クレメンティア
税理士事務所
M&Aの「デューデリ費用」は経費にできるのか?―合併・事業譲渡で押さえるべき税務判断のポイント
M&Aを検討されている中小企業経営者の方にとって、「デューデリジェンス費用(以下、デューデリ費用)」をいつ・どのように経費計上できるかは、資金繰りや意思決定に直結する重要な論点です。
最近では「株式購入型M&A」に関する初の司法判断も出され、実務の注目度は一層高まっています。
今回は、合併・事業譲渡におけるデューデリ費用の税務上の取扱いを、経営判断に活かせる視点で整理します。
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## 1.まず結論:合併・事業譲渡のデューデリ費用は「原則、当期の経費」
合併(吸収合併)や事業譲渡に伴って発生するデューデリ費用は、
**原則として「一時の損金(=当期の経費)」として処理できる**
とされています。
ここが実務上、とても重要です。
なぜなら――
**「資産の取得価額に含める」のか**
**「その年の経費にできる」のか**
によって、利益・税金・資金繰りが大きく変わるからです。
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## 2.なぜ「資産」ではなく「経費」になるのか
税務の考え方はシンプルです。
> その費用が
> 「その資産を使える状態にするために直接必要だったか」
が判断基準です。
デューデリ費用は一般的に、
・財務・税務・法務の調査
・事業内容の把握
・リスクの洗い出し
といった
**意思決定のための費用**
であり、
**個々の資産を使うための直接費用ではない**
と整理されます。
そのため、
・減価償却資産の取得価額には含めない
・発生時に費用計上できる
という結論になります。
---
## 3.経営者として本当に重要なのは「キャッシュフローへの影響」
ここが実務の核心です。
例えば――
デューデリ費用:
**500万円**
これが
● 資産計上(5年償却)なら
→ 毎年100万円ずつ経費
● 一時損金なら
→ 当期500万円すべて経費
つまり、
**税金のタイミングが大きく変わります。**
結果として、
・資金繰り
・投資判断
・金融機関評価
すべてに影響します。
---
## 4.注意点:「株式購入型M&A」は現在も争点
ここは非常に重要な最新論点です。
今回のニュースにもある通り、
**株式購入によるM&Aのデューデリ費用**
については、
> 「有価証券の購入費用」に当たるのか
が争われています。
もし、
**有価証券の取得費**
と判断されると、
→ 即時費用にならない
→ 売却時まで費用化できない
という可能性があります。
つまり――
**税務リスクが残っている領域**
です。
現在は、
・東京地裁判決あり
・国が控訴中(高裁判断待ち)
という状況で、
**実務上は非常に慎重な判断が必要**
なフェーズです。
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## 5.中小企業経営者への実務アドバイス(ここが一番大切)
M&Aを検討する際、
税務で本当に重要なのは、
**「契約前に整理しておくこと」**
です。
特にこの3点です。
### ① スキーム(手法)で税務は大きく変わる
・株式譲渡
・事業譲渡
・合併
・会社分割
同じM&Aでも、
**税務はまったく別物**
になります。
---
### ② デューデリ費用は「意思決定前」か「取得のため」か
ここが判断の分岐点です。
実務では、
・調査目的
・契約時期
・業務内容
・請求書の記載
まで見られます。
税務調査では、
**かなり細かく確認される論点**
です。
---
### ③ 「税務」ではなく「キャッシュ戦略」で考える
私はいつもここを重視しています。
経営にとって重要なのは、
**税金の理屈ではなく、資金の動き**
だからです。
・今年いくら資金が残るか
・銀行評価はどうなるか
・投資余力はどう変わるか
ここを軸に判断することが、
経営としては合理的です。
---
## まとめ:M&Aは「契約前」に税理士を巻き込むのが最善
今回のテーマを一言で言うと――
**M&Aは、契約前でほぼ勝負が決まる**
です。
特に、
・数百万円〜数千万円のデューデリ費用
・資金調達
・税務処理
・のれん
・役員報酬設計
これらはすべて、
**事前設計で結果が変わる領域**
です。
もし、
・会社を買う予定がある
・事業を譲る/譲り受ける予定がある
・M&Aを将来の選択肢として考えている
のであれば、
**「税務」ではなく「経営戦略」としてのM&A設計**
を、早い段階で検討されることを強くお勧めします。
経営は、準備で9割決まります。
これは、私自身が現場で何度も見てきた実感です。
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