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税理士事務所

源泉所得税の納付書が届かなくなる?令和9年11月から始まる送付停止と中小企業の対応

毎年、年末調整の時期になると税務署から届く、翌年分の源泉所得税の納付書。

給与計算を担当されている方にとっては、毎月の納付に欠かせないおなじみの書類ではないでしょうか。

ところが、今後、この源泉所得税の納付書が税務署から届かなくなることをご存じでしょうか。

国税庁は、令和9年11月から「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」の用紙の送付を順次停止する予定です。

特に注意したいのは、令和11年11月から対象が大きく拡大することです。

これまで紙の納付書を使っていた会社も、今後はe-Taxでの手続きやキャッシュレス納付への対応を検討する必要があります。

今回は、源泉所得税の納付書の送付停止について、変更のスケジュールや中小企業が今から準備しておきたいことを解説します。

1.源泉所得税の納付書とは?毎月の給与支払いに関係する重要書類

会社が従業員に給与や賞与を支払う際には、原則として所得税を差し引き、会社が従業員に代わって国に納付します。

この仕組みを「源泉徴収」といいます。

源泉徴収した所得税は、原則として給与などを支払った月の翌月10日までに納付しなければなりません。

その際に使用するのが「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」です。

一般的には「源泉所得税の納付書」と呼ばれています。

例えば、毎月給与を支払っている会社であれば、給与から差し引いた所得税を集計し、納付書を使って金融機関などで納付しているケースも多いでしょう。

また、従業員が常時10人未満の会社などは、一定の要件のもとで「納期の特例」を利用し、年2回にまとめて納付することもできます。

多くの中小企業にとって、源泉所得税の納付書は日常的な経理業務に関係する重要な書類です。

2.令和9年11月から源泉所得税の納付書の送付が順次停止

今回の変更は、国税庁が進める税務行政のデジタル化の一環です。

これまで税務署は、年末調整の時期に翌年使用する源泉所得税の納付書を、案内リーフレットなどと一緒に送付していました。

今後は、この用紙の送付を段階的に取りやめ、e-Taxによる手続きとキャッシュレス納付への移行を進めていく方針です。

ここで押さえておきたいのは、すべての会社が一斉に送付停止になるわけではないという点です。

法人の種類や納付方法などによって、送付停止の時期が異なります。

3.源泉所得税の納付書はいつから届かなくなる?停止スケジュールを確認

今回の変更では、令和9年11月から令和11年11月にかけて、段階的に対象が拡大する予定です。

主なスケジュールは次のとおりです。

【令和9年11月(令和10年分の様式)から】

  • 調査部特別国税調査官所掌法人(特官所掌法人)

  • 地方公共団体

【令和10年11月(令和11年分の様式)から】

  • 金融機関

【令和11年11月(令和12年分の様式)から】

  • 法人税や消費税をキャッシュレス納付している法人

特に中小企業の経営者に知っておいていただきたいのが、令和11年11月からの変更です。

法人税や消費税をキャッシュレス納付している法人は、源泉所得税について紙の納付書を利用している場合でも、送付停止の対象となる予定です。

つまり、法人税や消費税の納付をすでにオンライン化している会社も、源泉所得税について別途対応を考えておく必要があります。

4.送付停止後はどうやって源泉所得税を納付する?

納付書の送付が停止された後は、基本的にe-Taxを利用して所得税徴収高計算書を作成・送信し、キャッシュレス納付を行う流れになります。

代表的な方法として、次のようなものがあります。

① ダイレクト納付

e-Taxで納付手続きを行い、事前に登録した預貯金口座から税金を引き落とす方法です。

インターネットバンキングを利用する必要がなく、口座から直接納付できる点が特徴です。

ただし、事前に利用開始の手続きや口座の登録が必要です。

② インターネットバンキングによる納付

インターネットバンキングを利用して税金を納付する方法です。

普段からネットバンキングを利用している会社であれば、比較的導入しやすい方法といえます。

③ その他のキャッシュレス納付

国税には、クレジットカード納付やスマホアプリ納付など、複数の納付方法があります。

ただし、利用条件や納付手続き、手数料などが異なるため、自社に合った方法を確認することが大切です。

なお、納付書の送付が停止された後も、紙の納付書を使った納付が一切できなくなるわけではありません。

引き続き紙の納付書を利用したい場合は、最寄りの税務署に相談し、用紙を入手することも可能です。

5.中小企業が特に注意したい令和11年11月の変更

今回の変更で、中小企業が特に注意したいのは、令和11年11月からの対象拡大です。

法人税や消費税をキャッシュレス納付している法人については、企業規模や源泉所得税のキャッシュレス納付の利用実績にかかわらず、納付書の送付停止の対象となる予定です。

例えば、次のような会社を考えてみましょう。

  • 法人税はダイレクト納付を利用している

  • 消費税もインターネットバンキングで納付している

  • 源泉所得税だけは紙の納付書を使っている

このような会社でも、令和11年11月以降は源泉所得税の納付書が届かなくなる可能性があります。

「法人税や消費税はオンラインで納付しているから問題ない」と考えていても、源泉所得税については別途準備が必要です。

特に、給与計算や源泉所得税の納付を経理担当者に任せている会社では、経営者自身も変更内容を把握しておくことをおすすめします。

6.納期の特例を利用している会社も対応が必要?

従業員が常時10人未満の会社では、源泉所得税の納期の特例を利用しているケースがあります。

この特例を利用すると、毎月納付する必要がある源泉所得税を、原則として年2回にまとめて納付できます。

  • 1月から6月までの源泉所得税:7月10日まで

  • 7月から12月までの源泉所得税:翌年1月20日まで

毎月納付する会社と比べて、納付事務の負担を軽減できる制度です。

ただし、納期の特例を利用しているからといって、今回の納付書の送付停止の対象外になるわけではありません。

納付回数が年2回であっても、源泉所得税の徴収高計算書を作成し、納付する必要があります。

そのため、納期の特例を利用している会社も、今後の納付方法について確認しておきましょう。

7.e-Taxへの移行で会社の経理業務はどう変わる?

紙の納付書を利用している会社にとっては、e-Taxへの移行に少し抵抗があるかもしれません。

特に、これまで税務署から届いた納付書に金額を記入し、金融機関の窓口で納付していた会社では、業務の流れが変わることになります。

一方で、e-Taxやキャッシュレス納付を利用することで、次のようなメリットも期待できます。

  • 税務署や金融機関に出向く手間を減らせる

  • 納付手続きをオンラインで完結できる

  • 納付書の保管や管理の手間を減らせる

  • 納付業務を効率化できる

ただし、オンライン化すればすべての業務が自動化されるわけではありません。

給与や賞与から徴収した所得税額を正しく集計し、徴収高計算書を作成する作業は引き続き必要です。

また、担当者が変わった場合にも対応できるよう、操作方法や納付手順を社内で共有しておくことが大切です。

8.今から準備しておきたい3つのこと

納付書の送付停止は段階的に進められる予定ですが、直前になって慌てないよう、早めに準備しておくことをおすすめします。

特に、次の3点を確認しておきましょう。

① e-Taxを利用できる環境を整える

まずは、会社でe-Taxを利用できる状態になっているか確認しましょう。

利用者識別番号の取得状況や、担当者が操作できる環境が整っているかを確認しておくと安心です。

② キャッシュレス納付の方法を決める

ダイレクト納付やインターネットバンキングなど、自社に合った納付方法を検討しましょう。

ダイレクト納付を利用する場合は、事前の口座登録などが必要になるため、早めの準備が大切です。

③ 経理担当者や給与計算担当者と情報を共有する

源泉所得税の納付は、毎月または半年ごとに発生する業務です。

経営者だけでなく、実際に給与計算や納付を担当している方にも変更内容を伝えておきましょう。

特に、納付期限を過ぎてしまうと延滞税などが発生する可能性があります。

納付方法が変わっても、期限までに納付する必要があることを忘れないようにしましょう。

9.令和8年11月に届く納付書はどうすればよい?

今回の変更について、直近で確認しておきたいのが令和9年分の様式です。

令和9年分の源泉所得税の納付書については、用紙の送付を希望していない源泉徴収義務者を除き、令和8年11月に税務署から送付される予定です。

つまり、令和8年11月に納付書が届いたからといって、すぐに紙の納付書が使えなくなるわけではありません。

送付された納付書をこれまでどおり使用することもできますし、用紙を使用せずにキャッシュレス納付へ切り替えることも可能です。

今回の変更は段階的に実施されるため、まずは自社がいつから送付停止の対象になるのかを確認しておくことが重要です。

10.まとめ:源泉所得税の納付方法も早めにデジタル化の準備を

国税庁は、税務行政のデジタル化を進めるため、令和9年11月から源泉所得税の納付書の送付を順次停止する予定です。

特に、令和11年11月からは、法人税や消費税をキャッシュレス納付している法人にも対象が拡大する予定です。

今回の変更によって、これまで紙の納付書を利用していた会社も、e-Taxによる徴収高計算書の作成・送信やキャッシュレス納付への対応を検討する必要があります。

中小企業にとっては、日々の経理業務を見直す一つのきっかけになるかもしれません。

大切なのは、納付書が届かなくなってから対応するのではなく、余裕をもって準備を進めておくことです。

まずは、現在の源泉所得税の納付方法を確認し、e-Taxやダイレクト納付への切り替えが必要かどうか検討してみてはいかがでしょうか。

税務手続きのデジタル化は、最初の準備こそ必要ですが、うまく活用すれば経理業務の効率化にもつながります。

【参考情報】

  • 国税庁「所得税徴収高計算書(源泉所得税の納付書)の送付に関するお知らせ」

  • 所得税法第183条(給与所得に係る源泉徴収義務)

  • 所得税法第220条(源泉徴収に係る所得税の納期限)

【税理士からのひとこと】

今回の変更は、まだ先の話と思われるかもしれません。

しかし、給与計算や源泉所得税の納付は、会社にとって毎月発生する重要な業務です。

こうした制度変更をきっかけに、経理業務全体の効率化やデジタル化についても、一度見直してみることをおすすめします。

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