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税理士事務所

同族会社の相続で認知症の相続人がいるとどうなる? オーナー経営者が知っておくべき事業承継リスク


「相続人の一人が認知症だったら、相続手続きはどうなるのだろう?」
同族会社のオーナー経営者にとって、自社株の承継は事業承継の重要なテーマです。しかし、相続人の中に認知症などにより判断能力が低下した方がいる場合、想像以上に大きな問題へ発展することがあります。
特にオーナー企業では、自社株式の承継が滞ることで、株主総会が開けない、役員報酬が決められないなど、経営そのものに影響が及ぶ可能性があります。
今回は、認知症の相続人がいる場合に起こり得る問題と、経営者が事前に考えておくべき対策について解説します。
## 認知症の相続人がいると遺産分割協議ができない
相続が発生すると、相続人全員で遺産分割協議を行い、財産の分け方を決めるのが一般的です。
しかし、相続人の一人が認知症などにより意思能力を欠く状態にある場合、その方を含めた遺産分割協議は無効となります。
そのため、原則として家庭裁判所で成年後見人を選任し、その成年後見人が本人に代わって遺産分割協議へ参加する必要があります。
つまり、
「とりあえず家族だけで話し合って決める」
という方法は通用しません。
## 自社株が共有状態になると経営に影響する
問題は遺産分割だけではありません。
オーナー経営者が保有していた自社株も、遺産分割が終わるまでは相続人全員の共有財産となります。
会社法では、共有株式について議決権を行使する場合、
「共有者の中から権利行使者を1名定め、会社へ通知する」
ことが必要とされています。
ところが、認知症の相続人がいる場合、その同意形成が難しくなることがあります。
成年後見人が選任されていなければ、共有者間で必要な意思決定ができず、結果として株主としての権利行使ができなくなるケースも考えられます。
## 株主総会が機能しなくなる可能性
中小企業では、
・株主=経営者
・株主総会=形式的な手続き
と思われがちです。
しかし法的には、株主総会の決議が必要な事項は数多く存在します。
例えば、
・取締役の選任や再任
・役員報酬の決定
・定款変更
・組織再編
などです。
相続によって議決権行使ができなくなると、これらの重要事項の決定が難しくなる可能性があります。
平時には気づきにくい問題ですが、事業承継の局面では経営上の大きなリスクとなります。
## 決算承認はどうなるのか
毎年の株主総会では計算書類の承認を行います。
では、株主総会が開催できない場合、税務申告もできなくなるのでしょうか。
この点については裁判例において、
「株主総会の承認がない計算書類に基づく法人税申告であっても、申告自体は有効」
と判断されています。
したがって、直ちに申告不能になるわけではありません。
ただし、会社法上の手続き不備が解消されるわけではなく、長期化すればガバナンス上の問題となる可能性があります。
## 役員報酬には特に注意が必要
経営者が最も注意したいのは役員報酬です。
役員報酬は、株主総会で定められた報酬枠の範囲内で決定されることが一般的です。
ところが、株主総会決議が適法に行えない状態では、
「その役員報酬に法的根拠があるのか」
という問題が生じる可能性があります。
税務上も、役員報酬の損金算入について否認リスクが生じる可能性があるため注意が必要です。
オーナー企業では役員報酬が会社経営や個人の生活設計に直結するため、見過ごせない問題といえるでしょう。
## 成年後見制度を避けたいという声もあるが…
実務では、
「成年後見人を付けたくない」
というご相談も少なくありません。
成年後見制度を利用すると、本人の財産管理に一定の制約が生じるためです。
しかし、制度利用を避けた結果、
・遺産分割ができない
・株式が共有状態のままになる
・株主総会が機能しない
・事業承継が進まない
という問題が発生することがあります。
現在は成年後見制度の見直しも議論されていますが、現行制度のもとでは重要な選択肢であることに変わりありません。
## 税理士の視点から
中小企業の相続では、「相続税対策」ばかりに目が向きがちです。
しかし実際には、
・認知症対策
・自社株対策
・事業承継対策
を一体で考える必要があります。
特にオーナー企業の場合、自社株が動かなくなることは経営そのものが動かなくなることを意味します。
認知症になってからでは選択肢が大きく制限されるため、
「まだ元気だから大丈夫」
ではなく、
「元気なうちに準備する」
という視点が重要です。
まとめ
同族会社のオーナーが亡くなり、相続人の中に認知症の方がいる場合、成年後見人を選任しなければ有効な遺産分割協議はできません。
また、自社株が共有状態となることで議決権行使が困難になり、株主総会や役員報酬の決定など会社経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。
事業承継の問題は、相続発生後ではなく、経営者が元気なうちから準備することが最も重要です。
自社株の承継や認知症リスクに不安がある場合は、税理士や司法書士、弁護士などの専門家と早めに対策を検討しておくことをおすすめします。


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