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税理士事務所

物価高騰時の限界利益改善策とは?中小企業が取り組むべき3つの方法を税理士が解説

原材料費やエネルギー価格、人件費などの上昇が続くなか、中小企業にとって大きな課題となっているのが、利益をどう確保するかという問題です。

売上は維持できているのに、以前ほど利益が残らない。値上げを検討しているものの、取引先との関係や競争力への影響が心配。

このような悩みを抱えている経営者の方も多いのではないでしょうか。

物価高騰への対策として重要なのは、単に売上を増やすことだけではありません。商品やサービスごとの「限界利益」を把握し、利益が残る仕組みをつくることが大切です。

今回は、中小企業が取り組みたい限界利益の改善策を、具体例を交えながら解説します。


1.物価高騰時こそ「限界利益」に注目する

限界利益とは、売上高から変動費を差し引いた金額です。

変動費とは、材料費や仕入原価など、製品の製造量や販売量に応じて増減する費用を指します。

限界利益 = 売上高 − 変動費

たとえば、商品を1個1,000円で販売し、材料費などの変動費が600円かかる場合、限界利益は400円です。

ところが、材料価格が上昇して変動費が700円になると、限界利益は300円に減少します。

売価を変えていなくても、1個販売するごとに得られる利益が100円減ってしまうのです。

この状態で従来と同じ利益を確保するには、販売数量を増やすか、価格を見直すか、変動費を削減する必要があります。

しかし、販売数量を増やすには追加の設備や人員が必要になる場合もあります。そこで、まずは限界利益を改善する取り組みから検討してみましょう。

2.限界利益を改善する3つの方法

物価高騰時に検討したい対策は、大きく分けて3つあります。

方法① 販売価格を見直し、付加価値を高める

最初に検討したいのが、販売価格の見直しです。

原材料費や外注費などが上昇しているにもかかわらず、販売価格を据え置いていると、限界利益は徐々に減少していきます。

ただし、単純に値上げをすればよいわけではありません。取引先との関係や競合他社との価格差も考慮する必要があります。

そこで重要になるのが、価格だけで比較されない商品・サービスづくりです。

たとえば、次のような取り組みが考えられます。

  • 品質や耐久性を高める

  • 納期の短縮や安定供給を強みにする

  • 顧客の要望に応じた小ロット対応を行う

  • アフターサービスや技術サポートを充実させる

自社が提供している価値を整理し、価格改定の必要性を取引先に説明できるようにしておくことも大切です。

値上げの目的は、単に販売価格を上げることではなく、必要な利益を確保しながら事業を継続できる状態をつくることです。

方法② 変動費を削減し、歩留まりを改善する

次に取り組みたいのが、材料費や加工費などの変動費の削減です。

特に製造業では、材料の使い残し、不良品の発生、加工時のロスなどが限界利益を押し下げる要因になります。

このようなロスを減らす取り組みを、歩留まりの改善といいます。

たとえば、金属加工業や食品製造業では、原材料の価格が上昇すると、同じ量の不良品を出した場合でも、その損失額が以前より大きくなります。

これまで見過ごしていた小さなロスも、原材料価格が高い環境では、利益に大きな影響を与える可能性があります。

ここで、具体的な数字を使って考えてみましょう。

【事例】変動費を3%削減した場合

ある製品について、1個当たりの変動費が次のとおりだったとします。

項目1個当たりの金額
材料費260円
加工費180円
変動費合計440円

歩留まりの改善などによって、変動費を3%削減できた場合、削減額は次のようになります。

440円 × 3% = 13.2円

1個当たりでは13.2円ですが、年間の生産数量が120万個であれば、

13.2円 × 120万個 = 年間1,584万円

となります。

もちろん、実際の削減効果は製品の種類や生産状況によって異なります。しかし、この事例からも分かるように、売上を増やさなくても、製造工程の改善によって限界利益を大きく改善できる可能性があります。

まずは、主要製品の材料費・加工費を把握し、どこでロスが発生しているのかを確認することから始めましょう。

方法③ 利益率の高い商品・製品の構成を見直す

3つ目は、販売する商品や製品の構成を見直すことです。

同じ売上高であっても、商品ごとの限界利益率が異なれば、会社に残る利益も変わります。

たとえば、次のような2つの商品があるとします。

項目商品A商品B
販売価格1,000円1,000円
変動費700円500円
限界利益300円500円

この場合、商品Aの限界利益は300円、商品Bは500円です。

同じ価格で販売していても、商品Bのほうが1個当たり200円多く限界利益を確保できます。

もちろん、限界利益が高い商品だけを優先すればよいとは限りません。需要の大きさ、製造能力、販売に必要な時間、顧客との取引関係なども考慮する必要があります。

そのうえで、どの商品を重点的に販売し、どの商品を見直すべきかを検討することが重要です。

商品別の限界利益を把握できれば、営業活動や生産計画の判断にも役立ちます。

3.まずは主要製品の原価を「見える化」する

限界利益を改善するためには、最初に現状を正しく把握する必要があります。

特に製造業では、会社全体の売上高や利益だけを見ていても、どの製品で利益を確保できているのか、どこで損失が発生しているのかが分かりにくいことがあります。

そこで、まずは主要製品について、次の項目を整理してみましょう。

  • 販売価格:いくらで販売しているか

  • 材料費:製品1個当たりにどの程度の材料費がかかるか

  • 加工費などの変動費:生産量に応じて増減する費用はいくらか

  • 歩留まり:材料や加工のロスがどの程度発生しているか

  • 限界利益:売上から変動費を差し引くと、いくら残るか

すべての製品を一度に分析するのが難しい場合は、売上高の大きい製品や、材料費の上昇が大きい製品から着手するとよいでしょう。

数字を把握することで、改善すべきポイントが具体的になります。

4.現場を巻き込み、改善を継続する

原価や歩留まりの改善は、経営者や経理担当者だけで進められるものではありません。

実際に製造工程を担当している従業員が、ロスの原因や改善方法を最もよく理解しているケースもあります。

そのため、現場に数字を共有し、改善活動に参加してもらうことが大切です。

たとえば、不良品が1個発生した場合に、材料費や加工費を含めてどれくらいの損失になるのかを具体的に示します。

そのうえで、「不良品を減らすために何ができるか」「材料の使い方を改善できないか」といったテーマについて、現場の意見を集めてみましょう。

重要なのは、単にコスト削減を求めるのではなく、どのような改善が、どれだけ利益につながるのかを共有することです。

また、改善前後の数値を記録しておけば、取り組みの効果を検証し、次の改善につなげることもできます。

5.改善実績を資金繰りや金融機関との対話にも活用する

限界利益の改善は、目先の利益を確保するだけでなく、経営の安定性を高めることにもつながります。

歩留まりの改善や変動費の削減について、取り組み内容と実績を記録しておけば、経営改善の根拠として活用できます。

金融機関に経営状況を説明する際にも、単に「コストを削減しています」と伝えるより、具体的な数字を示すほうが取り組みの内容が伝わりやすくなります。

たとえば、次のような情報を整理しておくとよいでしょう。

  • 改善前後の製品別変動費

  • 不良率や材料ロスの推移

  • 削減できた金額とその算定根拠

  • 今後の改善目標と実施計画

改善の実績を数字で説明できることは、経営管理の精度を高めるだけでなく、金融機関との信頼関係を築くうえでも役立ちます。

6.コスト削減は品質や安全性とのバランスが重要

限界利益を改善する際には、注意したい点もあります。

それは、コスト削減だけを優先しすぎないことです。

材料の品質を落とした結果、不良品やクレームが増えてしまえば、かえって損失が拡大する可能性があります。

また、無理な生産計画によって従業員の負担が増えたり、安全性が損なわれたりすれば、長期的な経営に悪影響を及ぼしかねません。

大切なのは、品質や安全性を維持しながら、ムダを減らすことです。

**「必要なコストまで削る」のではなく、「価値を生まないロスを減らす」**という視点で取り組みましょう。

7.まとめ|物価高騰時こそ、限界利益の改善に取り組もう

物価高騰が続く環境では、売上高だけを見ていても、会社の利益を十分に把握できないことがあります。

中小企業が限界利益を改善するためには、次の3つの視点が重要です。

  1. 販売価格を見直す:付加価値を高め、適切な価格設定を行う

  2. 変動費を削減する:歩留まりを改善し、材料や加工のロスを減らす

  3. 商品構成を見直す:限界利益の高い商品・製品を適切に評価する

まずは、主要製品の販売価格と変動費を確認し、どの製品が利益を生み、どこに改善の余地があるのかを把握することから始めてみてください。

小さな改善であっても、生産数量が多ければ年間では大きな金額になる可能性があります。

そして、改善の効果を継続的に測定し、現場と経営者が共有することで、利益を確保する仕組みが少しずつ整っていきます。

税理士として経営数字を確認する際にも、売上高や最終利益だけでなく、商品別の限界利益や原価の変化を把握することが、経営判断の精度を高める重要なポイントだと考えています。

物価高騰への対応を一時的なコスト削減で終わらせず、自社の利益構造を見直す機会として活用していきましょう。

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