クレメンティア
税理士事務所

 宗教法人の固定資産税非課税の限界──「専ら本来の用に供する」とは何か


寺院や教会などの宗教法人が保有する土地は、宗教活動のために使われている場合、地方税法により**固定資産税が非課税**になります。
しかし、その土地の一部をカフェや宿泊施設などの**収益事業に活用した場合**、その非課税範囲が問題となることがあります。
今回は、令和5年6月29日大阪高裁判決(令和4年(行コ)第164号)──「固定資産税及び都市計画税賦課決定処分取消請求事件」──を題材に、宗教法人の土地活用と課税リスクについて考えます。
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## 1. 事件の概要
宗教法人が所有する土地(対象地)は、もともと**本堂へ通じる参道として使用**されていました。
しかし、その一部に**カフェやホテル等の商業施設**が建設され、賃貸事業に利用されていたのです。
宗教法人は、「対象地は境内地であり、宗教法人法第3条にいう“宗教法人が専らその本来の用に供する”土地にあたる」として、固定資産税の非課税を主張しました。
一方、市側は「宗教活動以外の営利的用途に恒常的に使われている」として、課税処分を行いました。
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## 2. 裁判所の判断
大阪高裁は、以下の理由で**課税処分を適法**と判断しました。
> 「対象地は宗教活動のためだけでなく、不動産賃貸業(カフェ・ホテル)のためにも使用されており、
> その使用は一時的なものではなく恒常的なものである。
> よって『宗教法人が専らその本来の用に供するもの』には当たらない。」
つまり、宗教法人の土地であっても、
- **収益事業への利用が継続的に行われている**
- **宗教活動との関連性が薄い(同質性がない)**
場合には、固定資産税の非課税対象にはならない、という明確な判断です。
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## 3. 「専ら本来の用に供する」とは何を意味するのか
地方税法第348条第2項第3号では、
「宗教法人が専らその本来の用に供する土地・建物」は非課税とされています。
ここでいう「本来の用」とは、
- 教義の宣布
- 儀式行事の執行
- 信者の教化教育
といった宗教法人法第2条に掲げる**宗教目的の実現行為**を指します。
したがって、収益目的の賃貸や運営が行われている場合、
その活動がどれほど「社会貢献的」であっても、
**宗教活動と直接の関連性・同質性がない限り、非課税の根拠にはなりません**。
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## 4. 現場での留意点──住職・責任役員が気をつけるべきこと
### (1)収益事業の範囲を明確に区分する
宗教活動に使う部分と収益事業に使う部分を**境界・契約・会計上で明確に分ける**ことが重要です。
「一体的に利用している」状態だと、全体が課税対象とみなされるリスクがあります。
### (2)宗教性を保つための「一体利用」の根拠を残す
境内地に茶屋や宿坊を設ける場合でも、
・参拝者の休憩所や接待所として宗教的目的に資する
・寺院行事や修行体験に関連づけて運営している
といった**宗教的意義の文書化・運用の一貫性**が、非課税判断の重要な材料になります。
### (3)会計・登記・契約の透明化
宗教法人会計規則に基づき、
- 「宗教活動会計」と「収益事業会計」の分離
- 不動産賃貸契約の明確化
- 管理・運営責任者の明示
を行い、税務署や自治体からの照会に備える必要があります。
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## 5. 今後の示唆
今回の判決は、「参道など宗教活動に関連する土地であっても、商業利用が恒常的に行われていれば課税対象になる」と明確に示した点で重要です。
宗教法人が地域に開かれた活動を行うことは大切ですが、**収益と宗教の線引き**を曖昧にすると、非課税の恩恵を失う可能性があります。
宗教法人法と地方税法の双方を踏まえ、
「宗教性を保ちながら、どこまで社会に開くか」──。
まさに現代の寺院経営・宗教法人運営の核心といえるでしょう。
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## 6. まとめ
- 「専ら本来の用に供する」とは、宗教活動のために直接使うことを指す。
- 商業施設・賃貸利用が恒常的に行われていれば、非課税は認められにくい。
- 宗教性の確保・会計の区分・法的根拠の整備が今後のリスク対策となる。
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──税理士・CFP®/クレメンティア税理士事務所代表
小林 匠

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