クレメンティア
税理士事務所
2027年から青色申告はどう変わる?65万円・75万円・10万円控除の要件をわかりやすく解説
個人事業主や不動産賃貸業を営む方にとって、確定申告で重要な制度の一つが「青色申告特別控除」です。
この青色申告特別控除について、令和9年分(2027年分)の所得税から制度が改正され、控除額や適用要件が変わる予定です。
今回の改正では、従来の65万円控除に加え、一定の要件を満たすことで最大75万円の控除を受けられる仕組みが設けられます。
一方で、65万円控除を受けるためには期限内のe-Taxによる電子申告が必要となり、10万円控除にも新たな要件が加わります。
「今までどおりの申告方法で大丈夫なのか」「電子帳簿保存への対応が必要なのか」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
今回は、2027年からの青色申告特別控除の改正内容について、65万円・75万円・10万円の各控除の違いと、今から準備しておきたいポイントをわかりやすく解説します。
※本記事は、ご提供いただいた2026年10月13日付の資料に基づき、令和9年分以後に適用される制度を整理したものです。実際の適用に当たっては、最新の法令や国税庁の案内をご確認ください。
1.青色申告特別控除は2027年からどう変わる?
まず、今回の改正の全体像を確認しましょう。
令和8年分(2026年分)までは、青色申告特別控除の額は、原則として10万円・55万円・65万円の3段階に分かれています。
令和9年分(2027年分)以後は、控除額と適用要件が見直され、一定の要件を満たすことで65万円控除、さらに追加要件を満たすことで75万円控除を受けられる仕組みになります。
主な変更点は次のとおりです。
| 控除額 | 改正後の主な要件 |
|---|---|
| 75万円控除 | 65万円控除の要件を満たし、優良な電子帳簿の保存またはデジタルシームレス保存の要件を満たす |
| 65万円控除 | 複式簿記による記帳、貸借対照表・損益計算書の添付、期限内のe-Taxによる電子申告など |
| 10万円控除 | 65万円控除の要件を満たさず、所定の記帳要件などを満たす |
特に注意したいのは、従来の55万円控除が65万円控除に引き上げられる一方、期限内のe-Taxによる電子申告が必要になることです。
また、75万円控除を受けるためには、電子申告だけでなく、帳簿の電子保存に関する追加要件も満たす必要があります。
つまり、今回の改正では、控除額が増えるだけでなく、日頃の記帳方法や申告方法も重要になります。
2.65万円控除を受けるにはe-Taxが必須に
今回の改正で、特に影響が大きいのが65万円控除の要件です。
改正後は、従来の要件に加えて、確定申告期限内にe-Taxで電子申告を行うことが必要になります。
主な要件は次のとおりです。
不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいること
対象となる取引を複式簿記で記帳していること
貸借対照表や損益計算書などを確定申告書に添付すること
申告期限内にe-Taxで電子申告すること
これらの要件を満たすことで、65万円控除の適用を受けられる仕組みです。
書面で申告している方は要注意
これまで税務署への書面提出などで確定申告を行っていた方は、改正後の申告方法を確認しておきましょう。
書面申告のままでは、改正後の65万円控除の要件を満たせません。
その場合、ほかの要件を満たしていても、適用できる控除額が10万円にとどまる可能性があります。
控除額が減れば、課税対象となる所得が増え、結果として税負担が増えることも考えられます。
これまで紙で申告していた方は、早めにe-Taxへの切り替えを検討することをおすすめします。
3.最大75万円の控除を受けるには何が必要?
今回の改正で注目されるのが、最大75万円の青色申告特別控除です。
ただし、75万円控除は、単に電子帳簿を使っていれば受けられるものではありません。
まず65万円控除の要件を満たしたうえで、電子帳簿保存などの追加要件を満たす必要があります。
具体的には、次のいずれかの方法が対象となります。
仕訳帳と総勘定元帳を「優良な電子帳簿」として保存する
電子取引について「デジタルシームレス保存」の要件を満たす
いずれの場合も、所定の届出が必要となるため、帳簿の保存方法だけでなく、届出の期限も確認しておきましょう。
75万円控除を目指すなら早めの準備を
電子帳簿保存に対応するには、現在利用している会計ソフトが要件を満たしているか、確認する必要があります。
また、ソフトを導入するだけでなく、実際に必要な方法で帳簿を保存できていることも重要です。
「会計ソフトを使っているから大丈夫」と思い込まず、ソフトの機能や保存方法、届出の要否を確認することが大切です。
4.「優良な電子帳簿」とは?
75万円控除の要件の一つである「優良な電子帳簿」とは、一定の機能要件を満たした電子帳簿のことです。
具体的には、帳簿の訂正や削除の履歴が確認できるなど、電子帳簿保存法で定められた要件に対応している必要があります。
75万円控除を受ける場合には、特に仕訳帳と総勘定元帳を優良な電子帳簿として保存することがポイントです。
会計ソフトによって対応状況が異なるため、利用中のソフトが要件を満たしているか、メーカーや提供事業者に確認しておくとよいでしょう。
また、JIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)が認証したソフトを選択肢として検討する方法もあります。
届出書の提出期限にも注意
優良な電子帳簿の保存によって75万円控除を受ける場合には、所定の届出書を、適用を受ける年分の確定申告期限までに所轄税務署長へ提出する必要があります。
資料によると、届出書の名称は変更される予定ですが、変更前の名称の届出書をすでに提出している場合には、改めて提出する必要はないとされています。
ただし、届出の内容や適用条件については、最新の案内を確認してください。
電子帳簿の準備と届出は、申告直前ではなく、余裕を持って進めることが重要です。
5.「デジタルシームレス保存」とは?
75万円控除のもう一つの選択肢が、デジタルシームレス保存です。
これは、電子取引データを、所定の要件を満たすソフトを使用して送受信・保存する方法です。
たとえば、取引先から受け取った請求書や領収書などの電子データについて、対象となる仕組みを利用して処理・保存することが想定されます。
ただし、一般的な会計ソフトやクラウドサービスを利用しているだけで、必ず要件を満たすわけではありません。
デジタルシームレス保存の要件に対応したソフトを利用し、定められた方法で電子取引データを取り扱っていることが必要です。
この方法で75万円控除を受ける場合にも、所定の届出書を確定申告期限までに提出する必要があります。
電子帳簿保存とデジタルシームレス保存では、対象となる仕組みや要件が異なるため、自社の取引方法や利用中のシステムに合った方法を選びましょう。
6.10万円控除にも新しい要件が追加される
今回の改正では、65万円控除だけでなく、10万円控除の要件も見直されます。
改正後は、65万円控除の要件を満たさない青色申告者のうち、簡易簿記で記帳している場合などについて、一定の条件が設けられます。
主なポイントは、前々年の不動産所得または事業所得に係る収入金額が1,000万円以下であるかどうかという点です。
簡易簿記で記帳している場合は、この収入金額の要件などを確認する必要があります。
なお、不動産所得については、不動産の貸付けが事業的規模に満たない場合に該当するケースもあります。
そのため、10万円控除を受ける予定の方も、記帳方法や収入金額、不動産貸付けの規模を確認しておきましょう。
「前々年の収入金額」で判定する点に注意
この要件では、当年の売上だけでなく、前々年の収入金額を確認することが重要です。
自分では10万円控除の対象だと思っていても、収入金額などの条件によって適用関係が変わる可能性があります。
簡易簿記で申告している方は、改正後の要件に照らして、現在の記帳方法を続けられるか確認しておくと安心です。
7.不動産所得の「事業的規模」はどう判定する?
不動産賃貸業を営む方が注意したいのが、「事業的規模」の判定です。
不動産所得について65万円控除を受けるには、原則として、不動産の貸付けが事業的規模で行われている必要があります。
この判定では、一般的に「5棟10室基準」が目安とされています。
貸家の場合:おおむね5棟以上
アパートなどの場合:おおむね10室以上
この基準を満たす場合は、原則として事業的規模に該当するものとして取り扱われます。
ただし、物件数だけで機械的に判断できるとは限りません。個別の事情によって判断が必要になる場合もあります。
事業的規模に該当しない小規模な不動産貸付けの場合は、65万円控除の対象とならず、75万円控除も適用できません。
不動産賃貸業を営む方は、所有物件の数や貸付けの状況を確認し、自分がどの控除区分に該当するか把握しておきましょう。
8.中小企業経営者が今から準備しておきたいこと
青色申告特別控除の改正は、個人事業主や不動産オーナーだけでなく、個人で事業を営む中小企業経営者にも関係する制度です。
2027年分の申告に向けて、次の点を確認しておくとよいでしょう。
チェックリスト
現在、65万円・55万円・10万円のどの控除を受けているか確認する
e-Taxで期限内に申告できる体制を整える
複式簿記による記帳や決算書の作成方法を確認する
75万円控除を目指す場合、会計ソフトが必要な要件に対応しているか確認する
優良な電子帳簿またはデジタルシームレス保存の要件を確認する
必要な届出書と提出期限を確認する
10万円控除の場合は、前々年の収入金額などの要件を確認する
不動産所得がある場合は、貸付けが事業的規模に該当するか確認する
特に、会計ソフトの変更や電子帳簿保存への対応には、一定の準備期間が必要になる場合があります。
改正直前に慌てないよう、早めに自社の状況を整理しておくことが大切です。
9.まとめ|青色申告の改正は、日頃の経理体制を見直す機会に
2027年分からの青色申告特別控除の改正では、控除額が最大75万円になる一方で、電子申告や電子帳簿保存などの要件が重要になります。
今回のポイントを整理すると、次のとおりです。
65万円控除:複式簿記などの要件に加え、期限内のe-Taxによる電子申告が必要
75万円控除:65万円控除の要件を満たし、優良な電子帳簿またはデジタルシームレス保存の要件を満たす
10万円控除:簡易簿記の場合などに、前々年の収入金額などの新たな要件が関係する
不動産所得:事業的規模の判定が控除額に影響する
事前準備:会計ソフト、帳簿の保存方法、届出の要否を早めに確認する
青色申告特別控除は、要件を満たすことで所得金額から一定額を差し引ける制度です。
しかし、控除額だけに注目するのではなく、日頃の記帳方法や経理体制も含めて見直すことが大切です。
「今までと同じ方法で申告できるだろう」と考えず、改正後の要件に合っているかを一度確認してみましょう。
税理士としても、制度改正への対応は、単に税金の計算方法を変えるだけでなく、経理業務を効率化し、会社や事業の数字を正確に把握する機会になると考えています。
令和9年分の申告に向けて、早めに準備を進めていきましょう。
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