クレメンティア
税理士事務所

「配当は出せる」だけでは不十分――“分配可能額”と“後から責任”という経営判断の盲点

決算書上は利益が出ている。だから配当も問題ない――。
しかし実務では、「出せるはずの配当」が後から経営者個人の責任問題に発展するケースがあります。
今回のテーマは「配当の限度額」と「決算未確定期のリスク」。
中小企業経営者にとって、資金戦略とガバナンスの両面から押さえておきたい重要論点です。
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■ 配当できる限度額は「いつの数字」で判断するのか
会社法の原則はシンプルです。
**配当は、“支払う日”時点の分配可能額を超えてはいけない。**
今回のケースでは、
・資本金:250万円
・資本準備金:250万円
・繰越利益剰余金:5,000万円(2025年3月期)
そして
**2026年4月に配当予定**
この場合、基本的には
**直近で確定した2025年3月期の繰越利益剰余金5,000万円がベース**
になります。
つまり、特段の評価損などがなければ、
**最大5,000万円まで配当は可能**
という整理になります。
ここまでは、多くの経営者の感覚とも一致するでしょう。
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■ しかし実務の本当の注意点は「その後」にあります
私が現場で特にお伝えしているのは、次の一点です。
**「配当できる」ことと
「安全に配当できる」ことは別問題**
ということです。
今回のケースのように、
**決算承認前に配当を実施する場合**
には、重要なリスクが潜んでいます。
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■ 赤字が確定したら「役員が返す」可能性がある
会社法465条の規定は、非常に実務的です。
もし、
・2026年4月に配当を実施
・その後、2026年3月期決算を承認
・結果として欠損(赤字)が確定
この場合、
**業務執行者(取締役など)には
欠損を補填する責任が生じる可能性**
があります。
つまり、
**会社のお金ではなく
経営者個人の責任問題**
に発展し得るということです。
これは理論ではなく、実務上も十分起こり得る話です。
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■ 中小企業でよくある「判断ミス」のパターン
現場感覚として、次のようなケースが非常に多いです。
・利益剰余金が多いから大丈夫だろう
・税理士が止めなかったから問題ないだろう
・銀行対策で早めに配当したい
どれも理解できる判断です。
しかし、
**「まだ確定していない決算」**
がある場合には、
一度立ち止まる必要があります。
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■ 経営判断としての「安全ライン」
私が実務でお勧めしているのは、次の3つです。
① 最新年度の着地見込みを必ず確認する
② 赤字リスクがあるなら配当を遅らせる
③ 配当額は「限度額」ではなく「余力」で決める
ここが重要です。
**限度額=出してよい金額
ではありません**
**安全に出せる金額
こそが経営判断の基準**
です。
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■ 配当は「節税」ではなく「資金戦略」
配当は、
・節税
・資産移転
・株主還元
など様々な目的で使われます。
しかし本質的には、
**会社の体力をどう配分するか**
という、
極めて戦略的な意思決定です。
特に中小企業では、
**内部留保=最大の防御力**
になります。
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■ まとめ:配当判断で最も大切な視点
今回のポイントを一言でまとめます。
**配当は「法律上可能」かではなく
「経営上安全」かで判断する**
ここに尽きます。
そしてもう一歩踏み込むなら、
**配当は“税務”ではなく
“経営判断”そのもの**
です。
利益が出ている今こそ、
次の一年を守る意思決定を。
その積み重ねが、
会社を強く、長く続ける力になります。

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