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国税庁の「オンライン照会」が拡大へ|中小企業経営者が知っておきたい税務調査の変化

はじめに:税務調査のデジタル化が進んでいます

「税務調査」と聞くと、税務署の担当者が会社に来て、帳簿や領収書を一つひとつ確認するイメージを持つ方も多いかもしれません。

しかし、税務調査の世界でもデジタル化が着実に進んでいます。

国税庁は、銀行などの金融機関に対して、預貯金などの情報をオンラインで照会する仕組みを導入しています。

さらに2026年8月からは、新たなシステム「フフテラス」の試行運用が始まり、生命保険会社へのオンライン照会体制が大きく拡充されることになりました。

これは中小企業の経営者にとっても、決して他人事ではありません。

今回は、国税庁のオンライン照会がどこまで進んでいるのか、そして経営者として何を意識しておくべきなのかを解説します。

1.これまでの金融機関への照会はどうだった?

税務調査や滞納整理の際、国税庁が金融機関に対して、預貯金などの情報を照会することがあります。

以前は書面による照会が中心で、回答を得るまでに1か月前後かかるケースもありました。

これがオンライン化されることで、照会にかかる期間が数日程度まで短縮されています。

国税庁にとっては、必要な情報をより迅速に確認できるという大きなメリットがあります。

税務調査のデジタル化は、単に紙を電子化するだけではありません。

「必要な情報を、必要なときに、より速く確認できる」体制へ変わっていることが重要です。

2.生命保険会社へのオンライン照会も拡大

今回特に注目したいのが、生命保険会社へのオンライン照会です。

国税庁では2022年度から生命保険会社へのオンライン照会を開始していました。

2024年度末には6社だった対応会社が、現在では13社まで増加しています。

そして今回、新たに「フフテラス」の試行運用を開始。

これによって新たに10社がオンライン照会に対応し、合計23社の生命保険会社に対してオンラインで照会できる体制になるとされています。

生命保険契約は、経営者やその家族の資産管理・相続対策とも関係することがあります。

そのため、税務調査等における情報確認の範囲が広がっていることは、経営者として知っておきたいところです。

3.新システム「フフテラス」とは?

今回導入された「フフテラス」は、生命保険会社へのオンライン照会を拡充するための新しいシステムです。

2026年8月から試行運用が始まり、国税庁はその結果を踏まえて、今後、全国の国税局などで本格運用することを目指しています。

つまり、今回の試行は単発の取り組みというより、今後の税務行政のデジタル化につながる動きと考えたほうがよいでしょう。

経営者の立場からすると、「税務署が会社に来るかどうか」だけを気にするのではなく、税務当局がさまざまな情報をどのように把握できるようになっているのかを理解することが重要になっています。

4.オンライン照会の対象は生命保険だけではない

オンライン照会の対象は、銀行や生命保険会社だけではありません。

証券会社への照会に加えて、2025年度からは一部のクレジットカード会社や資金決済事業者に対するオンライン照会も始まっています。

私たちの生活や企業活動では、銀行口座だけでなく、クレジットカード、電子決済、証券、保険など、さまざまな金融サービスを利用しています。

こうした情報についてもオンライン照会の対象が広がっているということです。

「会社の銀行口座だけきちんとしていれば大丈夫」という考え方ではなく、会社と経営者個人を含めたお金の流れを整理しておくことが、今後ますます重要になるでしょう。

5.オンライン照会はどれくらい利用されている?

国税庁によるオンライン照会の利用件数も増えています。

2024年度末のオンライン照会件数は835万件。

2025年度末については集計中ですが、2割程度増加して1,000万件を超える見通しとされています。

また、オンライン照会に対応する金融機関も増加しています。

2024年度末には431機関だったところ、2025年度末には目標値の450機関を上回る見込みです。

つまり、オンライン照会は「これから使われるかもしれない新しい仕組み」という段階ではありません。

すでに税務行政の重要なインフラになりつつあります。

6.中小企業経営者にとって何が変わるのか

では、こうした動きが中小企業の経営者にどのような影響を与えるのでしょうか。

一番大きいのは、税務当局が必要な情報を確認するスピードが上がっていくことです。

例えば、税務調査で資金の流れについて確認が必要になった場合、金融機関などから情報を得るまでの時間が短くなれば、調査も効率的に進められる可能性があります。

ただし、

「オンライン照会が増える=税務調査が厳しくなる」

と単純に考える必要はありません。

むしろ大切なのは、会社のお金の流れについて、経営者自身がきちんと説明できる状態にしておくことです。

7.「調査が来てから」ではなく、日頃から整理する

税務調査の対策というと、調査の連絡が来てから帳簿や資料を確認する会社もあります。

しかし、これからの時代は、日頃から情報を整理しておくことがより重要になります。

例えば、

  • 会社の預金口座

  • 役員個人との資金の貸し借り

  • 生命保険契約

  • 借入金

  • 会社名義のクレジットカード

  • 電子決済などによる支払い

などについて、「なぜこの取引をしたのか」を説明できる状態にしておくことです。

特に中小企業では、会社と経営者個人のお金が近くなりやすい傾向があります。

だからこそ、会社のお金と個人のお金を明確に区分することが、税務上のリスクを減らす基本になります。

8.税務調査を必要以上に怖がる必要はない

ここで誤解してほしくないのは、オンライン照会の拡大が「経営者を監視するための仕組み」ということではない点です。

税務行政がデジタル化され、情報を確認する手段が効率化しているだけです。

正しく申告し、取引の内容を説明できる資料を残していれば、必要以上に恐れる必要はありません。

むしろ問題になるのは、「申告した内容と実際のお金の流れが一致していない」「なぜその処理をしたのか説明できない」といったケースです。

税務調査への備えは、特別なテクニックではありません。

毎月の経理を正確に行い、必要な資料をきちんと残しておく。

結局のところ、これが一番の対策です。

9.税理士との情報共有もこれまで以上に重要に

経営者の方からすると、「税理士には会社の決算だけ見てもらえばいい」と考えているケースもあります。

しかし、税務上重要なのは決算書に出ている数字だけではありません。

例えば、経営者個人が会社にお金を貸している、会社が経営者の生命保険料を負担している、会社と個人の間で資産を売買した、といった取引があれば、それも税務判断に関係します。

こうした情報を税理士が把握していなければ、適切なアドバイスをすることが難しくなります。

税務調査のデジタル化が進む今だからこそ、「税理士に何を伝えておくべきか」を意識することも重要です。

10.「デジタル化する税務調査」にどう備えるか

国税庁によるオンライン照会は、今後さらに対象や件数が増えていくと考えられます。

今回の「フフテラス」の試行も、その流れの一つです。

中小企業の経営者として今からできることは、決して難しくありません。

まずは、

「会社と個人のお金が明確に分かれているか」

「預金・保険・借入などの情報をきちんと整理できているか」

「税理士に重要な取引をきちんと伝えているか」

を確認してみてください。

税務調査のデジタル化が進むほど、重要になるのは「うまく隠す方法」ではなく、「正しく説明できる会社」をつくることです。

税務調査への備えは、調査の連絡が来たときに始めるものではありません。

日々の経理と経営管理を丁寧に行うこと。

それが、これからのデジタル化された税務行政に対する、最も確実な備えになるのではないでしょうか。

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