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税理士事務所

被災した固定資産に評価損は計上できる?法人税で損金算入するためのポイント

豪雨や地震、台風などの災害によって、会社の建物や機械、車両、設備などが大きな被害を受けることがあります。

中小企業の経営者にとって、災害による設備の損傷は「復旧にいくらかかるのか」だけでなく、「使えなくなった設備を税務上どう処理するのか」という問題もあります。

特に気をつけたいのが、被災した固定資産について「評価損」を計上できるケースです。

今回は、豪雨によって医療機器が使用できなくなった事例をもとに、法人税における固定資産の評価損について、経営者の方にも分かりやすく解説します。

1.災害で使えなくなった設備、すぐに損金にできる?

たとえば、会社が保有している機械設備が豪雨によって水没し、使用できなくなったとします。

帳簿上の価額が500万円残っている一方、メーカーに確認したところ、被災後の時価は0円だったとしましょう。

この場合、

「まだ廃棄していないから、500万円を損金にはできないのでは?」

と考える方もいるかもしれません。

しかし、法人税法では、一定の要件を満たす場合、固定資産について評価損を計上し、その金額を損金に算入できる制度があります。

災害によって著しい損傷を受け、資産の価額が帳簿価額を下回った場合が、その代表例です。

2.そもそも「評価損」とは?

評価損とは、簡単にいうと、

「帳簿上はまだ価値が残っているけれど、実際の価値が大きく下がってしまったため、その下落分を会計上の損失として認識する」

というものです。

たとえば、

・機械の帳簿価額:500万円
・災害後の価額:0円

であれば、一定の要件を満たす場合、その差額について評価損を計上できる可能性があります。

ただし、法人税では「会社が価値が下がったと判断したから」というだけで、自由に評価損を損金にできるわけではありません。

原則として、資産の評価換えによる評価損は損金算入が認められていません。

例外として、法律上定められた一定の事実が発生した場合に、評価損の損金算入が認められます。

3.災害による著しい損傷は、評価損の対象になり得る

法人税法では、固定資産について一定の事実が生じ、その結果として資産の価額が帳簿価額を下回ることになった場合、一定額まで評価損の損金算入が認められています。

固定資産について定められている事実の一つが、

「その資産が災害により著しく損傷したこと」

です。

つまり、今回のように豪雨によって医療機器が著しく損傷し、使用できなくなったケースでは、評価損の計上が認められる可能性があります。

災害による設備の損傷については、「廃棄していないから損金にならない」と一律に考える必要はありません。

4.「まだ廃棄していない」ことだけで評価損が否定されるわけではない

今回の相談事例では、被災した医療機器はまだ廃棄されていません。

ここは実務上、経営者の方にもぜひ知っておいていただきたいポイントです。

固定資産について、災害による著しい損傷があり、その価額が帳簿価額を下回るなどの要件を満たしているのであれば、必ずしも「廃棄処分を完了していること」が評価損計上の前提になるわけではありません。

今回のケースでは、医療機器メーカーから「被災後の時価は0円」と確認されています。

こうした客観的な資料があれば、被災によって資産価値が失われたことを説明するうえで重要な資料になります。

5.評価損はいくら計上できる?

では、帳簿価額500万円、災害後の価額が0円だった場合、500万円全額を評価損として計上できるのでしょうか。

ここで重要なのが、法人税法上の評価損の計算です。

一定の要件を満たす場合、損金に算入できるのは、原則として、

「評価換え直前の帳簿価額」と「事業年度終了時における資産の価額」との差額

に達するまでの金額です。

そのため、単純に「災害に遭った設備だから帳簿価額を全部落としていい」という話ではありません。

被災した固定資産について、

・被災前の帳簿価額
・災害後の資産価値
・事業年度終了時点での価額
・実際の損傷状況

などを確認して、損金算入できる金額を検討する必要があります。

6.「時価0円」は重要な判断材料になる

今回の事例では、医療機器メーカーに確認したところ、被災後の時価が0円とのことでした。

これは評価損を検討するうえで重要な情報です。

税務上の評価損は、「なんとなく価値がなくなった」という経営者の感覚だけで判断するものではありません。

なぜ価値が下がったのか。

どの程度下がったのか。

事業年度終了時点でどの程度の価値があるのか。

こうした点を、客観的な資料によって説明できるようにしておくことが大切です。

たとえば、

・メーカーによる被災状況の確認書
・修理不能であることが分かる資料
・修理費用の見積書
・被災状況の写真
・廃棄や撤去に関する資料
・中古市場における価値を確認できる資料

など、資産価値が低下したことを裏付ける資料を整理しておくとよいでしょう。

7.評価損と「除却損」は別の考え方

災害で設備が使えなくなった場合、

「評価損にするのか、それとも除却損にするのか?」

と迷うことがあります。

ここは、それぞれの要件を分けて考える必要があります。

除却とは、簡単にいえば、その固定資産を事業から取り除くことです。

一方、評価損は、資産を帳簿上評価し直して価値の下落を損失として認識するものです。

今回のように、現時点では廃棄・除却されていないものの、災害によって著しく損傷し、価額が大幅に下落しているケースでは、評価損の計上が検討できます。

「まだ廃棄していないから何も処理できない」と決めつけず、被災状況と資産価値を確認することが重要です。

8.災害が起きたら「税務上の処理」まで確認する

災害が発生した直後、経営者の頭の中は、

「従業員は大丈夫か」
「営業を再開できるか」
「設備をどう復旧するか」
「資金繰りをどうするか」

といったことでいっぱいになります。

税務上の処理まで考える余裕がないのは当然です。

しかし、被災した固定資産については、決算までに整理しておきたい資料がいくつもあります。

特に、

「どの資産が被災したのか」
「どの程度損傷したのか」
「修理できるのか」
「修理するといくらかかるのか」
「現在の価値はいくらなのか」
「廃棄するのか、残すのか」

を早い段階で整理しておくと、決算時の税務判断がしやすくなります。

9.中小企業ほど「被災時の資料」を残しておく

災害による損失について税務処理を検討する場合、後になってから資料を集めるのは意外と大変です。

そこでおすすめしたいのが、被災直後から記録を残しておくことです。

たとえば、設備については被災状況を写真で撮影しておきます。

さらに、メーカーや修理業者に、

「修理可能なのか」
「修理費はいくらなのか」
「修理しても使用できないのか」
「中古品として価値があるのか」

などを確認しておきます。

災害直後は大変ですが、こうした記録が後になって税務上の判断をする際の重要な資料になります。

10.災害後は「復旧」だけでなく「税務」も早めに確認する

災害による設備被害は、会社の経営に大きな影響を与えます。

だからこそ、単に「壊れた設備をどう処分するか」だけではなく、

「法人税上、どのような損失として処理できるのか」

という視点も持っておきたいところです。

今回のように、固定資産が災害によって著しく損傷し、その価額が帳簿価額を大きく下回った場合には、評価損の損金算入が認められる可能性があります。

特に、

「帳簿価額は残っている」
「まだ除却していない」
「しかし実際にはもう使えない」
「メーカーから価値がないと言われている」

という状況なら、税務上の取扱いを一度確認する価値があります。

災害が起きたときは、復旧や資金繰りなど目の前の対応が優先になります。

その一方で、被災した設備についてどのような税務処理ができるのかを早めに確認しておくことも、会社の資金負担を考えるうえで重要です。

「壊れた設備をどう処理するか」まで含めて、顧問税理士に早めに相談することをおすすめします。

※本記事は、提示された相談事例をもとにした一般的な税務上の解説です。評価損の損金算入については、実際の損傷状況、資産の価額、帳簿価額、事業年度末時点の状況などにより判断が異なる場合があります。具体的な処理については、法人税法その他の関連規定を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。

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