クレメンティア
税理士事務所
宗教法人を“買いたい”? “売りたい”? その言葉に潜む危険と、住職として守るべきもの
近年、「宗教法人M&A」「宗教法人を買いたい・売りたい」などのワードがインターネット上で見られるようになりました。
しかし、これは宗教法人として非常に危険な兆候です。宗教法人格の“名義貸し”や不正利用が問題視され、脱税やマネー・ロンダリングといった違法行為の温床になる恐れも。
この記事では、宗教法人の住職として知っておくべきリスクと対策を、税務・法制度の専門家視点から解説します。
■ 宗教法人が“狙われる”時代に
宗教法人は、税制上の優遇措置を受ける立場にあります。これは、宗教活動という公益性の高い目的を果たすための制度です。
ところが近年、この法人格の特性を「節税の道具」「脱法スキーム」として悪用しようとする動きが、一部で見られるようになっています。
特に問題となっているのは、以下のような行為です。
- 宗教活動を目的としない第三者が法人格を取得
- 寄附の名目で実質的な売買を行う
- 税務署や文化庁に活動停止を見られた宗教法人を“買い取る”
このような行為は、宗教法人法の趣旨を根本から逸脱しており、犯罪行為への加担リスクさえあります。
■ “知らぬ間に”マネロンや脱税の共犯に?
宗教法人の売買に類似した行為は、単なるグレーゾーンではありません。
FATF(金融活動作業部会)による国際審査報告でも、**日本の宗教法人を含む非営利団体が、知らぬうちにテロ資金供与などに利用されている可能性**が指摘されています。
つまり、「うちの法人はもう活動してないから、誰かが活用してくれるなら……」という安易な譲渡が、重大な違法行為に加担する入り口になるかもしれないのです。
■ 不活動法人の扱いは「引き継ぎ」か「廃法人」かの二択
宗教法人格は「魂を宿した器」のようなもの。
たとえ活動が途絶えていても、それをどうするかは“宗教的・社会的責任”をもって判断すべきです。
選択肢は基本的に2つです:
1. 教義・理念を理解し、継続する意思ある人物や団体への**正当な承継**
2. 活動再開の見込みがない場合には、**自主的な解散・清算**
いずれにしても、「法人格だけを金銭と引き換えに渡す」ような行為には注意してください。
■ 士業との連携で、悪質な動きを防ぐ
文化庁もこの問題への対応を強化しており、士業(税理士・弁護士・行政書士など)や通信事業者とも連携し、不正利用の芽を摘む取り組みが進んでいます。
住職の皆様にも、ぜひ以下のような姿勢を取っていただくことをおすすめします。
- 宗教法人の譲渡話が来たら、**必ず専門家に相談する**
- 知らないうちに登記・名義変更されないよう、**法人情報を定期的に確認**
- 宗教活動を停止していても、**宗教法人格の放置はしない**
【まとめ】
宗教法人格の軽視は、信仰の軽視に繋がることかもしれません。
「うちは関係ない」と思っていても、いつの間にか巻き込まれていた──そんな事例が今、現実に起きています。
宗教法人の代表者として、信徒・地域社会・未来の宗教者たちのためにも、法人格の「守り手」であり続けましょう。
【筆者紹介】
税理士・CFP・一級FP技能士
クレメンティア税理士事務所 代表 小林 匠
宗教法人の税務・運営に関するご相談も承っております。
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