クレメンティア
税理士事務所
「役員にすれば社会保険が安くなる」は通用しなくなる?
― 厚労省が示した“実態重視”の新たな判断基準 ―
2026年3月、厚生労働省が「法人役員の被保険者資格」に関する新たな取扱いを公表しました。
背景にあるのは、社会保険料の削減を目的として、実態のない役員就任を行うスキームの広がりです。
今回の通知は、単なる制度説明ではありません。
**「疑義のある事業者は調査する」** という姿勢が明確に示されています。
中小企業の経営者にとっては、
「うちは大丈夫か?」
を一度確認しておきたいタイミングです。
今回は、実務上のリスクと対応のポイントを、経営判断の視点から整理します。
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## 何が問題視されているのか
### 「役員に就任すれば社会保険に入れる」という誤解
本来、法人の役員が健康保険・厚生年金(社会保険)に加入できるのは、
**法人に使用されている実態がある場合**
に限られます。
ところが近年、次のようなスキームが問題視されています。
・一般社団法人などの役員に就任する
・役員報酬を受け取る
・同時に、それ以上の「会費」などを支払う
・結果として社会保険料が低くなる
形式上は役員でも、実態としては「労務の提供」がない。
この点が、今回の見直しの核心です。
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## 今回のポイント:判断は「形式」ではなく「実態」
厚労省が明確にした判断基準は、非常にシンプルです。
### 判断の軸はこの2つ
① 報酬が業務の対価として経常的に支払われているか
② 経営に参画する実態のある労務提供があるか
この2つを総合的に見て判断されます。
つまり、
**役員という肩書だけでは足りない**
ということです。
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## 要注意とされる典型パターン
今回、具体的に「原則として認められない」と示された例があります。
### ① 報酬より会費の方が多い
例えば:
・役員報酬:月3万円
・会費:月5万円
この場合、
**実質的に報酬を受けているとは言えない**
と判断される可能性が高くなります。
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### ② 実態が「自己研さん」レベル
例えば:
・アンケート回答
・勉強会への参加
・名義貸し的な役員
・事業紹介の協力程度
このような活動は、
**経営参画とは認められない**
と明確に示されました。
ここは、かなり踏み込んだ整理です。
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## 経営者にとっての現実的なリスク
今回の通知で重要なのは、
**調査が前提になっている**
という点です。
日本年金機構は、
**疑義のある事業者を調査し、必要に応じて指導**
と明言しています。
そして、実態がないと判断された場合は:
・被保険者資格の喪失
・過去にさかのぼった保険料の是正
・場合によっては延滞金
という流れになります。
ここは「制度解説」ではなく、
**リスク管理の話** です。
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## 特に確認しておきたい3つのケース
次のいずれかに該当する場合は、一度チェックをお勧めします。
### ① 個人事業主が法人役員になっている
例えば:
・フリーランス
・士業
・コンサルタント
・副業経営者
このケースは、今回の通知の対象の中心です。
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### ② 社会保険料の削減目的で役員就任した経緯がある
ここは率直に申し上げます。
**「保険料が安くなるから」**
この理由だけで設計されたスキームは、
今後は非常にリスクが高くなります。
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### ③ 実際の業務内容が曖昧
例えば:
・業務内容が契約書に明記されていない
・出勤実態がない
・指揮命令関係が不明確
・役員会に参加していない
この状態は、調査時に説明が難しくなります。
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## 今やっておきたい実務対応(現実的)
ここは経営としての「守り」の話です。
### ① 役員の業務内容を言語化する
最低限、次の点は整理しておくことをお勧めします。
・役割
・責任範囲
・業務内容
・関与頻度
これは調査対応だけでなく、
組織運営そのものの健全性にもつながります。
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### ② 報酬と負担のバランスを確認する
特に重要なのは:
**「報酬より多い負担」がないか**
ここです。
もし存在する場合は、
・契約の見直し
・報酬設計の再検討
が必要になる可能性があります。
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### ③ 「形式」ではなく「説明できるか」で考える
最終的に重要なのは、この視点です。
**第三者に説明できるか**
税務も社会保険も、ここに尽きます。
・なぜ役員なのか
・どんな仕事をしているのか
・なぜこの報酬なのか
これが自然に説明できれば、基本的に問題は起きません。
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## まとめ:これは一部の特殊事例の話ではありません
今回の通知は、特定のスキームだけを対象にしたものではありません。
本質は、
**社会保険も「実態主義」で判断する**
というメッセージです。
最後に、経営者として押さえておきたいポイントを整理します。
・役員という肩書だけでは社会保険は認められない
・判断は「報酬」と「業務実態」
・疑義があれば調査される前提になった
・説明できる体制づくりが最大の防御策
制度は年々、
**形式から実態へ**
シフトしています。
だからこそ、
「問題があるか」ではなく
「説明できるか」
この視点で一度見直しておくことが、
将来のリスクを確実に減らします。
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