予定がある場合には、実行前に税理士などの専門家へ相談し、税務と法人運営の両面から準備しておくと安心です。


Instagram

インスタグラム

    Related

    関連記事