クレメンティア
税理士事務所
同じ人に「雇用」で「請負」させても大丈夫? 中小企業が押さえるべき実務ポイント
人手不足が続く中、「一人の人にアルバイト(雇用)も頼みたいし、在宅の歩合制業務(請負)も任せたい」というケースが増えています。しかし、この“二つの契約を併存させる”仕組みは、扱い方を誤ると労働法違反・税務リスク・社会保険の遡及加入などにつながる、実はデリケートな領域です。
この記事では、中小企業経営者の皆さまが判断に迷いやすいポイントを、専門家の視点で整理します。
---
## 1. 結論:併存は「不可能ではない」が、一般論ではリスクが高い
ニュースの回答にもある通り、雇用契約(労働者)と請負契約(フリーランス)を同一人物に結ぶことは制度上禁止されていません。
しかし **現実的には“併存は難しい”** とされます。その理由は、
- 実態が請負ではなく雇用と判断される
- 請負部分まで労働法が適用される
- 社会保険の加入漏れ扱いになる可能性
- 企業側が意図せず“偽装請負”と評価されるリスク
があるためです。
中小企業にとって、後から修正費用や指摘対応が発生すると負担も大きく、慎重な設計が求められます。
---
## 2. ポイントは「使用従属性」
厚生労働省の基準では、労働者かどうかを判断する最大の軸が **使用従属性** です。
### ●指揮命令があるか
- いつ働くか指示している
- 方法・手順を細かく指示している
- 業務に対する拘束がある
これらがあると、請負に見せていても“労働者”と判断されます。
### ●報酬が時間に対する対価になっていないか
請負である以上、
- 報酬は「成果物」ベース
- 労働時間に応じた支払いではない
が大原則です。
中小企業の現場では、つい「随時指示してしまう」「成果ではなく時間で調整したくなる」という状況が起きやすいため、ここが最もリスクの高いポイントになります。
---
## 3. 併存させる場合の“最低限”の実務ポイント
併存を検討する経営者の方は、次の4点を押さえてください。
### ① 雇用と請負で業務を明確に区分する
- 業務①:雇用契約(アルバイト、時給、出社)
- 業務②:請負契約(在宅、成果物報酬)
混ざると一瞬で雇用扱いになります。
### ② 請負業務では「指示しない・拘束しない」
- 納期と成果物のみ伝える
- 作業時間や方法への口出しは禁止
- 連絡頻度も必要最小限に
### ③ 支払いは完全に別管理
- 給与:給与明細・源泉徴収・社会保険
- 請負報酬:外注費(源泉徴収の要否チェック)
帳票や管理が混ざると税務調査で指摘されやすくなります。
### ④ 請負は「フリーランス保護法」等の遵守も必要
フリーランスに該当する場合、独禁法・下請法・契約書面交付義務など、別の法律の対象になります。
---
## 4. 中小企業としての戦略的視点
私自身、経営と実務の両方に関わってきた立場からお伝えすると──
**“便利だから併存する”という発想ではなく、「本当に請負にすべき業務なのか」を一度立ち止まって検討することを強くおすすめします。**
請負は自由度が高い一方、
- 業務品質管理が難しい
- 情報漏洩リスク
- 雇用との境界管理の手間
が増えます。
一方で、成果ベースで依頼したい部分は外注の方が相性が良い場合もあります。
経営者としては、この「線引き」を組織の働き方設計の一部として考えることが重要です。
---
## 5. まとめ:併存は“可能だが難しい”。まずは業務設計から
雇用契約と請負契約の併存は、法律上は否定されません。
ただし、使用従属性の観点から“ほぼ雇用とみなされる”ケースが多く、経営者にとっては慎重な判断が必要です。
- 業務設計
- 契約書の整備
- 支払管理の分離
- 運用ルールの徹底
ここまで整えてはじめて、初めて“成立しうる”スキームと言えます。
組織の持続的成長を考えるなら、無理に併存させるよりも「どちらが適切な働き方か」を最適化する方が、結果として経営を安定させます。
Instagram
インスタグラム
Related
関連記事
-
2023.07.29法人様をサポート | 大阪市の税理士ならクレメンティア税理士事務所
-
2025.11.08宗教法人の「収益事業」でも課税されないケースとは?──身体障害者等の生活保護に寄与する事業の特例
-
2025.11.28大阪市宗教法人の収益事業における「役員報酬」の適正化とは
-
2023.08.09法人成りのタイミングとは|大阪市の税理士ならクレメンティア税理士事務所
-
2026.06.03自転車の“青切符”が法人税にも影響? 会社負担すると「損金にならない」ケースに注意
-
2025.11.21法人が適切に使える節税スキームとは?大阪市での導入事例あり
-
2025.11.20宗教法人×不動産活用|大阪市で進む資産運用と税務の最適解
-
2025.11.18宗教法人が土地の寄附を受けるときに注意すべき「措法40条」──知らないと“寄附者”に課税リスク
-
2025.11.17宗教法人が運営する「1泊1,000円の宿泊施設」は課税対象?──“低廉な宿泊施設”の判断ポイントをわかりやすく整理
-
2025.09.202025年税制改正、大阪市の税理士が解説する宗教法人への影響とは
-
2025.09.299. 宗教法人の消費税の納付税額計算とインボイス制度の実践対応
-
2025.09.203. 宗教法人の給与・賞与の源泉徴収計算方法を徹底解説
-
2025.09.22法人経営者が知っておくべき「税務戦略」の立て方【大阪市対応】
-
2025.09.234. 宗教法人の退職手当・報酬の源泉徴収と納税管理
-
2025.09.245. 宗教法人の住職・職員の確定申告義務とe-Taxの活用法
-
2025.10.06大阪市の宗教法人向け|収益事業開始前にやるべき会計整備3ステップ
-
2025.09.25法人税の節税対策でよくある落とし穴とは何ですか?
-
2026.02.03税理士と連携することで可能になる法人の手元資金最大化戦略【大阪市】
-
2025.11.10法人の設備投資を行う際に税理士へ相談すべきポイント
-
2025.11.14宗教法人の収益事業と法人税|大阪市の税理士が伝える「節税の限界」
-
2025.09.11大阪市の法人が税理士に「税務+経営相談」を一括で依頼するメリット
-
2026.08.11無利息でお金を貸しても大丈夫?宗教法人から公益法人への貸付けを税理士が解説
-
2025.10.28税理士が支援する大阪市の法人向け「利益計画」とは?
-
2025.09.16税理士に経営相談もできる?大阪市の法人向けワンストップ支援とは