クレメンティア
税理士事務所
関連会社との取引は「契約書があっても安心できない」時代へ ―「関連者間取引に係る書類の整理保存の特例」
令和8年度税制改正で、
中小企業経営者が必ず押さえておきたい新しいルールが始まります。
それが
**「関連者間取引に係る書類の整理保存の特例」**
です。
一見すると、
「書類が増えるだけの話」
に見えるかもしれません。
しかし実務上の本質は、そこではありません。
**青色申告が取り消される可能性がある**
という、経営に直結するリスクが新たに明確化された点にあります。
今回は、経営判断に直結するポイントだけに絞って解説します。
---
## 1.まず結論:問題は「税金が否認されること」ではない
今回の制度で誤解されやすい点があります。
それは、
**この制度を理由に、すぐ経費が否認されるわけではない**
ということです。
しかし、本当に怖いのはそこではありません。
最大のリスクは次の流れです。
**書類未保存
→ 青色申告取消し
→ 推計課税**
ここです。
これは単なる事務ミスではなく、
**税務上の信用を失うリスク**
と言えます。
---
## 2.対象になるのはどんな会社か(多くの中小企業が該当)
今回のルールは、大企業だけの話ではありません。
むしろ中小企業の方が該当しやすい制度です。
例えば次のようなケースです。
・親会社と子会社の取引
・同族会社同士の取引
・社長個人会社間の取引
・グループ会社間の業務委託
・技術指導料や管理料の支払い
特に多いのが、
**「なんとなく毎月払っている管理料」**
このような取引です。
ここが今回の重点管理ポイントになります。
---
## 3.何をしなければならないのか(実務はシンプル)
ポイントは一つです。
**「金額の根拠」を書面で残す**
これだけです。
具体的には次の内容です。
■対価の額の明細
■計算方法
■業務内容
■算定根拠
もし契約書にこれが書かれていなければ、
**別紙を作る**
これで対応できます。
制度の難しさよりも、
**記録の習慣化**
が重要になります。
---
## 4.なぜ今、この制度が強化されたのか(背景)
税務当局の狙いは明確です。
**「本当に取引があるのか」
「金額はどう決まったのか」**
これを確認したいのです。
特に問題視されているのは次の取引です。
・実態のないコンサル料
・根拠不明の管理料
・利益調整目的の役務料
・家族会社間の資金移動
つまり、
**形式ではなく実態**
ここが問われる時代になっています。
---
## 5.最大の注意点:青色申告取消しは“経営インフラ”の崩壊
ここは強くお伝えしたいポイントです。
青色申告が取り消されると、
単に税金が増えるだけではありません。
経営への影響は非常に大きいです。
例えば、
■欠損金の繰越控除が使えない
■税務調査の負担が増える
■金融機関の信用に影響
■税額が大きくブレる
■推計課税の対象になる
特に推計課税は、
**税務署が利益を推定して課税する**
という仕組みです。
つまり、
**説明できなければ、負ける**
この世界になります。
---
## 6.今すぐ経営者が確認すべき3項目
実務上、ここだけチェックしてください。
### ① 関連会社との取引はありますか
・親会社
・子会社
・兄弟会社
・社長個人会社
ここが第一歩です。
---
### ② 金額の決め方を説明できますか
重要なのはここです。
例えば、
・売上の◯%
・人件費ベース
・時間単価
・原価+利益
**合理的に説明できるか**
これが判断基準になります。
---
### ③ その説明は「紙で残っていますか」
ここが最終ポイントです。
**説明できるだけでは不十分**
です。
**記録があること**
これが求められます。
---
## 7.適用開始時期:準備期間は実は短い
この制度は、
**令和8年4月1日以後開始事業年度**
から適用されます。
例えば、
■3月決算法人
→ 2027年3月期から対象
つまり、
**もう準備期間に入っている**
ということです。
---
## まとめ:これは「税務」の話ではなく「経営管理」の話
今回の改正は、
単なる税務ルールではありません。
本質は、
**会社の取引を説明できるか**
という経営管理の問題です。
そして経営者にとって重要なのは、
**税務署のためではなく
会社を守るための記録**
です。
---
もし次のような状況があれば、
一度点検することを強くお勧めします。
・関連会社がある
・管理料や業務委託料がある
・グループ経営をしている
・家族会社がある
・昔から同じ金額を払い続けている
ここは、
**早く整えた会社ほど、後が楽**
になります。
制度対応は、
コストではなく
**リスク管理そのもの**
私はそう考えています。
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