クレメンティア
税理士事務所
メンタル不調による長期休職がある事業所は13.5%!中小企業が今すぐ取り組みたい職場のストレス対策
「従業員が突然、長期間休職することになったら、自社の業務は問題なく回るでしょうか?」
中小企業にとって、人材は会社を支える大切な経営資源です。しかし、従業員のメンタル不調による休職や退職は、本人だけでなく、会社全体にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
厚生労働省が公表した「令和7年労働安全衛生調査(実態調査)」によると、メンタルヘルス不調によって1か月以上の休業者や退職者がいた事業所は13.5%に上りました。
今回は、この調査結果をもとに、中小企業の経営者が知っておきたい職場のストレスの実態と、従業員のメンタル不調を防ぐために取り組みたい対策について解説します。
1.メンタル不調による休職・退職があった事業所は13.5%
厚生労働省の調査によると、過去1年間にメンタルヘルス不調によって連続1か月以上休業した労働者、または退職した労働者がいた事業所の割合は13.5%でした。
前年の調査では12.8%だったため、0.7ポイント上昇しています。
内訳を見ると、次のとおりです。
連続1か月以上の休業者がいた事業所:10.8%
メンタルヘルス不調による退職者がいた事業所:6.5%
いずれも前年調査から上昇しています。
もちろん、メンタル不調を抱える従業員がいること自体を、会社の責任と単純に結び付けることはできません。
しかし、この結果からは、従業員の心の健康に配慮し、安心して働ける環境を整えることの重要性がうかがえます。
特に中小企業では、一人の従業員が複数の業務を担当していることも珍しくありません。
その従業員が長期間休職することになれば、業務の引き継ぎや人員配置の見直しが必要になり、ほかの従業員にも負担がかかる可能性があります。
従業員の健康を守ることは、本人のためだけでなく、会社の事業を安定して継続するためにも重要なのです。
2.従業員の67.5%が仕事に強いストレスを感じている
同調査では、現在の仕事や職業生活について、強い不安や悩み、ストレスを感じている労働者は67.5%でした。
およそ3人に2人が、仕事に関する強いストレスを感じている計算になります。
ストレスの原因として多かったのは、次の項目です。
仕事の量:39.5%
仕事の失敗、責任の発生など:39.5%
対人関係(セクハラ・パワハラを含む):32.9%
仕事の質:30.7%
顧客や取引先などからのクレーム:22.1%
注目したいのは、ストレスの原因が一つではないことです。
仕事の量が多ければ、長時間労働や疲労につながる可能性があります。
責任の重い仕事を任されている場合には、失敗への不安やプレッシャーを感じることもあるでしょう。
また、職場の人間関係だけでなく、顧客からの厳しい要求やクレームが負担になっているケースも考えられます。
こうした問題は、従業員個人の努力だけで解決できるとは限りません。
例えば、仕事が特定の社員に集中しているのであれば、業務分担を見直す必要があるかもしれません。
相談しにくい職場であれば、上司との面談方法やコミュニケーションの取り方を改善することも考えられます。
経営者として大切なのは、従業員に「もっと頑張ってほしい」と求めるだけでなく、頑張り続けなければ仕事が回らない状態になっていないかを確認することです。
3.年代によって異なる仕事のストレスにも注意
今回の調査では、強いストレスの原因として最も多かった項目が、年代によって異なっていました。
具体的には、次のような結果となっています。
20~29歳:仕事の失敗、責任の発生など
30~39歳:仕事の失敗、責任の発生など
40~49歳:仕事の量
50~59歳:仕事の質
若手社員の場合、仕事の進め方が十分に身に付いていない段階で責任のある仕事を任され、失敗への不安を感じることがあるかもしれません。
そのような場合には、業務の手順を丁寧に説明することや、困ったときに相談できる先輩を決めておくことが役立ちます。
一方、経験を積んだ社員については、業務量の増加や役割の広がりなどが負担になっていないか、確認することが大切です。
ただし、これはあくまで年代別の傾向です。年齢だけでストレスの原因を決め付けることはできません。
同じ職場で働いていても、担当業務や家庭の事情、本人の経験などによって、感じる負担は異なります。
そのため、年代別の傾向を参考にしながらも、一人ひとりの状況を把握する姿勢が求められます。
4.従業員のメンタル不調は会社経営にも影響する
従業員のメンタル不調は、本人の健康に関わる問題であると同時に、会社の業務運営にも影響する可能性があります。
例えば、営業担当者が長期間休職した場合、その担当者が抱えていた顧客への対応を、ほかの社員が引き継がなければなりません。
経理や総務などの専門的な業務を一人で担当している場合には、代わりに対応できる人が見つからず、業務が滞ることも考えられます。
また、休職した社員の仕事をほかの社員が引き受けることで、残された社員の負担が増える可能性もあります。
その結果、職場全体の疲労が蓄積し、新たな休職者が発生するという悪循環に陥ることも考えられます。
さらに、退職者が出れば、新たな人材を採用するための費用や、仕事を覚えてもらうための教育時間も必要になります。
特に人手不足が続く中小企業では、こうした影響が経営上の負担につながりやすいため、注意が必要です。
ここで考えたいのが、従業員の健康管理と経営管理は、決して無関係ではないということです。
売上や利益、資金繰りを管理するのと同じように、人材に関するリスクにも目を向けておくことが、安定した経営につながります。
5.中小企業が取り組みたいメンタルヘルス対策5選
では、従業員のメンタル不調を防ぐために、経営者は何から始めればよいのでしょうか。
大規模な制度を導入しなくても、日々の業務やコミュニケーションを見直すことから始められます。
① 定期的に従業員と話す機会を設ける
日常的に顔を合わせていても、従業員が抱えている悩みをすべて把握できるとは限りません。
そこで、定期的に面談する機会を設け、仕事の進め方や業務量、人間関係などについて話を聞いてみましょう。
「最近、仕事で困っていることはありませんか?」
「業務量が多すぎると感じることはありませんか?」
こうした質問から、普段は表面化しにくい問題が見えてくることもあります。
ただし、面談は従業員を評価したり、無理に悩みを聞き出したりする場ではありません。
安心して話せる雰囲気をつくり、必要な支援につなげることが大切です。
② 業務量や仕事の分担を見直す
特定の従業員に仕事が集中していないか、確認してみましょう。
本人の能力が高いからといって、仕事を任せ続けていると、知らないうちに負担が大きくなっている可能性があります。
業務を一覧にして担当者を確認したり、繁忙期の仕事量を把握したりするだけでも、負担の偏りに気付きやすくなります。
必要に応じて、仕事の優先順位を整理することや、担当業務を分散することも検討しましょう。
③ 相談しやすい職場環境をつくる
失敗や悩みを相談したときに、頭ごなしに叱られたり、責められたりする職場では、従業員が問題を抱え込んでしまう可能性があります。
もちろん、仕事上のミスに対する指導や改善は必要です。
しかし、失敗した事実を責めるだけでは、問題の再発防止にはつながりません。
何が原因だったのか、どうすれば改善できるのかを一緒に考える姿勢が重要です。
日頃から相談しやすい関係を築いておくことが、問題の早期発見にもつながります。
④ ハラスメント防止の仕組みを整える
職場の人間関係は、仕事のストレスに関わる重要な要素です。
パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントなどを防止するため、会社としての方針を明確にし、相談窓口や対応方法を整備しましょう。
また、相談を受けた場合には、プライバシーに配慮しながら適切に対応する必要があります。
中小企業であっても、ハラスメント防止に関する法令上の義務があるため、自社の体制が適切かどうか確認しておくことが大切です。
⑤ 管理職や上司の対応力を高める
従業員の変化に気付きやすい立場にいるのが、日常的に接している上司や管理職です。
そのため、部下の様子の変化に気付くポイントや、相談を受けたときの対応について学ぶ機会を設けることも有効です。
ただし、上司がメンタルヘルスの専門家になる必要はありません。
大切なのは、一人で問題を抱え込まず、必要に応じて人事担当者や外部の専門家などにつなげられる体制を整えることです。
6.従業員の変化に気付いたら、早めに声をかける
メンタル不調への対応では、従業員の変化に気付き、必要な支援につなげることが重要です。
例えば、次のような変化が続いている場合には、本人の状況を確認するきっかけになります。
遅刻や欠勤が増えた
以前より仕事のミスが増えた
周囲との会話や交流が少なくなった
疲れた様子が続いている
仕事に関する相談が急に増えた、または減った
もちろん、こうした変化があったからといって、必ずしもメンタル不調が原因とは限りません。
そのため、決め付けずに、まずは本人の話を聞くことが大切です。
「最近、少し疲れているように見えるけれど、何か困っていることはない?」
このように、相手を気遣う言葉で声をかけることから始めてみましょう。
本人が不調を訴えている場合や、対応に迷う場合には、産業医、医療機関、地域産業保健センターなどの専門的な支援を活用することも検討してください。
また、休職や復職に関する制度についても、あらかじめ確認しておくと、実際に問題が起きたときに落ち着いて対応しやすくなります。
7.税理士の視点から考える、経営と人材のリスク管理
税理士として中小企業の経営を考える際には、売上や利益だけでなく、それらを支える人材や業務体制にも目を向けることが重要だと考えます。
例えば、会社の利益が順調に伸びていても、特定の従業員に業務が集中していれば、その人が休職した際に事業運営が難しくなるかもしれません。
また、慢性的な残業や人手不足が続いている場合には、採用や業務改善に必要な費用を含めて、今後の経営計画を考える必要があります。
具体的には、次のような点を確認してみましょう。
特定の社員しか対応できない業務が多くないか
業務量や残業時間に偏りがないか
従業員の採用や教育に必要な予算を確保できているか
休職者が発生した場合の業務継続体制が整っているか
業務効率化のために見直せる仕事や仕組みがないか
職場環境の改善には、業務システムの導入や人員配置の見直しなど、一定の費用が必要になることもあります。
その場合は、目先の支出だけで判断するのではなく、業務の効率化や人材定着への効果も考慮しながら、無理のない計画を立てることが大切です。
なお、メンタルヘルス不調への具体的な対応や休職制度の整備については、社会保険労務士や産業保健の専門家などと連携しながら進めることをおすすめします。
人材に関する問題を早めに把握し、経営面からも備えておくことが、会社の安定した成長を支えることにつながります。
8.まとめ|従業員が安心して働ける職場づくりを
今回の厚生労働省の調査では、メンタルヘルス不調による休業者や退職者がいた事業所は13.5%、仕事や職業生活に強いストレスを感じている労働者は67.5%という結果でした。
従業員のメンタル不調は、本人の健康に関わる問題であると同時に、人材の定着や業務の継続にも影響する可能性があります。
特に、限られた人員で事業を運営する中小企業では、日頃から従業員の声に耳を傾け、仕事量や業務分担を見直しておくことが重要です。
まずは、次の3つから始めてみてはいかがでしょうか。
従業員と話す機会を定期的に設ける
業務量や仕事の分担に偏りがないか確認する
困ったときに安心して相談できる環境を整える
大切なのは、問題が起きてから対応するだけでなく、問題が起きにくい職場を日頃からつくっておくことです。
従業員が安心して働ける環境は、会社にとっても大切な財産です。
人材を守る取り組みを、経営の安定と持続的な成長につなげていきましょう。
【参考資料】
厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r07-46-50b.html
Instagram
インスタグラム
Related
関連記事
-
2023.07.29法人様をサポート | 大阪市の税理士ならクレメンティア税理士事務所
-
2025.11.07法人税の申告所得・税額が過去最高に:黒字化が進む企業、問われる次の一手
-
2025.11.30宗教法人の駐車場と印紙税──住職の皆さまが誤解しやすいポイントを専門家が整理します
-
2025.11.30税務調査に強い法人経営とは?大阪市の税理士が教える事前対策
-
2025.11.28大阪市宗教法人の収益事業における「役員報酬」の適正化とは
-
2025.11.21法人が適切に使える節税スキームとは?大阪市での導入事例あり
-
2025.11.20宗教法人×不動産活用|大阪市で進む資産運用と税務の最適解
-
2025.11.18宗教法人が土地の寄附を受けるときに注意すべき「措法40条」──知らないと“寄附者”に課税リスク
-
2025.11.17宗教法人が運営する「1泊1,000円の宿泊施設」は課税対象?──“低廉な宿泊施設”の判断ポイントをわかりやすく整理
-
2025.09.202025年税制改正、大阪市の税理士が解説する宗教法人への影響とは
-
2025.10.01宗教法人にもオンライン税務調査の波──住職・代表役員が知っておくべき“DX時代の備え”
-
2025.09.256. 宗教法人の収益事業と法人税・地方法人税のポイント
-
2025.09.26大阪市でよくある宗教法人の税務調査パターンとその対策
-
2025.09.267. 宗教法人の法人税・地方法人税の申告・納付と事業年度対応
-
2025.09.181.収益事業を行う宗教法人の税務顧問が教える基礎知識
-
2025.09.27大阪市で税理士と一緒に取り組む法人の節税とキャッシュフロー改善
-
2025.10.06大阪市の宗教法人向け|収益事業開始前にやるべき会計整備3ステップ
-
2025.10.07大阪市で税務と経営両面から法人を支える顧問税理士の選び方
-
2025.12.22宗教法人の経理担当者必見!大阪市の税理士が語る記帳のプロセス改革
-
2025.09.11大阪市の法人が税理士に「税務+経営相談」を一括で依頼するメリット
-
2026.08.17保育士が幼稚園教諭免許を取得する費用を宗教法人が負担したら課税?税理士が解説
-
2026.01.15税理士が解説|大阪市 宗教法人の「収益事業の再構築」を行うために
-
2026.08.11無利息でお金を貸しても大丈夫?宗教法人から公益法人への貸付けを税理士が解説
-
2025.09.16税理士に経営相談もできる?大阪市の法人向けワンストップ支援とは