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非上場株式の評価が大きく変わる?国税庁が示した見直しの方向性を税理士が解説

はじめに:非上場株式の評価方法が大きく変わる可能性

中小企業の経営者にとって、「自社株がいくらになるのか」は、事業承継や相続を考えるうえで非常に重要な問題です。

今回、国税庁が「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」で、非上場株式の評価方法について大きな見直しの方向性を示しました。

特に注目したいのが、

  • 大会社・中会社・小会社という会社規模別の区分を廃止する方向

  • 「類似業種比準方式」の存置は困難との考え

  • 「残余利益方式」をベースとした新たな評価方法を検討

  • 純資産価額方式や配当還元方式についても位置づけを見直す

という点です。

まだ制度として確定したわけではありませんが、将来の事業承継や自社株対策に大きく関係する可能性があります。

今回は、中小企業経営者の方が押さえておきたいポイントを、できるだけわかりやすく整理します。

1.これまでの非上場株式の評価方法とは

現在の非上場株式の評価では、会社の規模などに応じて「類似業種比準方式」「純資産価額方式」などを組み合わせて評価する仕組みが使われています。

そのため、同じような会社であっても、会社規模や株主の状況などによって評価方法が異なる場合があります。

この仕組みは、長年にわたって非上場株式の評価を支えてきました。

一方で、会社規模を利用して評価額を意図的に引き下げるような手法が問題となるなど、現在の制度には見直すべき点も出てきました。

2.「会社規模別の区分」を廃止する方向へ

今回の見直しで特に大きなポイントが、会社規模による評価区分をなくす方向性です。

これまでの制度では、大会社・中会社・小会社という区分が評価方法に大きく影響していました。

しかし、会社規模を操作することで評価額を圧縮するようなスキームへの対応という観点から、会社規模にかかわらず、幅広い企業を共通の評価方法で評価する考え方が示されています。

これは、単なる計算方法の変更ではありません。

「会社の大きさ」よりも、「その会社がどれだけの資産を持ち、どれだけの利益を生み出しているのか」を重視する方向への転換と見ることができます。

3.類似業種比準方式はなぜ見直されるのか

現在の自社株評価で重要な役割を果たしているのが「類似業種比準方式」です。

簡単にいうと、上場企業などの類似する業種の株価を参考にして、非上場会社の株価を算定する考え方です。

ところが今回の有識者会議では、この方式について、理論的な根拠や実証的な裏付けなどを理由として、存置は困難との見方が示されました。

もし今後、類似業種比準方式が大きく変更・廃止されれば、これまで自社株評価のために行ってきた対策の前提が変わる可能性があります。

「以前はこの方法で株価を計算していたから、今後も同じ」とは考えないほうがよいでしょう。

4.新たに示された「残余利益方式」とは

今回の見直しで注目されているのが「残余利益方式」です。

考え方をシンプルにすると、

「会社が持っている資産」+「その会社が将来生み出す収益力」

によって企業価値を考える方法です。

具体的には、まず会社の簿価純資産をベースにします。

そこに、通常期待される利益を上回る「超過収益」、つまり残余利益を加えて株式の価値を算出するイメージです。

この考え方なら、会社の資産だけでなく、「利益を生み出す力」も評価に反映できます。

中小企業経営者の立場から見ると、非常に重要なポイントです。

5.「簿価純資産」が重要になる可能性

今回示された考え方では、会社が継続して事業を行うことを前提として、資産を評価することがポイントになっています。

例えば、昔から会社が事業用として保有している土地について、売却を前提とした時価ではなく、継続使用を前提とした帳簿価額を使う考え方が示されています。

建物や設備についても、減価償却後の価額を使用するイメージです。

これは経営者にとっても重要です。

なぜなら、複雑な時価評価を行うのではなく、会社の貸借対照表をベースに評価することで、評価事務の負担を軽くできる可能性があるからです。

つまり、今後の自社株評価では「決算書そのもの」がこれまで以上に重要になる可能性があります。

6.会社の利益が株価にどう反映されるのか

残余利益方式では、会社の「収益獲得能力」が評価の重要な要素になります。

イメージとしては、会社が通常期待される利益を超えて生み出している利益を「残余利益」として捉え、その数年分を現在価値に換算して株価に反映します。

逆にいうと、赤字や低収益の会社については、簿価純資産を下回る評価額になることも想定されています。

ここから見えてくるのは、単に「利益を減らせば自社株評価も下がる」という単純な考え方ではなくなる可能性です。

今回の見直しでは、役員報酬などによって一時的に利益を操作し、評価額を圧縮するような方法についても対応する方向性が示されています。

短期的な数字の調整よりも、会社本来の収益力をどう評価するかが重視されることになりそうです。

7.純資産価額方式と配当還元方式はどうなる?

純資産価額方式については、原則的な評価方法ではなく、「特定の評価会社」の評価方式として位置づける方向性が示されています。

今後は、どの会社を「特定の評価会社」とするのか、その判定基準などが重要になってきます。

また、少数株主などに適用されることがある「配当還元方式」については、特例的な評価方法として残す方向が示されています。

ただし、適用する株主の範囲や基準、従業員持株会の株式との関係などについては、今後さらに検討される予定です。

つまり、非上場株式の評価方法は「全部が一気に新制度になる」というより、それぞれの評価方式の役割を整理し直す方向と考えると理解しやすいでしょう。

8.事業承継・相続対策への影響は?

中小企業経営者にとって、今回の話が重要なのは、単なる「株価計算のルール変更」ではないからです。

自社株の評価額は、事業承継や相続における税負担に影響する可能性があります。

これまで、

「自社株の評価額が高いから、どうすれば下げられるか」

という視点で対策を考えてきた会社もあるでしょう。

しかし、今後は評価方法そのものが変わる可能性があります。

また、グループ法人間で資産や利益を移すことで評価額を圧縮する方法や、株主構成を操作して配当還元方式を適用させる方法などについても、国税庁は対策を検討しています。

これまで有効だった対策が、将来もそのまま有効とは限りません。

9.中小企業経営者が今から確認しておきたいこと

今回の見直しは、現時点ではまだ「確定した新制度」ではありません。

国税庁は今秋を目途に、評価方法の詳細を詰めるとしています。

そのため、現段階で慌てて自社株を動かすのではなく、まずは自社の現状を確認しておくことをおすすめします。

特に確認したいのは、

  1. 現在の自社株評価額はいくらなのか

  2. 株主構成はどうなっているのか

  3. 後継者は誰なのか

  4. 事業承継をいつ頃予定しているのか

  5. 会社の利益や純資産が今後どう推移しそうなのか

といった点です。

制度変更の内容が固まってから考えるのではなく、今のうちに「自社株を取り巻く状況」を整理しておくことが大切です。

10.まとめ:自社株対策は「株価を下げる」だけではなくなる

今回の国税庁の方向性を一言でまとめるなら、

「会社規模や一時的な利益操作よりも、会社が持つ資産と本来の収益力を重視する評価へ」

という流れが見えてきた、といえるでしょう。

特に「類似業種比準方式の見直し」「会社規模区分の廃止」「残余利益方式の導入」は、今後の非上場株式評価を考えるうえで非常に重要なポイントです。

中小企業の経営者の方にとっては、事業承継をまだ先の話だと思っていても、自社株の評価額は会社の利益や純資産の変化によって動きます。

だからこそ、制度が確定してから慌てるのではなく、今のうちに自社株の評価と株主構成、事業承継の方向性を確認しておくことが重要です。

税金対策だけを先に考えるのではなく、「誰に会社を引き継ぎ、どのように会社を残していくのか」。

その視点から自社株対策を考えることが、これからますます重要になってくるでしょう。

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