クレメンティア
税理士事務所
【大胆な投資促進税制】中小企業は最大5億円の投資が対象?「試験研究用設備」が対象外になる注意点を税理士が解説
「工場を新設したい」
「大型の設備投資を検討している」
「せっかく大きな投資をするなら、使える税制は活用したい」
このように考えている経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
令和8年7月31日から、「大胆な投資促進税制」の申請受付がスタートしています。
この制度は、一定の大規模な投資を行う企業について、即時償却または税額控除を選択できるという、非常にインパクトのある制度です。
特に中小企業者等については、投資額5億円以上という要件が設けられています。
ただし、ここで注意したいのが、
「5億円以上投資すれば、何でも対象になるわけではない」
という点です。
今回は、大胆な投資促進税制の概要とともに、特に注意したい「試験研究用設備」の取り扱いについて解説します。
【1.大胆な投資促進税制とは?】
大胆な投資促進税制は、一定の大規模な設備投資を行う企業を対象とした税制上の優遇措置です。
令和8年7月31日から申請受付がスタートしています。
一定の要件を満たし、経済産業大臣の確認を受けた設備について、所定の期間内に取得等して事業の用に供した場合、
・即時償却
または
・取得価額の一定割合の税額控除
を受けることができます。
大型の設備投資を検討している企業にとっては、投資後の税負担を考えるうえで、ぜひ検討したい制度の一つです。
【2.中小企業者等は「5億円以上」の投資がポイント】
この制度を利用するためには、一定規模以上の投資を行うことが必要です。
経済産業大臣の確認を受けるための要件の一つとして、
・大企業等:35億円以上
・中小企業者等:5億円以上
という投資額の要件があります。
中小企業にとって5億円という金額は、決して小さなものではありません。
そのため、すべての中小企業が利用できる制度というよりは、工場の新設や大規模な設備導入など、かなり大きな投資を予定している企業向けの制度と考えたほうがよいでしょう。
【3.投資額だけでなく「ROI15%以上」も重要】
もう一つ重要なのが、投資計画のROIです。
経済産業大臣の確認を受けるには、投資額だけではなく、
「投資計画のROIが年平均15%以上見込まれること」
などの要件もあります。
つまり、
「5億円以上投資するから税制を使える」
という単純な話ではありません。
その投資によって、どの程度の収益が見込まれるのか。
投資によって会社の事業がどのように成長するのか。
こうした投資計画そのものの収益性も重要になります。
大型投資を検討する際には、税金が安くなるかどうかだけではなく、投資そのものが本当に会社の利益につながるのかを検討する必要があります。
【4.税制上のメリットは「即時償却」または「税額控除」】
一定の要件を満たした場合には、税制上、
・即時償却
または
・取得価額の7%の税額控除
を選択できます。
なお、建物、建物附属設備及び構築物については、税額控除の割合が4%となります。
また、税額控除については、法人税額の20%が上限となっています。
大型投資では取得価額そのものが大きくなるため、税務上どの制度を選択するかによって、資金繰りや利益計画にも影響する可能性があります。
「税額控除と即時償却のどちらが得か」は、会社の利益状況や今後の投資計画などを踏まえて検討することが重要です。
【5.適用期間と経済産業大臣の確認に注意】
この制度では、対象設備について、
「令和8年7月31日から令和11年3月31日まで」
に経済産業大臣の確認を受ける必要があります。
さらに、確認を受けた日から5年を経過する日までの間に、その設備を新たに取得等し、事業の用に供することが必要です。
ここで大切なのは、
「設備を購入してから、使える税制を後から探す」
のではなく、
「投資を計画する段階で、税制の適用要件を確認する」
ということです。
大型投資は金額が大きいだけに、契約してから「この設備は対象外でした」と分かった場合の影響も大きくなります。
【6.最大の注意点は「試験研究用設備」】
今回、特に注意していただきたいのが「試験研究の用に供するもの」です。
大胆な投資促進税制は、投資額などの要件を満たしていたとしても、取得等する建物や機械装置等が「試験研究の用に供するもの」である場合には、対象外となります。
つまり、
「大規模な投資だから対象になる」
とは限りません。
設備を何に使うのかという「用途」が重要になるわけです。
研究開発を積極的に行っている企業の場合には、特に注意が必要です。
【7.研究開発センターを新設する場合は要注意】
例えば、大規模な研究開発センターを新たに建設するケースを考えてみましょう。
そのセンター内で行う試験研究のために、
・機械装置
・器具備品
などを新たに取得する場合があります。
しかし、これらの設備が「試験研究の用に供するもの」に該当する場合、大胆な投資促進税制の経済産業大臣の確認を受けるための要件を満たすことができません。
これは、大型の研究開発投資を予定している企業にとって、非常に重要なポイントです。
「研究開発のために多額の投資をするから、投資促進税制も使えるだろう」
と判断するのではなく、
「その設備は何のために使うのか」
を一つひとつ確認する必要があります。
【8.「貸付の用に供するもの」も対象外】
もう一つ注意したいのが、「貸付の用に供するもの」です。
こちらも大胆な投資促進税制の対象から除外されています。
例えば、取得した設備を他社に貸し付けることを目的としている場合などは、慎重な確認が必要です。
設備の取得目的や実際の使用方法によって税制上の取り扱いが変わる可能性があるためです。
大型設備については、
「誰が使うのか」
「何のために使うのか」
「どのような事業に使うのか」
まで整理しておくことが重要です。
【9.委託先に設備を貸与する場合は?】
ここで、少し注意が必要なケースがあります。
取得した設備を「委託先」に貸与する場合です。
国税庁から公表された改正租税特別措置法関係通達では、取得等した設備を委託先に貸与した場合であっても、
「その設備が専ら適用法人のためにする製品の加工等の用に供されるもの」
であるときは、「貸付の用に供するもの」には該当しないことが明確化されています。
つまり、
「他社が使っているから、すべて貸付扱い」
というわけではありません。
自社の事業のために委託先で使用されている設備については、一定の条件のもとで取り扱いが異なる点に注意が必要です。
設備の所有者だけで判断するのではなく、「その設備が実際に何のために使われているのか」を確認することが重要です。
【10.大型投資の前に、経営者が確認しておきたいこと】
大胆な投資促進税制の活用を検討している場合、少なくとも次の点は事前に確認しておきたいところです。
① 投資額の要件を満たしているか
中小企業者等の場合、投資額5億円以上が一つの要件となります。
② ROI年平均15%以上の見込みがあるか
税制だけではなく、投資そのものの収益性を確認します。
③ 経済産業大臣の確認を受けられる設備なのか
投資対象となる設備の内容を事前に確認します。
④ 試験研究用の設備に該当しないか
研究開発センターなどへの投資では、特に注意が必要です。
⑤ 貸付用の設備に該当しないか
設備の利用者や使用目的を確認します。
⑥ 即時償却と税額控除のどちらが自社に適しているか
単純に「税額控除の方が得」と決めつけず、会社の利益や今後の投資計画、資金繰りなどを含めて判断します。
【まとめ|大型投資は「買う前」に税制を確認する】
大胆な投資促進税制は、大規模な設備投資を行う企業にとって、非常に大きな税制上のメリットを得られる可能性がある制度です。
中小企業者等については5億円以上の投資額が要件の一つとなっており、さらに投資計画のROIが年平均15%以上見込まれることなど、一定の条件を満たす必要があります。
要件を満たせば、
・即時償却
・取得価額の7%の税額控除
※建物等は4%
といった税制上の優遇を受けることができます。
ただし、今回特に注意したいのが、
「試験研究の用に供するもの」
は対象外となる点です。
研究開発センターの建設など、大規模な研究開発投資を計画している場合には、設備の用途を慎重に確認する必要があります。
また、貸付用設備についても原則として対象外ですが、委託先に貸与する設備については、一定の条件を満たせば「貸付の用に供するもの」に該当しないことが通達で明確化されています。
大型設備投資では、
「いくら投資するか」
だけではなく、
「何に使う設備なのか」
「誰が使うのか」
「どのような収益を生み出すのか」
「どの税制が利用できるのか」
を投資の意思決定前に確認することが重要です。
特に数億円規模の投資になると、税制の適用可否だけで金額的な影響も大きくなります。
「設備を購入してから税理士に相談する」のではなく、投資計画の段階で税理士や専門家に相談する。
これが、大型投資で税制メリットを取りこぼさないための重要なポイントです。
Instagram
インスタグラム
Related
関連記事
-
2023.07.29法人様をサポート | 大阪市の税理士ならクレメンティア税理士事務所
-
2025.11.18宗教法人が土地の寄附を受けるときに注意すべき「措法40条」──知らないと“寄附者”に課税リスク
-
2025.12.17大阪市の法人が「銀行格付けを知らずに財務悪化」した失敗パターン
-
2025.12.13国税庁が「AI活用の税務調査」を初公表――宗教法人がいま押さえるべき“見られ方”と実務対策
-
2025.12.13大阪市での法人税の中間申告と税務への影響
-
2025.12.12大阪市の宗教法人が知っておきたい収益事業別の課税ポイント一覧
-
2025.12.08「法人住民税」と「法人事業税」の違いと計算方法
-
2025.12.05宗教法人にも影響する「税務調査手続きの法令化」―帳簿の提示・提出義務とその留意点
-
2025.12.04宗教法人が大阪市でクラウドファンディングを活用する際の税務知識
-
2025.09.202025年税制改正、大阪市の税理士が解説する宗教法人への影響とは
-
2025.10.06大阪市の宗教法人向け|収益事業開始前にやるべき会計整備3ステップ
-
2025.09.256. 宗教法人の収益事業と法人税・地方法人税のポイント
-
2025.09.27大阪市で税理士と一緒に取り組む法人の節税とキャッシュフロー改善
-
2025.09.288. 宗教法人と消費税・地方消費税の基礎知識と実務
-
2025.09.299. 宗教法人の消費税の納付税額計算とインボイス制度の実践対応
-
2025.09.3010. 宗教法人の印紙税・電子納税(e-Tax)と令和の税務効率化
-
2025.10.01宗教法人の「収益」と「非収益」の境界線|大阪市の事例から学ぶ判断基準
-
2025.10.07大阪市で税務と経営両面から法人を支える顧問税理士の選び方
-
2026.01.15税理士が解説|大阪市 宗教法人の「収益事業の再構築」を行うために
-
2025.11.10法人の設備投資を行う際に税理士へ相談すべきポイント
-
2025.10.12税理士が見る大阪市宗教法人のガバナンス改革と収益事業の関係性
-
2025.09.11大阪市の法人が税理士に「税務+経営相談」を一括で依頼するメリット
-
2025.09.16税理士に経営相談もできる?大阪市の法人向けワンストップ支援とは
-
2026.02.03税理士と連携することで可能になる法人の手元資金最大化戦略【大阪市】
-
2026.08.13収益事業がなくても税務署への提出が必要?公益法人等の収支計算書を税理士が解説