クレメンティア
税理士事務所
経営者・経理が今すぐ整えるべき5点:改正下請法・フリーランス法・優越的地位の濫用の実務対応
2024年11月1日「フリーランス法」施行、2026年1月1日「改正下請法(通称:取適法)」施行。加えて「優越的地位の濫用」(独禁法)への執行も強まっています。対象・義務・禁止事項が重なりつつ微妙に異なるため、「どれに当たる?」で現場が止まりがち。経理・財務・購買が主導しておくべきチェックポイントを、実務と資金繰りの観点で整理します。
近時は価格転嫁・賃上げを政策的に後押しする流れ。違反時は指導・勧告・社名公表に加え、助成・優遇税制の利用に影響する例も出ています。条例や社内規程よりも「実務の運用」が問われる段階に入っています。
- 改正下請法(取適法):中小受託事業者を保護。資本金要件に加え「従業員数要件」新設。特定運送委託が追加。書面等の作成・2年保存義務、60日以内の支払、遅延利息14.6% 等。
- フリーランス法:従業員を使わない「1人で働く事業者」への委託が対象。自社向け業務も広く適用。支払期日設定と期限内支払、発注内容の明示などが中核。
- 優越的地位の濫用:相手が“取引停止で困る”関係なら幅広く適用。型保管の無償強要、買いたたき、やり直し強要、報復 等を包括的に禁止。
# 経理・財務が直ちに整えるべき5点
①【対象判定の棚卸し】
資本金だけでなく「従業員数関係」を加え、委託先リストを区分(中小受託事業者/フリーランス/その他)。とくに一人社長・個人の継続委託を抽出。発荷主としての運送委託も洗い出し。
②【発注内容の“即時明示”テンプレート化】
発注書・発注メールの共通雛形を作り、両法の必須項目(委託日、給付内容、受領期日・場所、検査完了日、金額、支払期日 等)を一括記載。見積→発注→検収→支払の時系列で証跡を自動保存できるワークフローに。
③【60日ルールと締支払の再設計】
「月末締め翌月末払い」を原則化し、例外は決裁必須。検収日自動起算で60日上限を越えないよう、基幹・会計システムでアラート設定。支払期日未設定=違反温床なので、発注時に必ず日付を確定。
④【支払手段の刷新:手形廃止・振込手数料の社負担】
手形は全面NG方針で前倒し廃止。電子記録債権・一括決済の運用は「期日までに現金化困難」を回避できる範囲に限定。振込手数料は原則“発注者負担”へ社内規程・基本契約・支払実務を統一。
⑤【価格転嫁プロセスの標準化】
定期協議の場を設定し、労務費・原材料・エネルギーの上昇分を資料ベースで協議。据置・不採用時は理由を文書化して通知。トップメッセージを出し、購買KPIに「価格交渉の質」を組み込む。
# 禁止行為の“経理視点”レッドフラッグ
- 検収後の一方的減額・長期サイト化の打診
- 仕様曖昧のまま発注→“やり直し無料”の慣行
- 型・治具の無償保管長期化(量産終了後も放置)
- 「ついでにこれも」無償作業・無償立会い依頼
- 受注者負担の振込手数料・返品送料の恒常化
# 契約・帳票・システムの具体的改修
- 基本契約:用語改定(委託事業者/中小受託事業者)、支払期日60日上限、遅延利息、手数料負担を明文化。
- 発注書・検収書:合否基準・検査完了日の定義を明確化。
- 会計・購買システム:検収日トリガーの支払期日自動計算、60日超アラート、証憑2年保存の自動化。
- 物流:発荷主としての運送委託を「対象取引」として識別するフラグを追加。
# 税務・資金繰りへの影響
- 手形廃止は運転資金の前倒し需要に直結。支払サイト短縮分の資金繰り試算(売掛回転・買掛回転の見直し)を早期に。
- 勧告・公表は信用低下→取引条件悪化や補助・優遇への波及リスク。内部統制の整備は“最小コストの保険”。
# まとめ
ルールは「法務の話」で終わらせず、経理・購買・現場の“運用”に落とし込めた会社が勝ちます。まずは(1)対象判定の棚卸し、(2)発注雛形の統一、(3)60日ルールのシステム実装、(4)手形ゼロ&手数料社負担、(5)価格転嫁の定期協議。この5点を今期中の経営課題に設定しましょう。実装手順書と雛形一式、必要であれば当事務所でご用意します。まずは自社の委託一覧から、着手です。
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