クレメンティア
税理士事務所

【令和9年4月から】飲食料品の消費税が1%に?中小企業が知っておきたい「本則課税」への変更と経過措置

令和9年4月から、飲食料品の消費税率が現在の8%から1%に引き下げられる予定です。
「消費税が下がるなら、会社にとって単純にプラスなのでは?」
そう考えたくなりますが、飲食料品を扱う事業者にとっては、もう一つ重要なポイントがあります。
それが、「簡易課税から本則課税(原則課税)へ変更するかどうか」です。
特に、設備投資などを予定している会社では、課税方式を変更することで消費税の納税額が大きく変わる可能性があります。
今回は、令和8年9月15日に閣議決定された大綱の内容をもとに、中小企業経営者が確認しておきたいポイントを解説します。
※以下は大綱に基づく内容であり、今後、国会での審議・法案成立によって内容が変更される可能性があります。
1.飲食料品の消費税が「8%→1%」になる予定
今回予定されているのは、飲食料品にかかる消費税率の臨時的な引下げです。
令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間、現在の軽減税率8%の対象となっている飲食料品について、消費税・地方消費税を合わせた税率を1%とする特例が予定されています。
つまり、飲食料品を販売している会社にとっては、売上に含まれる消費税が大きく変わることになります。
2.「税率が下がる=必ず得」とは限らない
ここで経営者の方に注意していただきたいのが、
「売上にかかる消費税が1%になるなら、税金も少なくなるから安心」
と単純には考えられないことです。
消費税の計算では、売上だけでなく、仕入れや経費、設備投資などに含まれる消費税も関係します。
特に、飲食料品の売上が大きい会社で、高額な設備投資などを予定している場合には、
「簡易課税のままでよいのか?」
「本則課税にしたほうが有利ではないか?」
という検討が重要になります。
3.簡易課税と本則課税、何が違う?
消費税の計算方法には、大きく分けて「本則課税」と「簡易課税」があります。
本則課税では、実際の売上にかかる消費税から、実際に仕入れや経費などで支払った消費税を差し引いて納税額を計算します。
一方、簡易課税では、実際の仕入れにかかった消費税を一つ一つ計算するのではなく、業種ごとに定められた「みなし仕入率」を使って計算します。
そのため、会社の売上や仕入れの状況によって、どちらが有利になるかは変わります。
4.なぜ今回「本則課税」が注目されるのか?
今回、飲食料品の消費税率が1%になると、売上側の消費税が大幅に小さくなります。
一方、仕入れや設備投資などにかかる消費税については、必ずしも同じ割合で小さくなるわけではありません。
そのため、本則課税で計算すると、
「売上にかかる消費税」より「仕入れ等にかかった消費税」のほうが大きくなり、還付が発生する
というケースも考えられます。
例えば、大規模な設備投資を予定している会社であれば、今回の制度変更をきっかけに、消費税の計算方法を見直す意味は大きくなります。
5.でも、簡易課税を選んでいる会社は簡単に変更できない
ここが今回の改正で特に重要なポイントです。
簡易課税制度を選択すると、原則として一定期間は簡易課税を継続して適用する必要があります。
そのため、
「令和9年4月から本則課税にしたい」
と思っても、通常のルールでは変更できないケースがあります。
今回の大綱では、こうした事業者への対応として、特別な経過措置が予定されています。
6.簡易課税をやめるための経過措置が予定されている
令和9年4月1日の属する課税期間について、簡易課税制度の適用をやめようとする飲食料品の譲渡を行う事業者については、一定の条件を満たせば、簡易課税制度選択不適用届出書をその課税期間の末日までに提出することで、課税期間の初日の前日に提出したものとみなす特例が予定されています。
さらに、通常であれば問題となる「簡易課税を選択した場合の2年間の継続適用」というルールについても、今回の特例では適用しないこととされています。
つまり、現在簡易課税を選択している飲食料品の事業者にとっては、本則課税への変更を検討できる機会が設けられる予定なのです。
7.免税事業者にも経過措置が予定されている
今回の経過措置は、簡易課税事業者だけが対象ではありません。
令和9年4月1日の属する課税期間から課税事業者となることを選択する飲食料品の譲渡を行う事業者についても、一定の経過措置が予定されています。
課税期間の末日までに「課税事業者選択届出書」を提出すれば、その課税期間の初日の前日に提出したものとみなす仕組みです。
こちらも、通常の届出期限とは異なる特例となるため、対象となる会社は確認しておく必要があります。
8.経営者が一番注意したいのは「提出期限」
今回の制度で、私が特に注意していただきたいと考えているのが、届出書の提出期限です。
経過措置を利用する場合、提出期限は、
「申告期限まで」
ではありません。
「令和9年4月1日の属する課税期間の末日まで」
とされています。
例えば、3月決算法人であれば、令和10年3月31日までに届出書を提出することがポイントになります。
申告書を作成する段階で考えればいい、という話ではありません。
むしろ、令和9年4月以降の売上や仕入れ、設備投資の予定を早めに確認し、課税期間の途中からでも判断できるよう準備しておくことが重要です。
9.本則課税への変更を検討したい会社のチェックポイント
今回の制度変更を踏まえると、次のような会社は一度シミュレーションしてみる価値があります。
・飲食料品の売上が大きい
・現在、簡易課税制度を選択している
・令和9年4月以降に店舗改装や機械・設備の購入などを予定している
・仕入れや外注費などの課税仕入れが多い
・過去に消費税の還付を受けたことがある
ただし、これらに該当するからといって、必ず本則課税が有利になるわけではありません。
会社ごとの売上構成、仕入れ、設備投資、課税期間などを踏まえて判断する必要があります。
10.消費税改正は「税率」だけでなく「課税方式」まで確認する
今回の飲食料品の消費税率引下げは、単に「8%が1%になる」という話だけではありません。
中小企業にとっては、
「自社はどの課税方式で消費税を計算するのが有利なのか?」
を考えるきっかけにもなります。
特に、簡易課税を選択している会社や、令和9年4月以降に大きな設備投資を予定している会社は、早めに確認しておくことをおすすめします。
税金の制度は、「制度が始まってから考える」のでは間に合わないことがあります。
今回も、経過措置を利用する場合の届出期限は、課税期間の末日です。
そのため、令和9年4月以降の売上・仕入れ・設備投資の予定を整理したうえで、本則課税と簡易課税のどちらが自社に合うのかを早めに試算しておくことが重要です。
「税率が変わる」というニュースを見たときこそ、
「うちの会社の消費税計算はどう変わる?」
という視点で考えてみてください。
※本記事は令和8年9月15日に閣議決定された大綱をもとにしたものです。制度の適用には今後の法案成立等が前提となるため、実際の制度内容については最新の情報をご確認ください。

Instagram

インスタグラム

    Related

    関連記事