クレメンティア
税理士事務所
山門一体型施設の「参道」は境内地にならない
― 最高裁逆転判決から住職が知っておくべき固定資産税の視点 ―
近年、都市部の寺院で、山門と商業施設やホテルが一体となった複合施設を目にします。
「参道として使っている部分なら、固定資産税は非課税では?」
そう感じられた住職の方も多いのではないでしょうか。
今回、こうした感覚に一石を投じる最高裁判決が出されました。
大阪市内の寺院を巡る訴訟で、二審では宗教法人側が勝訴していたものの、最高裁はこれを破棄し、大阪市側の主張を認めています。
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1.事件の概要 ― 何が争われたのか
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本件では、宗教法人が所有する土地の一部に、ホテルや店舗が入る商業施設が建設されました。
特徴的なのは、その建物が「本堂へ続く参道」をまたぐ構造となっており、建物中央の吹き抜け部分が山門兼参道として利用されていた点です。
宗教法人側は、
「この吹き抜け部分は参道であり、境内地として固定資産税は非課税」
と主張しました。
これに対し大阪市は、
「土地全体が商業施設として利用されており、境内地には当たらない」
として、固定資産税・都市計画税を課税しました。
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2.最高裁の判断 ― 『空間』では非課税にできない
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最高裁(第二小法廷)は、地方税法上の「境内地」の解釈について、次のように判断しました。
・土地の所有権は上下に及ぶものであり
・法令に特別な定めがない以上、「空間ごと」に非課税を判断することはできない
つまり、
「参道として使われている空間だけを切り出して、境内地とみることはできない」
という考え方です。
本件では、参道として使われていた部分の“上”に商業施設が存在しており、
結果としてその土地は
「参道以外の用途にも供されている」
と評価されました。
そのため、固定資産税が非課税となる「境内地」には該当しないと判断され、
大阪市側が逆転勝訴となりました。
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3.住職として特に注意すべきポイント
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今回の判決から、実務上とても重要な示唆が得られます。
① 「実際に参道として使っている」だけでは足りない
信仰上・宗教上の利用実態があっても、
土地全体として他の用途(賃貸・商業利用等)があれば、
境内地と認められない可能性が高まります。
② 立体的・複合的な土地利用は税務リスクが高い
山門一体型施設、地下や上空を使った複合利用は、
現代的で合理的な反面、税務上は「境内地性」が否定されやすい構造です。
③ 課税判断は“土地単位”で行われる
二審では「用途が混在している以上、全部課税はできない」とされましたが、
最高裁はこの考えを明確に否定しました。
今後、同様の案件では課税される可能性が高いと考えられます。
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4.反対意見が示す“今後の課題”
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なお、本判決には反対意見も付されています。
裁判長は、
「現代社会の多様な土地利用に即した解釈が必要であり、
非課税の余地を過度に狭めるのは妥当でない」
と述べています。
これは、今後の立法や制度改正への問題提起とも受け取れますが、
少なくとも現行法のもとでは、
今回の多数意見が実務の基準になる点は押さえておく必要があります。
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まとめ ― 境内地課税は“計画段階”からの検討が重要
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・参道として使っていても、商業利用があれば非課税とは限らない
・複合施設化は税務リスクを伴う
・境内地かどうかは「土地全体」で判断される
寺院経営において、収益事業や不動産活用は今後ますます重要になります。
だからこそ、建設・賃貸の「後」ではなく、
計画段階から税務面を含めて検討することが不可欠です。
「これは境内地になるはず」と思い込まず、
一度立ち止まって専門家と整理することが、
結果として寺院と檀信徒を守ることにつながります。
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