クレメンティア
税理士事務所
非上場株式評価の大転換が始まる?
― 昭和39年以来の見直しが中小企業経営に与える本当の影響 ―
国税庁が、非上場株式の評価方式の見直しに着手しました。
これは単なる制度調整ではなく、**昭和39年以来の抜本的見直し**となる可能性があります。
特に中小企業の経営者にとっては、
・事業承継
・自社株対策
・資本政策
・将来の相続税負担
これらすべてに影響し得るテーマです。
今回は、制度の背景と、経営者として今から考えておくべき実務的視点を整理します。
---
## 1.なぜ今、非上場株式の評価が見直されるのか
今回の見直しの直接のきっかけは、
**会計検査院の指摘**です。
主な論点は次の3つです。
### (1)評価方法によって株価が大きく変わる
例えば、
・類似業種比準価額
・純資産価額
・配当還元方式
これらの方式間で、
**評価額が大きく乖離している**という問題が指摘されました。
つまり、
同じ会社なのに
評価方法次第で
株価が大きく変わる
という状態です。
これは本来、税制として望ましい姿とは言えません。
---
### (2)大きい会社ほど株価が低くなる逆転現象
特に問題視されたのが、
**会社規模が大きいほど
株価が低く算定されやすい**
という傾向です。
これは実務上、非常に重要です。
なぜなら、
・成長した会社
・利益を出してきた会社
・組織化が進んだ会社
ほど、
**相続税上は有利になる可能性があった**
という構造だからです。
---
### (3)評価額を意図的に下げるスキームの存在
今回の見直しの核心は、ここにあります。
例えば、
・種類株式の活用
・利益操作
・資本移転
・株主構成の調整
・会社規模区分の操作
これらを組み合わせることで、
**合法的に見える形で
株価を大きく下げる**
という実務が一部で行われてきました。
国税庁としては、
個別否認(評価通達6項)
で対応してきましたが、
これは本質的な解決ではありません。
なぜなら、
**納税者側の予見可能性が低い**
からです。
そのため今回、
制度そのものを見直す
という方向に舵を切ったわけです。
---
## 2.今回の見直しで起きる可能性が高い4つの変化
私は、次の4つが現実的な論点になると見ています。
### (1)株価は「上がる方向」の圧力が強い
これは非常に重要です。
今回の見直しの背景は、
**評価額が低すぎるのではないか**
という問題意識だからです。
したがって、
制度改正の方向性としては、
・評価差の縮小
・恣意性の排除
・公平性の確保
となります。
結果として、
**自社株評価は上昇する方向**
に動く可能性が高いです。
---
### (2)「評価額の崖」が解消される
現在は、
例えば
・従業員数
・資産額
・売上高
などの条件によって、
**あるラインを超えた瞬間に
株価が急変する**
という現象があります。
これが、
いわゆる
**評価額の崖**
です。
今後は、
・連続的な評価
・滑らかな評価
・区分依存の縮小
といった方向に進む可能性があります。
---
### (3)節税スキームの難易度が上がる
これはほぼ確実です。
特に影響が大きいのは、
・種類株式
・持株会社
・資本政策
・組織再編
・株主構成調整
です。
今までのように
「形式を整えれば通る」
という時代から、
**実質重視の評価**
へ移行していくと考えられます。
---
### (4)事業承継のタイミング戦略が重要になる
スケジュール感は次の通りです。
・2025年 議論本格化
・2027年度 税制改正大綱
・2028年1月 新制度開始(最短)
つまり、
**あと約2年〜3年が移行期間**
です。
ここは極めて重要です。
---
## 3.今、経営者がやるべき現実的な3つの準備
ここからが実務です。
### (1)まず「今の株価」を正確に把握する
これは基本ですが、
実は多くの会社がやっていません。
しかし、
制度が変わる前後で
**株価がどう動いたか**
を比較するためには、
現在の基準値が必要です。
これは経営判断の土台になります。
---
### (2)事業承継の時期を「制度」で判断しない
よくある誤解があります。
それは、
制度が変わるまで待つ
という考え方です。
しかし、
本質はそこではありません。
重要なのは、
**経営の承継準備ができているか**
です。
・後継者の育成
・権限移譲
・組織体制
・資金力
これが整っていない状態での承継は、
税制以前に失敗します。
---
### (3)「今の制度でできること」を整理する
制度改正は、
未来の話です。
しかし、
経営は今日も続きます。
だからこそ、
今やるべきは、
・株価対策
・資本政策
・納税資金対策
・持株整理
・配当政策
これらの
**現行制度ベースの最適化**
です。
---
## まとめ
今回の非上場株式評価の見直しは、
単なる税務改正ではありません。
これは、
**日本の事業承継制度の前提が変わる可能性**
を意味します。
そして重要なのは、
制度が変わることではなく、
準備しているかどうか
です。
経営は、
制度に振り回されるものではなく、
制度を前提に設計するものです。
ここが分かれ道になります。
もし、
・自社株の評価が分からない
・承継時期の判断に迷っている
・将来の税負担が見えない
このような状況であれば、
今がちょうど見直しのタイミングかもしれません。
制度改正の前こそ、
最も戦略が効く時期だからです。
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