クレメンティア
税理士事務所
2025年改正 建設業法が経営に突きつける「値決め」と「原価管理」の新常識
― 安く受けることがリスクになる時代へ ―
2025年12月12日、改正建設業法が完全施行されました。
今回の改正は単なる制度変更ではありません。
「人を守るための価格」「持続できる経営」を前提に、
これまでの“慣行”が通用しなくなる転換点です。
特に中小建設業の経営者にとっては、
**受注戦略・原価管理・資金繰り**に直結する重要テーマです。
税理士・経営支援の現場から見た実務ポイントを整理します。
――――――――――――――――――――
■ 改正の本質は「安く受けることが違反になり得る」時代へ
今回の改正は、大きく3つの目的で進められました。
・担い手の確保
・生産性向上
・地域における対応力強化
しかし経営者目線で言えば、核心はシンプルです。
**「原価を下回る受注」が、法的リスクになる**
これが最大の変化です。
これまで現場では、
・仕事を切らしたくない
・元請との関係を維持したい
・競争に勝つために価格を下げる
こうした判断が普通に行われてきました。
しかしこれからは、
**無理な受注が“善意”でも違反になり得る**
という時代に入っています。
――――――――――――――――――――
■ 経営者が必ず押さえるべき5つの改正ポイント
① 労務費の基準が「国の指標」として示される
これまでは「相場」や「慣例」で決めていた労務費に、
国としての基準が示され、勧告できる仕組みができました。
つまり、
**「人件費はこのくらい必要」という公的な根拠ができた**
ということです。
これは同時に、
・値上げ交渉の根拠になる
・安値受注の説明ができなくなる
という意味でもあります。
――――――――――――――――――――
② 著しく低い見積りが禁止された(発注者・受注者とも)
ここは非常に重要です。
・発注者が「もっと安く」と要求する
・受注者が「無理な価格」で見積りを出す
どちらも禁止対象です。
さらに、
**材料費等を明記した見積書の作成が努力義務**
になりました。
これは単なる書類の話ではありません。
**原価の見える化が義務化に近づいた**
ということです。
――――――――――――――――――――
③ 原価割れ契約の禁止
ここが最もインパクトのある改正です。
・赤字になると分かっていて受注する
・利益ゼロでも仕事を取る
これが、
**原則として禁止**
になりました。
違反すれば、
・行政指導
・監督処分
・公表
といったリスクが現実になります。
つまり、
**「利益を確保すること」が法令遵守**
になったということです。
――――――――――――――――――――
④ 著しく短い工期の契約が禁止
これも現場では非常に重要です。
・無理な工期
・人手不足のまま突貫工事
これが労働時間問題や事故につながるため、
明確に禁止されました。
経営としては、
**工程管理=コンプライアンス**
という認識が必要になります。
――――――――――――――――――――
⑤ ダンピング対策の強化
価格だけでなく、
・工期
・労務費
・体制
すべてを含めて、
不当な条件での受注が規制対象になりました。
これは裏を返せば、
**健全な会社が守られる方向**
への転換でもあります。
――――――――――――――――――――
■ 税理士の立場から見た「最大の実務ポイント」
今回の改正で最も重要なのは、
**原価管理が「経営管理」から「法令対応」へ変わった**
ここです。
特に中小企業では、
・どんぶり勘定
・現場任せ
・利益が最後に分かる
こうした管理体制がまだ多く残っています。
しかしこれからは、
・受注前に原価が分かる
・利益が確保できるか判断できる
・証拠として説明できる
この状態が求められます。
――――――――――――――――――――
■ 今すぐ取り組むべき3つの経営アクション
① 「工事別原価」を毎月把握する
ここがすべての出発点です。
最低限、
・材料費
・外注費
・労務費
・現場経費
これを案件ごとに見える化することです。
――――――――――――――――――――
② 見積りの根拠を数字で残す
これからは、
「なぜこの金額なのか」
を説明できることが重要になります。
つまり、
**見積書=証拠**
です。
――――――――――――――――――――
③ 「利益が出る価格」から逆算して受注する
これまでは、
売上 − 経費 = 利益
という発想でした。
これからは、
**必要利益 + 原価 = 受注価格**
この順番になります。
ここが経営の分岐点です。
――――――――――――――――――――
■ まとめ:今回の改正は「値上げのチャンス」でもある
今回の改正は、
規制強化でありながら、
同時に大きなチャンスでもあります。
なぜなら、
・安売り競争が抑制される
・人件費を反映しやすくなる
・適正価格が通りやすくなる
環境が整いつつあるからです。
だからこそ経営者には、
**値段を守る勇気**
が求められます。
そしてそのためには、
**数字で経営を守る仕組み**
が必要になります。
現場も、社員も、会社も守るために。
今回の改正を「守り」ではなく、
**経営を強くする転機**として活かしていただければと思います。
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