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税理士事務所

“知らなかった”では済まされない。2024年の賃金不払172億円から学ぶ、経営者が今すぐ確認すべき労働時間管理

2024年、全国で発生した賃金不払事案は22,354件、金額にして172億円超──その多くが中小企業に関わるものです。
「うちはちゃんと給料を払ってる」「昔からの慣習で問題ないはず」…そう思っていても、実は“労基署の監督対象”になっているかもしれません。今回は厚労省が公表した監督指導の実例から、経営者として押さえるべきポイントを整理します。
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## 賃金不払の金額は前年比70億円増──なぜ起こる?
2024年に取り扱われた賃金不払の件数は**前年比1,005件増**の22,354件。対象労働者は18万人超、金額は**前年比で70億円増加**し、合計172億円を超えました。
とりわけ「運輸交通業」「保健衛生業」「製造業」「商業」などで金額が多く、労働集約型の中小企業が多く含まれると推察されます。

### 多くの経営者が「意図せず」違反している
実際の事例で取り上げられたのは、**始業前の清掃作業**に関するもの。
以下のような状況が問題となりました。
- 清掃を業務として命じていたが、労働時間として扱っていなかった
- 清掃後にタイムカードを打刻させていた
- 割増賃金の計算対象にも含めていなかった
つまり「業務指示をしているにもかかわらず、その時間を“労働時間”として認識していなかった」ことが違反とされたのです。
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## ここがポイント:「黙示の指示」も労働時間
厚労省のガイドラインでは、以下のように定義されています。
> 労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のこと。明示的な指示に限らず、黙示の指示により行われた業務も含まれる。
たとえば…
- 制服への着替え
- 就業前の掃除
- 終業後の片付け・日報記入
- 会議や朝礼などの「準備的行為」
こうした時間は、**タイムカード打刻の前後であっても、労働時間に該当する可能性がある**のです。
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## 中小企業経営者が今すぐできるチェックポイント
1. **実際の業務とタイムカードの記録が一致しているか?**
2. **始業・終業時刻の管理が「現場感覚」と合っているか?**
3. **現場責任者が「これは業務じゃない」と勝手に判断していないか?**
4. **業務命令ではなくても、従業員が“当然やるもの”とされている作業はないか?**
5. **残業代の計算に見落としはないか?**
たとえ数分でも積み重なれば**未払賃金として多額の請求リスク**につながります。
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## まとめ:ルールを整えることが“従業員満足”と“リスク回避”の両立に
労務管理は、経営の信頼性そのものです。
適正な管理は、従業員の安心感を生み、労働環境の改善と離職率の低下にもつながります。逆に、見過ごされたままの“グレーな時間”は、いつか大きなトラブルに発展しかねません。
今回の事例は、**意図せぬ違反**がどれだけ重大なリスクになるかを示しています。
今一度、自社の労働時間管理を“実態ベース”で点検してみてください。

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