クレメンティア
税理士事務所
「第三者との取引でもアウト?」
― 新設された“関連者書類特例”が中小企業に突きつける実務リスク ―
令和8年度税制改正で創設された
**「関連者間取引に係る書類の整理保存の特例」**。
一見すると、
「グループ会社間の話でしょ」
と思われがちですが、実はそう単純ではありません。
今回の制度では、
**非関連者(第三者)との取引でも、条件次第で対象になる**
という重要なポイントがあります。
しかも、
書類が不十分な場合は
**青色申告の承認取消しリスク**
に直結します。
今回は、中小企業経営者の実務に直結する視点から、
「何が変わるのか」「どこにリスクがあるのか」
そして「今から何を準備すべきか」を整理します。
---
## 1.この制度の本質は「価格の透明性」を求めるもの
まず押さえておきたいのは、
この制度の目的です。
それはシンプルで、
**関連者との取引価格は、本当に適正か?**
これを説明できるようにすることです。
具体的には、
・工業所有権(特許・商標など)の譲渡や貸付
・役務提供(コンサル、技術提供、業務委託など)
について、
契約書などに
・対価の算定根拠
・価格の内訳
・条件
が十分に記載されていない場合、
**別途「特定事項記載書類」の保存が必要**
になります。
ここが今回の実務ポイントです。
---
## 2.最大の注意点:「第三者でも関連者扱い」になるケース
今回の改正で最も見落とされやすいのが、ここです。
通常、関連者とは
・親会社
・子会社
・兄弟会社
・実質的に支配している会社
などを指します。
しかし今回の制度では、
**形式上は第三者でも、実質的に関連者取引とみなされる**
ケースが明確化されました。
---
### 典型例:こんな取引は要注意
例えば、
A社(あなたの会社)
↓
B社(グループ会社)
↓
C社(外部の会社)
という取引があったとします。
そして、
・B社がC社に提供したサービスが
・最終的にA社に提供されることが
・最初から決まっている
さらに、
・価格を実質的にA社とB社で決めている
この場合、
**A社とC社の取引は
関連者間取引とみなされる**
可能性があります。
つまり、
**「第三者を挟めば安全」という時代ではない**
ということです。
---
## 3.実はここが重要:「取引時点」で判定される
もう一つ、実務上非常に重要なルールがあります。
それは、
**関連者かどうかは
取引時点の状況で判定される**
という点です。
これはどういう意味か。
例えば、
・取引時は関連者だった
・その後に関係が解消された
この場合でも、
**その取引は関連者取引として扱われる**
ということです。
逆も同様です。
したがって、
「今は関係がないから大丈夫」
という判断は危険です。
---
## 4.最も重いリスクは「青色申告取消し」
この制度を軽く見てはいけない理由は、ここにあります。
もし、
必要な書類を保存していなければ、
**青色申告の承認取消し**
の対象になります。
これは極めて重大です。
なぜなら、
青色申告が取り消されると、
・欠損金の繰越ができない
・各種特例が使えない
・税負担が急増する
という影響が出るからです。
つまりこの制度は、
単なる書類管理の話ではなく、
**税務リスクそのもの**
なのです。
---
## 5.中小企業が今すぐ確認すべき5つのチェックポイント
実務としては、次の5点を確認してください。
### ① グループ会社との取引があるか
・親会社
・子会社
・兄弟会社
・代表者が共通する会社
ここは当然対象です。
---
### ② 「業務委託」「技術提供」があるか
特に注意が必要なのは、
・コンサル
・システム開発
・営業支援
・技術指導
・ブランド使用
といった、
**価格が説明しにくい取引**
です。
---
### ③ 第三者を経由した取引があるか
ここが今回の新しい論点です。
例えば、
・代理店経由
・商社経由
・関連会社経由
このような取引は、
**実質的な価格決定者が誰か**
が問われます。
---
### ④ 契約書に「価格の根拠」が書かれているか
最低限、
・算定方法
・単価
・計算式
・見積根拠
ここが説明できる状態にしておく必要があります。
---
### ⑤ 書類保存の責任者が明確か
制度が厳しくなるほど、
重要になるのは、
**責任の所在**
です。
・誰が作るか
・誰が確認するか
・誰が保存するか
ここが曖昧だと、必ず事故が起きます。
---
## まとめ
今回の制度は、
「関連者取引を監視する」
というより、
**価格決定のプロセスを説明できるか**
を問う制度です。
そして重要なのは、
形式ではなく
実質を見る
という流れが、確実に強まっていることです。
税務の世界は今、
**取引の中身を説明できる会社だけが守られる**
時代に入っています。
これは規模の問題ではありません。
むしろ、
中小企業ほど、
・契約書
・価格決定
・証拠保存
ここを「経営管理」として整備することで、
大きな差が生まれます。
制度対応はコストではなく、
**信用力の投資**です。
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