クレメンティア
税理士事務所

入社時の健康診断、「やっているつもり」が一番危ない
~中小企業が見落としがちな3つの誤解と経営リスク~

4月は新入社員や中途採用が増える季節です。
この時期、顧問先様からよくいただくのが
「健康診断って、定期健診と一緒でいいんですよね?」
「パートは対象外ですよね?」
というご質問です。
実はここ、
**“やっているつもり”が法令違反になりやすい典型ポイント**
でもあります。
今回は、税理士・経営支援の立場から、
単なる労務手続きの話ではなく、
**会社を守るリスク管理**という視点で整理してお伝えします。
――――――――――――――――――
■まず押さえておきたい前提
「入社時健診」と「定期健診」は別物です
――――――――――――――――――
ここが最初の誤解ポイントです。
多くの企業で
「どうせすぐ定期健診があるから」
という理由で、
入社時の健康診断を省略してしまうケースがあります。
しかし、目的がそもそも違います。
● 入社時健康診断
→ 配属や業務に健康上の配慮が必要か確認する
● 定期健康診断
→ 在職中の健康状態の変化を把握する
つまり、
**スタートラインの確認**と
**経過観察**の違いです。
この違いを押さえておかないと、
万が一の労災や健康問題が発生した際、
「会社として必要な確認をしていなかった」
と判断されるリスクがあります。
――――――――――――――――――
■誤解①
「定期健康診断があるから省略できる」
――――――――――――――――――
結論から申し上げます。
**省略できません。**
ここは非常に明確です。
むしろ経営的に見ると、
この誤解は次のリスクにつながります。
・労働基準監督署からの指摘
・是正勧告
・労災発生時の責任問題
・企業イメージの低下
特に中小企業では
**「知らなかった」では済まない**
場面が増えています。
コンプライアンスは
コストではなく
**信用を守る投資**
だと私は考えています。
――――――――――――――――――
■誤解②
「入社前に受けていたら必ず省略できる」
――――――――――――――――――
これもよくある誤解です。
確かに、次の条件を満たせば
省略は可能です。
● 3ヶ月以内に受診している
● 法定項目がすべて含まれている
しかし実務では
**項目が不足しているケース**
が非常に多いのです。
例えば
・胸部X線がない
・血液検査が不足している
・診断書形式が簡易すぎる
この状態で
「受けているから大丈夫」
と判断してしまうと、
結果として
**未実施扱い**
になる可能性があります。
ここは
**書類の“有無”ではなく
内容の“適合”を確認する**
この視点が重要です。
――――――――――――――――――
■誤解③
「パートやアルバイトは対象外」
――――――――――――――――――
これも非常に多い誤解です。
ポイントは
**雇用形態ではなく、働き方**
です。
次の2つを満たすと対象になります。
① 常時使用する予定がある
② 労働時間が正社員の4分の3以上
つまり
・パート
・アルバイト
・契約社員
であっても、
条件を満たせば
**実施義務がある**
ということです。
ここは監査や労基署調査で
非常にチェックされやすいポイントです。
――――――――――――――――――
■経営者として押さえておきたい
「3つの実務チェックリスト」
――――――――――――――――――
ぜひ、次の3点をこの機会に確認してみてください。
□ 入社時健康診断を必ず実施しているか
□ 既往歴や配慮事項を記録として残しているか
□ パート・契約社員も対象判定しているか
この3つが整っていれば、
多くのリスクは回避できます。
――――――――――――――――――
■実はここにも関係する
「お金」と「経営」の視点
――――――――――――――――――
健康診断は単なる義務ではありません。
実は
**採用コスト**
**労災リスク**
**生産性**
すべてに関係しています。
例えば
採用してすぐに長期離職が発生すれば
・採用費
・教育費
・人件費
が一気に損失になります。
逆に、
早期に健康上の配慮ができれば
・離職防止
・定着率向上
・職場の安心感
につながります。
これは
**人への投資**
そのものです。
――――――――――――――――――
■最後に
小さなルールほど、会社を守ります
――――――――――――――――――
中小企業の経営は、
日々の判断の積み重ねです。
そして多くの場合、
大きなリスクは
「小さな見落とし」
から始まります。
入社時の健康診断は、
決して難しい制度ではありません。
しかし
**やっているつもり**
**前からこうしている**
ここが一番危険です。
この4月、
ぜひ一度、自社の運用を見直してみてください。
それは単なる手続きの確認ではなく、
**会社と従業員、双方を守る経営判断**
になるはずです。


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