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税理士事務所

 3. 宗教法人の給与・賞与の源泉徴収計算方法を徹底解説


3-1 源泉徴収税額表の「甲欄・乙欄」使い分けと設例で理解する計算方法
宗教法人が給与を支払う際、源泉所得税の額を正確に計算することは税務上必須の措置です。まず理解すべきは、給与所得者の扶養控除等申告書の提出状況により適用する税額表の区分が「甲欄」と「乙欄」に分かれている点です。
「甲欄」は、扶養控除等申告書が提出され、かつその勤務先が主たる給与支払者である場合に適用されます。たとえば、住職が宗教法人からのみ給与を受けており、扶養控除等申告書を提出しているケースです。一方、「乙欄」は、扶養控除等申告書が提出されない場合や、複数勤務先のうち主たる給与支払者以外から受け取る給与に適用されます。兼職している住職が、本務の宗教法人以外の別法人から給与を受けている場合、その副次的な給与について乙欄を用います。
計算方法の具体例を挙げると、仮に課税対象となる月額給与が30万円、扶養親族等の数が2人の主たる給与所得者であれば、甲欄の月額表に基づき該当する税額を確認します。この場合の表に示された税額が源泉徴収額になります。一方、扶養控除等申告書を提出しない従たる給与の場合は、同じ30万円の給与に対して乙欄の月額表から税額を算出しますが、甲欄の税額に比べて高くなるのが通常です。
社会保険料等の控除も重要なポイントです。給与から社会保険料等を差し引いた額が課税対象となるため、給与支払時には控除額の把握が不可欠です。社会保険料控除後の金額をもとに、税額表を参照します。税額表の種類は月額表の他に日額表もあり、日払い給与や非常勤勤務者の場合はこちらが適用されます。正確に選択しないと過大または過少な税額が発生しますので注意が必要です。
まとめると、「扶養控除等申告書」の有無、給与の受給形態、そして社会保険料等の控除状況を踏まえ、適切な税額表の欄(甲あるいは乙)を使い分け、税額計算を行うことが宗教法人の源泉徴収実務では基本中の基本となります。


3-2 賞与・兼職住職等、ケース別の源泉徴収額算出ポイント
賞与に対する源泉徴収は、給与とは計算方法が異なります。前月の給与所得金額(社会保険料控除後)と扶養親族等の人数をもとに、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」から乗ずべき税率を取得し、その税率を賞与の課税対象額に掛けて算出します。たとえば、賞与が50万円で、扶養親族が1人の場合は該当表を参照し、適用税率を確認したうえで計算する必要があります。これは、賞与の度に計算し直すため、源泉徴収ミスを防ぐためにも表の理解と適用が必須です。
兼職住職の場合、源泉徴収計算が複雑になることがあります。例えば本務の宗教法人からの給与が主たる給与(甲欄適用)で、副務の法人からの収入が従たる給与(乙欄適用)である場合、それぞれの給与に対して適切な税率を適用しなければなりません。また、これら複数所得の合計で扶養控除の扱いが影響を受ける場合もあるため、各法人間で源泉徴収の対応を共有しておくことも重要です。
さらに、非常勤職員やパートタイマー、外部の講師報酬など、支払い形態に多様性がある宗教法人では、それぞれの報酬が源泉徴収の対象かつどの税率表を適用するかの判断が必要です。特に報酬・料金の場合は原則10.21%の源泉徴収税率(一定の例外を除く)が適用されます。給与と異なり、扶養控除申告書の提出状況は影響しませんので、計算ルールを誤らないよう厳密な理解が求められます。
金銭以外の給与(現物給与)も忘れてはなりません。前述のように、庫裏の無償提供や法衣の貸与など、経済的利益も源泉徴収の対象になる場合がありますので、その評価と給与計算に反映することが肝要です。
これらの事例は、宗教法人特有の勤務形態や福利厚生に起因する複雑さを抱えますから、経験の浅い担当者のみで処理せず、税理士等の専門家に相談しながら実務対応することを強く推奨します。

3-3 専門家が解説!源泉徴収簿の記載・年末調整の段取り
源泉徴収簿は、給与を支払った全ての個人ごとに「給与支払金額」「源泉徴収税額」「控除した社会保険料額」「扶養親族数」等の必要情報を記録する帳簿であり、税務署に対する証跡資料として非常に重要です。法令により保存義務が規定されているため、漏れなく正確に記載し、いつでも提示できる状態を保つ必要があります。
宗教法人は独自の給与体系であることが多いため、給与ごとに適用した税額表の区分(甲欄か乙欄か)や社会保険料控除額も明記し、透明性の高い帳簿作成を心がけましょう。国税庁より無料で提供されている給与所得の源泉徴収簿様式をベースに、法人独自の管理項目を追加整備するケースも一般的です。
年末調整は、扶養控除等申告書を提出している年収2,000万円以下の給与所得者について、その年の所得税額を確定するための精算手続きです。年末に、当該年度の1月から12月までの支給額・源泉徴収額を集計し、扶養控除や保険料控除などの申告に基づき正確な税額を計算して納め過ぎた税金があれば還付、不足であれば追加徴収します。
具体的には、年末調整時に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」再確認、「保険料控除申告書」、「配偶者控除申告書」等の提出状況を確認し、所得控除の適用漏れや誤りがないかチェックすることが不可欠です。これらの処理は高頻度かつ正確性が求められるため、電子年末調整ソフトの利用も積極的に検討すべきです。
また、年末調整の結果は翌年の1月31日までに源泉所得税の年末調整報告書や源泉徴収票の形で納税者本人及び税務署に提出します。源泉徴収票は住職や職員個人の所得証明にもなり、確定申告を必要とする場合の基礎資料にもなります。
最後に、源泉徴収および年末調整業務は税務調査で重点が置かれるポイントのため、一連の業務プロセスや帳簿の保存・整備を怠らず、疑義のない証憑作成体制を税理士等と連携して構築することが宗教法人の健全な財務運営につながります。


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