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「106万円の壁」が撤廃へ!社会保険加入で中小企業が注意すべき5つのポイント
「106万円の壁がなくなるらしいけれど、会社にはどんな影響があるの?」
最近、こうした疑問を持つ中小企業経営者の方も多いのではないでしょうか。
令和7年6月に成立した年金制度改革法により、短時間労働者の社会保険加入要件の一つである「賃金要件」が撤廃される予定です。
現在、パート・アルバイトなどの短時間労働者については、「年収106万円」が社会保険加入の一つの目安になっています。
しかし、この「106万円の壁」がなくなることで、今後は年収よりも「週20時間」という労働時間が重要なポイントになってきます。
今回は、中小企業経営者の方が押さえておきたい実務上のポイントを解説します。
1.そもそも「106万円の壁」とは?
まず、「106万円の壁」が何を意味しているのか確認しておきましょう。
現在、一定の条件を満たすパート・アルバイトなどの短時間労働者は、厚生年金・健康保険への加入対象となります。
主な加入要件は次の5つです。
所定内賃金が月8万8,000円以上
一定規模以上の企業に勤務している
所定労働時間が週20時間以上
2か月を超えて使用される見込み
学生ではない
このうち「月8万8,000円以上」という賃金要件を年収に換算すると、おおむね106万円になります。
これが、いわゆる「106万円の壁」です。
2.2026年10月から「賃金要件」が撤廃される予定
今回の改正で大きく変わるのが、この賃金要件です。
令和7年6月に成立した年金制度改革法により、短時間労働者の社会保険加入要件から賃金要件が撤廃される予定となっています。
撤廃時期については、2026年10月1日とする政令案が示されています。
つまり、これまでのように、
「年収106万円を超えるかどうか」
だけで社会保険加入の対象になるかを考えるのではなく、
「週20時間以上働いているか」
という点が、これまで以上に重要になってきます。
もちろん、勤務期間や学生であるかどうかなど、他の加入要件がすべてなくなるわけではありません。
そのため、「週20時間なら全員が社会保険加入」と単純に考えないことも大切です。
3.実は「106万円の壁撤廃=社会保険加入者が急増」とは限らない
ここは、経営者の方にぜひ知っておいていただきたいポイントです。
「106万円の壁がなくなる」と聞くと、
「これまで社会保険に入っていなかったパートが、一斉に加入するのでは?」
と心配になるかもしれません。
しかし、実際にはそうとは限りません。
現在でも最低賃金は上昇しており、週20時間以上働けば、月8万8,000円以上になるケースが増えています。
そのため、最低賃金以上で勤務する一般的な短時間労働者については、賃金要件が撤廃されたことによって新たに社会保険加入の対象となるケースは、限定的になると考えられます。
つまり、今回の改正で実務上より重要になるのは、
「106万円」という金額よりも「週20時間」という労働時間
なのです。
4.中小企業にとっては「人件費」が重要なポイント
社会保険に加入する従業員が増えれば、会社が負担する社会保険料も増える可能性があります。
例えば、パート従業員の給与だけを見て、
「月10万円だから、人件費は10万円」
と考えるのは適切ではありません。
会社にとっては、給与に加えて会社負担分の社会保険料なども含めた金額が、実際の人件費になります。
一人だけなら大きな金額ではなくても、パート従業員が10人、20人と増えれば、年間では無視できない差になる可能性があります。
特に、
飲食店
小売業
介護・福祉
サービス業
多店舗展開している会社
など、パート・アルバイトの人数が多い会社では注意が必要です。
今後の採用計画やシフトを考えるときには、**給与だけではなく社会保険料を含めた「総人件費」**で判断することをおすすめします。
5.「週20時間」の管理がこれまで以上に重要になる
これから中小企業経営者が注意したいのが、従業員の労働時間です。
これまでは、
「106万円を超えないように働きたい」
という従業員側の希望から、勤務時間を調整するケースもありました。
しかし、賃金要件が撤廃されれば、この考え方は変わってきます。
会社側としても、
「この人は週何時間働く契約なのか?」
「実際にはどれくらい勤務しているのか?」
をより正確に把握する必要があります。
雇用契約書や労働条件通知書、シフト管理などを一度確認してみてください。
特に、繁忙期だけ勤務時間が増える従業員などについては、社会保険の加入判定との関係を確認しておくことが大切です。
6.さらに「企業規模要件」も段階的に変わる
今回の改正は、106万円の壁だけで終わりではありません。
社会保険の適用対象となる企業規模についても、2027年10月から段階的に撤廃される予定です。
現在は企業規模によって短時間労働者への社会保険適用が異なりますが、今後はより多くの中小企業にも影響が広がっていくことが考えられます。
そのため、
「うちは小さい会社だから関係ない」
と考えるのは少し危険です。
今すぐ対象にならなくても、数年後を見据えてパート従業員の働き方や人件費を考えておく必要があります。
7.「103万円の壁」とは別の話なので注意
もう一つ、経営者の方が混同しやすいのが「103万円の壁」です。
「106万円の壁がなくなるなら、103万円の壁もなくなったの?」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、これは別の制度です。
所得税については、令和7年度税制改正により、いわゆる「103万円の壁」は見直されています。
令和8年分の所得税では、基礎控除額と給与所得控除の最低保障額を合わせた178万円までが所得税の非課税となる仕組みが示されています。
一方、社会保険は厚生年金・健康保険の制度です。
つまり、
「税金の壁」と「社会保険の壁」は別物
と考える必要があります。
従業員から相談を受けたときも、この2つを分けて説明することが重要です。
8.中小企業経営者が今から確認しておきたい5つのこと
今回の改正に備えて、まずは次の5点を確認してみてください。
① パート・アルバイトの週所定労働時間
特に週20時間前後で勤務している従業員を洗い出してみましょう。
② 現在の社会保険加入状況
誰が加入していて、誰が加入していないのかを確認します。
③ 今後加入対象となる可能性がある従業員
現在は賃金要件などで対象外でも、制度変更後に判定が変わる従業員がいないか確認します。
④ 社会保険料を含めた人件費
給与だけでなく、会社負担分の社会保険料を含めて年間コストを計算してみましょう。
⑤ 雇用契約とシフト管理
「契約上は週20時間未満だけれど、実際の働き方はどうなっているか」など、労働時間の管理方法を確認しておきます。
9.経営者が考えるべきなのは「壁」ではなく「働き方」
今回の改正をきっかけに、会社側の考え方も変えていく必要があります。
これまでは、
「社会保険に入らないように勤務時間を調整する」
という働き方が一つの選択肢になっていました。
しかし、今後は「106万円」という年収ラインを意識した働き方そのものが変わっていく可能性があります。
会社としても、
「この人には週何時間働いてもらうのが適切なのか」
「その場合の社会保険料を含めた人件費はいくらなのか」
「その人件費を負担しても採算が合うのか」
という視点で考えることが重要です。
これは単なる社会保険の手続きの問題ではなく、人材配置と経営数字の問題でもあります。
10.まとめ|「106万円」から「週20時間」へ
今回の社会保険制度の変更で、短時間労働者にとって大きな意味を持っていた「106万円の壁」が撤廃される予定です。
そして、今後は「年収106万円」よりも「週20時間」という労働時間が重要な判断ポイントになっていきます。
中小企業の経営者として、今から確認しておきたいのは、
・パート従業員の労働時間
・社会保険の加入状況
・今後の加入対象者
・社会保険料を含めた総人件費
・雇用契約やシフト管理
です。
特にパート・アルバイトを多く雇用している会社では、制度変更を単なる「社会保険のルール変更」と捉えるのではなく、今後の採用・人件費・働き方を見直すきっかけとして考えてみてはいかがでしょうか。
税理士としても、給与や税金だけを見るのではなく、社会保険料まで含めて「会社にとって本当の人件費はいくらなのか」を把握することが、これからますます重要になると考えています。
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