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税理士事務所
中小企業向け賃上げ促進税制の「国内雇用者」とは?特殊関係者の範囲を税理士が解説
1.中小企業向け賃上げ促進税制とは?
「従業員の給与を増やしたから、賃上げ促進税制を使えるはず」と考えている中小企業経営者の方は多いと思います。
ただし、この制度では、単に会社から給与を受け取っている人が全員、計算の対象になるわけではありません。
特に注意したいのが、「国内雇用者」という言葉です。
今回は、社長の親族が従業員として勤務している会社を例に、「国内雇用者」と「特殊関係者」の考え方をわかりやすく解説します。
2.令和8年度税制改正後の賃上げ促進税制
中小企業向け賃上げ促進税制は、一定の条件を満たして給与を増やした中小企業について、法人税の税額控除を受けられる制度です。
令和8年度税制改正後の制度では、一定の中小企業者等が、令和9年3月31日までに開始する事業年度において国内雇用者への給与を増加させ、雇用者給与等支給増加割合が1.5%以上となる場合、原則として給与増加額の15%を法人税額から控除できます。
ただし、控除できる金額には法人税額の20%という上限があります。
ここで重要なのは、「給与をいくら払ったか」だけではなく、「誰に払った給与なのか」という点です。
3.賃上げ促進税制における「国内雇用者」とは?
では、そもそも「国内雇用者」とは誰なのでしょうか。
基本的には、法人の使用人のうち、
・会社の国内の事業所に勤務していること
・その国内事業所について作成された労働基準法上の賃金台帳に記載されていること
などの条件を満たす人をいいます。
つまり、一般的な従業員であれば、通常は国内雇用者に該当します。
しかし、ここには重要な「除外」があります。
4.国内雇用者から除外される人に注意
賃上げ促進税制では、次のような人は国内雇用者から除かれます。
・法人税法上の役員
・特殊関係者
・使用人兼務役員
このため、給与計算の担当者が「賃金台帳に載っている従業員だから対象」と判断してしまうと、誤った集計になる可能性があります。
特に中小企業では、社長の家族が会社で働いているケースも珍しくありません。
そこで問題になるのが「特殊関係者」です。
5.「特殊関係者」とは?
特殊関係者とは、簡単にいうと、会社の役員と特別な関係にある一定の人を指します。
具体的には、次のような人が該当します。
① 役員の親族
6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族が対象となります。
② 役員と事実上の婚姻関係にある人
婚姻届を提出していなくても、実質的に夫婦と同様の関係にある人が含まれます。
③ 役員から生計の支援を受けている人
役員から生活面で支援を受けている一定の人も対象となります。
④ ②または③の人と生計を一にする親族
一定の親族についても、特殊関係者に含まれる場合があります。
ここで経営者の方に特に覚えておいていただきたいのが、「役員の親族」という部分です。
6.社長の子どもや配偶者は国内雇用者になる?
今回のケースでは、社長の次男と、その妻が会社で従業員として勤務しています。
2人とも登記上の役員ではありません。
「役員ではないのだから、国内雇用者になるのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、ここが注意点です。
賃上げ促進税制では、法人税法上の役員本人だけでなく、その役員の一定の親族も「特殊関係者」として国内雇用者から除外されます。
社長の次男は、社長から見て2親等の血族です。
また、次男の妻も、社長から見て一定の範囲内の姻族に該当します。
したがって、今回のケースでは、社長の次男とその妻は特殊関係者に該当し、賃上げ促進税制における国内雇用者には該当しません。
7.「登記上の役員ではないから大丈夫」は要注意
中小企業でよくあるのが、「この人は役員登記していないから、普通の従業員として扱っていいだろう」という判断です。
しかし、賃上げ促進税制では、登記上の役員かどうかだけで判断してはいけません。
今回のポイントは、
「役員ではない」
↓
「国内雇用者になる」
とは限らないということです。
役員の親族などが従業員として勤務している場合には、「特殊関係者」に該当しないかを確認する必要があります。
税制上の判定と、会社の登記上の肩書きは別の話です。
この点は、家族経営の会社ほど注意しておきたいところです。
8.賃上げ促進税制の給与集計で確認したいこと
賃上げ促進税制を利用する場合、まず「誰に支払った給与を集計するのか」を確認しましょう。
特に次のような従業員がいる会社は注意が必要です。
・社長の子ども
・社長の配偶者
・役員の親族
・役員と事実上の婚姻関係にある人
・役員から生計の支援を受けている人
給与台帳や給与ソフト上では、通常の従業員と同じように表示されている場合があります。
だからこそ、税制上の「国内雇用者」に該当するかどうかを別途確認することが重要です。
9.中小企業経営者が押さえておきたい3つのポイント
賃上げ促進税制を検討する際は、次の3点を確認しておくとよいでしょう。
ポイント1:給与を支払った相手を確認する
給与総額だけを見るのではなく、誰に支払った給与なのかを確認します。
ポイント2:役員・特殊関係者を確認する
特に家族経営の会社では、役員の親族が従業員として勤務していないかを確認しましょう。
ポイント3:前事業年度との比較も忘れない
賃上げ促進税制は、単純に「今年の給与が多かったからOK」という制度ではありません。
前事業年度の給与支給額との比較など、所定の要件を満たす必要があります。
そのため、決算直前ではなく、給与の集計段階から適用可能性を確認しておくことをおすすめします。
10.家族従業員がいる会社ほど、早めの確認が大切
賃上げ促進税制は、中小企業にとって法人税の負担を軽減できる可能性のある制度です。
一方で、「従業員の給与を増やした」という事実だけで判断すると、対象となる給与の集計を誤ることがあります。
特に、社長や役員の家族が従業員として働いている会社では、「国内雇用者」に該当するかを一人ずつ確認することが大切です。
今回のケースでは、社長の次男とその妻は、登記上の役員ではありませんが、社長の特殊関係者に該当するため、賃上げ促進税制上の国内雇用者には含まれません。
中小企業の税務では、「普段の給与計算では問題ない処理」が、税制上の優遇措置では別の判定を求められることがあります。
賃上げ促進税制を活用するなら、決算時に慌てて確認するのではなく、給与の集計段階から対象者を整理しておくことがポイントです。
家族従業員がいる会社では、こうした細かな判定が税額控除の計算結果に影響することがあります。
「うちの場合はどうだろう?」と思ったときは、給与の支給状況と役員との関係を整理したうえで、制度の要件を一つずつ確認してみてください。
【参考】
・租税特別措置法第42条の4、第42条の12の5
・租税特別措置法施行令第27条の4、第27条の12の5
・民法第725条
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